「安倍学校」に結集?麻生派・二階派の動きも活発に? “安倍派”誕生が自民党内に与える影響は
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 第2次岸田内閣が発足する中、安倍元総理が最大派閥・清和会(細田派)の会長に就任する見通しであることが報じられている。安倍氏の会長就任は、細田現会長が衆院議長に選出されることに伴うもので、細田派では早ければ11日にも総会を開き、安倍氏の会長就任を正式決定、“安倍派”が誕生する見通しだ。

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 9月の総裁選が決選投票にもつれ込んだ要因には、安倍氏が高市氏の支持を打ち出したことがあるとされている。そこまで存在感のある安倍氏だが、実は派閥に復帰するのは約9年ぶりのこと。2012年、所属していた細田派の前身・町村派トップの町村氏が出馬していたの総裁選に出たこともあって総裁就任後に離脱。その後は無派閥ながら長年にわたって総理・総理大臣を務めてきたことになる。

■派閥復帰の背景に“二つの理由”

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 細田氏が衆院議長に就任するのと軌を一にするかのように安倍元総理が“帰還”することになった背景について、元産経新聞政治部長の石橋文登氏は「とにかく安倍さんを戻したいからだ。安倍さん本人は、気楽な無派閥のままもうちょっといたかったみたいだが…」と話し、大きく二つの理由があったとの見方を示す。

 「まず、なんといっても“帰らざるを得ないだろう”ということ。先の総裁選では安倍さんが“高市を推せ”といったことで清和会のほとんどの議員が高市さんを推した。それなのに本人が戻ってこなかったら、“なんなんだよ、おい”となるからではないか。

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 もう一つが、衆院選の結果に強い危機感を抱いたこと。今回、自民党は小選挙区で約2760万票、追加公認を入れれば約2800万票も獲得している。これは小泉元総理の“郵政解散”に次ぐ票数だし、安倍さん時代の3回の選挙よりも150万ぐらい積み増している。それなのに、なんでこんなに議員が落ちたんだと。確かに圧倒的に勝ったところもある。しかし競ったところが100以上もあった。立憲民主党については共産党と組んだことで支持が消極的になっていった一方、維新がいるところでは維新、国民民主がいるところでは国民民主に流れてしまった。つまり“絶対に自民党”ではなく、“共産党と組むよりは”、みたいな感じの人が多かったということだろう。

 出口調査が間違ってしまったのもそのせいだが、やはり足腰の弱い若手議員が多いこともあり、このままいけば次は総崩れするぞ、ちゃんと派閥をまとめて若手を育てないと大変なことになるぞ、という危機感が大きいのではないか」。

■岸田さんとしてはやりにくくなるはずだ

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 結果、総理総裁である岸田氏にとっても“やりづらい”状況がやってくるのだという。

 「先の総裁選が河野VS岸田という勝負になれば河野さんの勝ちだった。しかし安倍さんが高市さんを推しちゃったこと、そして河野さんがボロを出してしまったことで、真ん中で沈んでいた岸田さんが浮かんできた、という構図だった。その意味では、安倍さんが高市さんを担がなかったら岸田総裁は誕生していない。

 安倍さんという人は実にずる賢いというか、なかなかうまいやり方をする。なぜ“安倍一強”が築けたかといえば、自民党内の真ん中から右を安倍・麻生で抑え込み、跳ねっ返りの河野さんや小泉進次郎さんなどの若手を菅さんが抑えていた。そして、それ以外の利に敏いメンバーを二階さんが抑えていた。そんなふうにして、常に自民党の9割を制圧していた。石破さんが政局を起こせなかったのも、そういう理由がある。

 岸田さんは今回、そこまでの力がないにも関わらず、危険な人材をずいぶん自民党の野に放ってしまったものだと思う。安倍さんも菅さんもそうだし、二階さん、森山さんもそうだ。“野犬”ばっかりで、大丈夫かな?と思う。岸田さんとしてはやりにくくなるはずだし、まあ、面白くなってくるんじゃないか」。

■昔の派閥政治のような時代が来るのではないか

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 さらに今後の展開について石橋氏は「みんなが派閥の領袖の顔色を見て動くみたいな、昔の派閥政治のような時代が来るのではないか」と予測する。

