総額300億円超の「政党交付金」 原則と例外がひっくり返る現状、“政治とカネ”問題の再議論を
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 317億7300万円。これは、各政党に交付される2021年分の政党交付金の総額だ。

 年間総額は全国民1人あたり250円で計算され、議席数などによって各党に振り分ける金額が決まる。年4回に分けて交付されるが、国政選挙があった場合には算定し直されるため、今回の衆院選の結果を踏まえANNがその金額を試算した。

【映像】政党給付金めぐる“政治とカネ”の問題

 内訳は、一番多い自民党が169億4600万円、次いで立憲民主党が68億8400万円、今回大きく躍進した日本維新の会は1億500万円増の19億2200万円。ちなみに、制度に反対する共産党は政党交付金を受けていない。

 合わせて約318億円。もちろん財源は私たちが国に納める税金だ。その使い道などについて、「政治とカネ」問題に詳しい神戸学院大学法学部の上脇博之教授に聞いた。

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 「大きく分けると、1つは政党の経常経費。例えば、職員を雇うと人件費、給料を払わなければいけない。事務所の家賃、光熱水費も払わなければいけない。政治団体の組織を維持するための経常経費として払われている。もうひとつは、政治活動費。政治活動としては、その政党ごとにそれぞれの特徴があるが、例えばチラシを印刷して宣伝活動、政治活動に使っていると。大きくはその2つに分かれる」

 自由な政治活動を尊重する観点から使い道に制限はなく、基本的に自由。政党交付金の報告書は総務省に提出され、ウェブサイトから見ることができるが、総務省に収支そのものをチェックする権限はない。そのため、不正な支出や無駄な支出などが明らかになりづらいという。

 「買収に使った例がある。これは裁判になって、有罪になったのでわかったが、こういうのは稀だ。使い道については捜査機関が入らないとなかなかわからない。その一歩手前として、報道機関が取材をして(当事者)本人に聞いた、あるいは他の人の証言によって『実は(虚偽の)領収書を書かされた』という話が出てくると、『この支出は嘘じゃないか』というのはわかる。しかし、なかなかそういう報道は難しい」

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 政党交付金が制度化される背景にあったのが、1990年前後に相次いだ「政治とカネ」の問題。これを解決すべく、特定の企業・団体からの政治献金を規制するとともに、国が政党に助成金を払う「政党助成法」が成立した。

 しかし、政党や政治資金団体、国会議員が代表を務める政党支部への献金は認められていて、さらには政治資金パーティーなど、政治に関わるお金集めには多くの手段が残っているのが現状だ。その上で各党に支払われる政党交付金。上脇教授はその問題点を指摘する。

 「1年間のうちに残ったお金、使い切らなかった政党交付金は原則として総務大臣が『残っているんだったら返してください』というふうに手続きをとる。ところが例外がある。ファンド、基金を作ると、実は国庫に返還しなくてもいいという仕組みが今の法律につくられている。例外が“基金を作る”だけど、原則と例外が事実上ひっくり返ってしまっている。返す場合はほとんどない」

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 必要なことに必要な分だけ使ってほしいというのが国民の願いだが、もらえるものはそのままもらってしまおうというのが現状。透明化をはかるためにも、一定のルールが必要だと上脇教授は訴える。

 「残念ながら、政党交付金をもらっている政党が、あえて(返して)もらわなくていいという法律を改正する、廃止をするのはなかなか難しい。政党交付金を年末に余ったのに返さなくていい、これはどう考えてもおかしい。この年に必要だと思って出しているのに、余っても返さなくていいというのは、納税者からみると納得できない。例外を認めてしまっているので、基金を廃止する。政党交付金は飲み食いに使っていない。しかし、政党交付金があるがゆえに、お金に色がついていないので、政治資金に余裕ができてしまう。そこで飲み食いをしてしまう。これを皆さんがどう考えるか。やはり納税者からみると、『政党交付金以外の資金も使い道考えてよ』という意見を言うことによって、それを報道機関が報道することで、場合によっては使い道については見直そうという可能性は出てくると思う。ぜひ多くの皆さんが政治資金、政党交付金をチェックしていただきたい」

 政党交付金が抱える問題について、東京工業大学准教授の社会学者・西田亮介氏はデジタル化されておらず政治側に都合のいい仕組みになっていることを指摘する。

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 「(政党交付金の収支報告書は)ウェブ上で公開されているが、デジタル化されていない。これを再分析する時、PDFに手書きされたものだととても難しい。原本と同時にエクセルの様式に入力して公開させる仕組みにすればどうか。みんながチェックしやすくなるし、研究者やジャーナリストの再分析コストも低減される。こういった工夫はほとんどなされていない。そういう意味では、政治にとって都合のいい仕組みになっている。これは与野党問わない」

 また、構造的な問題に触れた上で、上脇教授同様にルールを見直す機運を高めることが必要だと述べた。

 「政党助成金の仕組みを入れたのと並行して、政治家個人に対する献金に制限がかかっている。政党支部への献金は認められているが、特に現職の政治家は支部長を兼ねることが多いので、実質的には政治家個人への献金になってしまうような仕組みが残っているし、寄附者の特定や、領収書添付の下限ももっと引き下げてもよいかもしれない。現状に照らして、この『政治とカネ』の問題はどうあるべきなのかという議論と透明性改善を巡るあり方の議論は、もう一度盛り上げていくべきだ」

(『ABEMAヒルズ』より)

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