『週刊少年マガジン』複数ヒロインが主流に? 編集長が明かす“ラブコメ”増加の背景
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 講談社が発行する人気少年誌『週刊少年マガジン』。毎週水曜日に発売されることでもおなじみだが、その歴史は古く、創刊は1959年。今年で62周年を迎える。

【映像】『週刊少年マガジン』で連載中のラブコメ漫画作品(※画像あり)

 同誌の代名詞といえば『巨人の星』『あしたのジョー』といったスポ根や『カメレオン』『GTO』などのヤンキー漫画。しかし、今の連載作品には過去と異なる“ある特徴”が存在するという。

「最近、女の子の絵をかわいく描ける漫画家がかなり増えました。例えば『甘神さんちの縁結び』という漫画で、作者の内藤マーシー先生には全然ちがう企画を描いてもらっていました。そのサンプル画像みたいなのを彼に描いてもらったとき、女の子がめちゃくちゃかわいくて。『ちょっともったいないから、女の子の漫画を一回読み切りで描いてみない?』とお話をして『チャンスがあるならぜひ』ということで、それが一度読み切りで載って、とても人気を取りました。そういったやり取りしているうちに、いつの間にか、女の子の漫画が増えてきたんです」(『週刊少年マガジン』編集長の栗田宏俊さん)

 なんと、連載作品の半分近くが“ラブコメ”作品に。ラブコメの特徴といえば、作中に登場するかわいい女の子だ。栗田さんによると、4〜5年前から徐々に増え始めたという。

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 実は「少年」の心を掴む最適なジャンルでもあるというラブコメ。現状、少年誌の読者層は 30代〜40代が多く、若者にもアプローチしたいと思っていた同誌では中高生にアンケートを実施。すると、一番人気だったジャンルは「ラブコメ」だったと栗田さんは話す。読者の求めるものが変わったのだろうか。

「僕自身はあまり変わっているという認識はないです。当時もその漫画作品のストロングポイント、人気のポイントはおそらく『力が強い』。強い力をもっている者がそれを行使する。あとは『女の子にモテたい』。それがいまや異世界漫画で、異世界で力を行使したり、純粋にラブコメとして『女の子にモテたい』といった内容に少し分かれただけで、特に読者のニーズが変わったという感覚は僕らにはないですね」

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 さらに漫画の国際展開においても、ラブコメは国境を越えた「武器」になるという。

「ファンタジー漫画だと日本の風習に関係なく、普通に異世界(が舞台の作品)なので、外国の方も読める。ラブコメに出てくる女の子の髪型が日本人っぽくなくても、絵だけだと外国の方にも抵抗なく読んでいただけますね」

 スポ根、ヤンキー、ラブコメ……時代が移り変わっても、本質は変わらない『週刊少年マガジン』。同誌が大切にしていることについて、栗田さんはこう話す。

「僕の編集方針なのですが『ロマン』と言っていて。普通は『こんな女の子がいたらいいな』ってあんまり思わないですが、なんとなく『かわいい女の子がいてくれてたらいいな』というのを『こういう形の女の子はどうでしょう?』と具体的に提案したり、力があっても『こんなシチュエーションでそれを発揮したら面白いんじゃないの?』と。それを身近なところでやるのが『週刊少年マガジン』だと思っていて。『東京卍リベンジャーズ』も一つファンタジー的な要素を入れてタイムリープとか、その中で主人公が全力で頑張る、努力を見せる姿勢が読者に受け入れられて、共感されていると思います」

 さらに、栗田さんは「今の『週刊少年マガジン』では“複数ヒロイン”が主流だが、この最初がおそらく『魔法先生ネギま!』だと思う」と、漫画家・赤松健氏が描いた作品に言及。「(普通なら女性キャラクターの)描き分けができないと思いますし、限られたページの中で魅力を出す必要がある。衝撃的ですごいチャレンジだった」と語った。

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 実際に同誌で『ラブひな』や『魔法先生ネギま!』といったラブコメ作品を生み出してきた赤松健氏はこう当時を振り返る。

「『ラブひな』ではヒロインが5人いますが、その頃載っていたマガジンのラブコメは『BOYS BE…』で、主に1対1の恋愛オムニバス形式でした。それが『ラブひな』では1人のモテない男を5人の美少女が好きになるといったハーレム型だったんです。それまでは『みゆき』(作者・あだち充/小学館)など三角関係の漫画も多かったのですが、ギャルゲー(美少女ゲーム)のような(色んな女の子と恋愛する)展開なんですよね。アニメ臭い、ゲーム臭い内容で、自分でもわりとアウェー感を持って連載していました。編集部だけでなく、読者も相当抵抗があったと思います」

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 『ラブひな』が瞬く間に人気を集め、連載が続く中、『週刊少年マガジン』の表紙にも変化があった。

「今では普通のことになりましたが、いちおう週刊“少年”マガジンなので、当時は女の子ヒロインを表紙の中心に配置することは許されませんでした。でも『ラブひな』のヒット以降は、表紙に大きく美少女キャラを載せられるようになったんです。実写グラビアを除けば、漫画の美少女キャラ群がマガジンの表紙を大きく飾ったのは『ラブひな』が初めてだと思います。また次の『魔法先生ネギま!』では女の子ヒロインが31人出てきますが、1話目からどのキャラクターが好きか読者アンケートを取って。そこで、1位になったキャラクターはセンターで活躍するよう描いたり、アニメ版でも人気の声優さんに声を当ててもらったり、今でいう“AKB形式”を導入していました」

 スポ根、ヤンキー、ラブコメ……時代と共に移り変わってきた漫画のトレンド。次はどのようなジャンルが主流となっていくのだろうか。赤松氏は異世界モノなど前提知識が必要なジャンルを始めインフレ化や複雑化が進んでいるとして「いずれシンプルなものに戻ってくるだろう」と話す。

「ラブコメも女の子が増えすぎたせいか、今はシンプルに1対1でイチャイチャし続ける作品が増えています。インフレ化・複雑化が進むと、基本に戻るんです。あとは例えば『東京卍リベンジャーズ』ならヤンキー要素ですが、基本に戻りつつも、"組み合わせの妙" が生きるような作品が増えていくと思います」 (『ABEMAヒルズ』より)

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