 「細田さんは、いわば”別荘の管理人”で、その別荘のオーナーは安倍さんだった。細田さんは庭先しか掃いておらず、建物の中はボロボロになっている、とみんなが訴えたわけだ。その細田さんを“衆院の管理人”に派閥全体で押し込んで、安倍さんのためにポストを空けたようなものだろう。怖いのは、安倍さんには別動隊が数十人いることだ。実は9年前の総裁選でも、安倍さんは清和研に推してもらって出たわけではない。亡くなった親友の中川昭一元財務大臣が作った『創生「日本」』という勉強会のメンバーが中心だった。安倍さんが派閥の会長になり、彼らも糾合すれば巨大な派閥になる。自民党内も、相当ピリピリしだすと思う。

 例えば、元々は宏池会だった麻生派と岸田派をくっつける“大宏池会”構想。これは麻生さんの悲願でもあるし、党内に清和会と拮抗する勢力ができなければ、かつての経世会、“タカ派”みたいになっちゃうぞという思いもあるので、動きが加速する可能性がある。二階派に関しても、元を辿れば清和会から割れた亀井派なので、安倍さんとは同じ釜の飯を食ったメンバーが流れている。二階さんはお年を召しているし、彼らまで安倍派に入ってしまえば、派閥としてズタズタになってしまう。彼らは彼らで防衛に走るだろう。(平成研の)茂木さんだって動くだろうし、派閥再編の引き金にもなるだろう」。

■“安倍学校”を作って保守的な基盤を整えたいという思いがある

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 ジャーナリストの佐々木俊尚氏は「話を伺っていると『東京卍リベンジャーズ』の解説を聞いているみたいだし(笑)、やっていることはヤクザ映画と同じだ。もちろん政治は密談の世界なので、そこで何が起きているのかを知るのはジャーナリズムの第一歩だ。ただ、日本のテレビや新聞は政局の話しかしなさすぎで、もっと政策や、それが国民ひとりひとりにどう関わりがあるのかといった踏み込んだ話をしないと、人々はついてこない。Twitterを見ていても、“今日はつまんねえな”という人がいっぱいいる」と苦笑する。

 「今のメディアの政治部的な政局報道というのは、昭和の名残だ。経済が成長し、世の中が良くなっていくという期待感の中であれば『仁義なき戦い』を見るような、いわばエンターテインメントとしては面白かった。しかし経済はどうなるんだ、会社が潰れるかもしれない、といったことがリアルに社会に突きつけられている今、“政治エンタメ”として消費できるような余裕はないと思う。逆に言えば、“経済を何とかしてくれないと”という政治に対する期待感は極めて高くなっているわけだ。安倍さんが派閥の長になることで、それが日本の経済政策にどう影響を与えるのだろうか」。

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 こうした疑問に対し石橋氏は、次のように反論する。

 「メディアは派閥の弊害など、“負の部分“しか報道しない。しかし派閥には二つの大きな意味がある。一つは“互助会”だ。“魔の3回生”以下の候補が弱かったかと言えば、“選挙ではこういうことをやって有権者の心を掴むんだ。後援会はこうやって作るんだ”といった話を派閥の先輩から口伝で教えてもらっていないからだ。選挙で勝つためのノウハウを、無派閥のままでは誰からも教えてもらえない。

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 もう一つは、政治理念の部分だ。さきほどの宏池会と清和会でいえば、宏池会は非常にリベラルで、アメリカでいえば民主党に近い。一方、清和会は共和党に近い。それぞれが政策の勉強をさせ、厚労行政や農政に強い若手を育て、“族議員”にする。そして集団としてどんな法案でも対処できるような体制を作っていく。そうした意味はかなり大きい。

 そして派閥の領袖というのは、商店街組合の長みたいなもので、一個ずつ悩みを聞いて、“それはあの人のところに行ってああしなさい”とアドバイスするのが仕事の大半で、結構大変な役目だ。だから安倍さんも戻ってきたくはなかった。ただ、かつて吉田茂が党人派に対抗する形で後輩を集めた“吉田学校”が宏池会の源流になったように、“安倍学校”を作って保守的な基盤を整えたいという思いはある。そうしないといずれ政権の座から滑り落ちるぞという危機感があるからだ」。(『ABEMA Prime』より)
 

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