「再婚も必要かなと思うが、時間にも収入にも余裕がない」…妻の不倫を機に離婚、子どもを引き取ることを決意したシングルファザーの思い
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 2016年度の「全国ひとり親世帯等調査結果」によれば、母子家庭の約123万1600世帯に対し約18万7000世帯が存在している父子家庭。しかしシングルマザーの6分の1ということもあり、シングルファザーに対して目が向けられることはそう多くはない。

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■「切り詰めて生活をしている」

「再婚も必要かなと思うが、時間にも収入にも余裕がない」…妻の不倫を機に離婚、子どもを引き取ることを決意したシングルファザーの思い

 愛知県に住む小野寺哉さん(32)は4年前、妻の不倫問題が原因で離婚した。そして当時0歳だった陽哉くんを一人で育てることを決意する。

 「妻はまだ1歳にも満たない子どもを遅くまで連れ回して男に会いに行っていたり、寝ている子どもを置いて男に会いに行っていたりしていた。小学校2年の頃から親元を離れ児童福祉施設で暮らしていたので、子どもには寂しい思いをさせたくないと思ったし、一度そういうことに走ってしまった妻に同じことがまた起こらないとは限らない。そうなったら子どもはどうなるのか、という怖さもあった。自分が引き取り、しっかり向き合っていこうと決めた」。

 働きに出るためには陽哉くんを保育園に預けなければならない。しかし送り迎えの時間帯を考慮すると、居酒屋での仕事を続けるのは難しく、融通の効く工場に転職した。

 「保育園が7時半からなので、そこに合わせて8時半からの出勤、そして保育園に迎えにいっても間に合うような就業時間にしてもらった。残業もない状態にしてもらえているし、職場の人たちは“頑張ってね”と送り出してくれるので、すごく助かっている」。

「再婚も必要かなと思うが、時間にも収入にも余裕がない」…妻の不倫を機に離婚、子どもを引き取ることを決意したシングルファザーの思い

 ただ、30万円ほどあった月収は18〜20万円ほどにまで落ち込んだ。最近、元妻から支払われる養育費の額が決まったが、月2万円の上、滞ることも多いという。家計の中でも最も重い負担になっているのが家賃だが、公営住宅は抽選。しかもエアコンなどの設備が整っていないケースも多く、数十万円の初期費用がかかったという知人もいたという。

 「子どもが風邪をひいたりすると大変だ。実は今日もそうだったが、お昼に呼び出されて迎えに行った。今もまだ熱があるので、明日は休ませなければいけない。当然、自分も仕事を休むことになる。そういう時のためにお金を取っておかなければならないので、切り詰めて生活をしている」。

■裁判所からは「なんで男性なのに」と言われた

「再婚も必要かなと思うが、時間にも収入にも余裕がない」…妻の不倫を機に離婚、子どもを引き取ることを決意したシングルファザーの思い

 居酒屋で働いていた頃、保育士だというお客さんに、「休みのときに保育園に預けに来る親が信じられない。かわいいんだから、休みの日は見てあげるのがいいんじゃないか」と言われたことが印象に残っているという。

 「自分も子どもは本当にかわいいし、大好きだが、逆に一緒にいないのは仕事のときしかないので、正直に言えば、仕事が息抜きになっている、という部分はある。男女、シングルかそうでないかで考え方にも違いがあるかもしれないが、自分が息抜きをするために預けるのはズレていると思われてしまう社会だとすると、やっぱり仕事が息抜きということになってしまう」。

 また、母親と祖母が岐阜県にいるが、脳梗塞で倒れたことのある母親は近頃ようやく仕事ができるような状態で、祖母も85歳と高齢。陽哉くんのことで頼るわけにもいかないようだ。
 
 「周りにはシングルファザーの方がいないから、“やっぱそうだよね”って言い合える人が本当にいないと思う。自分で頑張ると決めたことだから、話すと愚痴になってしまうのも嫌だ。だから誰かに相談することもない。今はSNSがあるので、インスタとかで情報収集をしている。皆さんがやっているのを見て“いいな”と思ったら真似してみたり」。

 それだけではない。裁判所からは「なんで男性なのに」と言われたこともあったという。

 「(陽哉くんの)親権を取るとき、“なんで男性なのに子どもを引き取ろうと思ったんですか”と。子どもを思う気持ちは男性であろうと女性であろうと変わらないのに、僕が引き取るのはダメなのかな?という気持ちになったし、正直言って傷ついた」。

■再婚も必要とは感じているが…

「再婚も必要かなと思うが、時間にも収入にも余裕がない」…妻の不倫を機に離婚、子どもを引き取ることを決意したシングルファザーの思い

 朝、保育園に子どもを送り、仕事が終わり次第、迎えに。そこからご飯を作って食べさせ、お風呂に入れて寝かしつける日々。先日、陽哉くんに「はる君にはママいないの?」と尋ねられたという。

 「寂しい?と聞き返すと、“パパがいるから大丈夫なんだけど、いたらよかったよね”と。小さい子どもからすれば、パパだけでもいいけど、やっぱりママに甘えられない寂しさがあるんだろうと思うと、申し訳ない気持ちになる。ゆくゆくは再婚ということも必要なのかなとは感じている。ただ、出会うといっても、どこで出会うんだ、ということもある。しかも時間にも収入にも余裕がないので、一緒にどこかに出かけたりすることもできないと思う」。

「再婚も必要かなと思うが、時間にも収入にも余裕がない」…妻の不倫を機に離婚、子どもを引き取ることを決意したシングルファザーの思い

 「僕が落ち込んでいたりすると、“大丈夫?はる君がいるから大丈夫だよ”と声がけをしてくれるくらい、子どもは親のことをすごく見ている。ちょっとした変化にすぐ気づく」と話す小野寺さん。今はYouTubeチャンネル『シンパパ はーチャンネル』で、シングルファザーについての思いや情報を発信している。「頑張ってやってきてよかったなと思えるような、温かいコメントをいただくことも多く、励みになっている」。

■「母子家庭に比べて収入が多いから、とは一概には言えない」

「再婚も必要かなと思うが、時間にも収入にも余裕がない」…妻の不倫を機に離婚、子どもを引き取ることを決意したシングルファザーの思い

 「練馬区ひとり親福祉連合会」の代表としてシングルファザーの支援活動を行う持田貴之さんも、小野寺さんと近しい経験を持つ。

 「国際結婚をしていた妻が突然、当時3歳の子どもを置いて家を出ていってしまったことで、子育てと脊髄小脳変性症という難病で寝たきりの母親の介護が一気に降り掛かってきた。僕は建築関係の仕事だったので、子どもを背負って打ち合わせをしたり、現場を見に行ったりした。保育園の間はまだよかったが、小学校になると負担がさらに増えた。そして手がかからなくなり思春期に入ると、娘ということの難しさもあった。男性なので、女性の考え方を深く理解しようと思っても理解しきれないところがあった」。

 厚生労働省のデータによれば、父子家庭の平均年収は420万円と、母子家庭の243万円に比べて高くなっているものの、持田さんは「母子家庭に比べて収入が多いから、とは一概には言えない」と指摘する。

 「簡単に言えば、主たる世帯主だった方が子育てをしなければいけない状況に陥るわけだ。中には住宅ローンの返済のある方もいるし、隠れた貧困というものはなかなか見えてこない」。

■会員が350名以上いるが、父子家庭は10名程度

「再婚も必要かなと思うが、時間にも収入にも余裕がない」…妻の不倫を機に離婚、子どもを引き取ることを決意したシングルファザーの思い

 さらにシングルファザー同士が悩みを吐露できる“パパ友”に出会える機会も少ない。
 
 「女性は家で子育てをしなさいという風潮が残っている一方、男性は外で仕事をしなさいという風潮も残っている。だからこそ、“恥ずかしい”というイメージも持たれがちだ。私の場合も遅くに打ち合わせをしなければならないことがあり、夜10時ごろに電車でベビーカーを押していた時に“なんでこんな時間まで子どもを連れまわしているんだ”と言われてしまった。

 また、私の団体は会員が350名以上いるが、父子家庭の方は10名程度しかいない。僕は全国ネットワークにも入っているが、俺もひとり親だよ、仲間でやろうよ、という活動にまでは繋がらない。だからこそ情報もあまり流れず、一人で悩んでしまったり、内にこもってしまったりする方も出てくる。やはり父子家庭についての認知度を高め、大手を振って“私はシングルファザーだ”と言えるような社会にしない限り、DVなどの問題も変わってこないのではないか」。

■母子避難施設はあっても、父子避難施設はない

「再婚も必要かなと思うが、時間にも収入にも余裕がない」…妻の不倫を機に離婚、子どもを引き取ることを決意したシングルファザーの思い

 自民党総裁選や衆院選でも争点の一つとなった“配分”や“子育て支援”。持田氏は「私たちの会には練馬区議や東京都議、衆議院議員など、超党派の顧問団がいるし、実際に動いてくださる方々もいっぱいいる」と話す。

 「ひとり親問題は社会の暗い部分の縮図になっているので、少しずつでも声を上げて、光を当てていかなければいけない。一方、光を当てると、また別の影ができてしまうこともある。それを繰り返さないよう、政治には本当に真剣に社会の底上げに取り組んでいただきたいと思っている。たとえば母子避難施設はあっても、父子避難施設はないので、本当に困っている父子が入ることのできる受け皿がないということだ。区営住宅でも都営住宅でも、すくい上げられる政策が必要だ」。(『ABEMA Prime』より)

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