“10万円給付”決着の舞台裏 「彼女たちに嫌われたら政治家は一巻の終わり」創価学会関係者が明かす影の権力者たち
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 国民の間で議論を呼んだ「10万円給付問題」は、すったもんだの末に所得制限960万円を設け、年内に5万円を現金で、来週春までに残りの5万円をクーポンで支給するという案で妥結された。これは先の衆院選で公明党が繰り返し訴えていたゼロ歳から高校3年生の子どもたちに1人10万円を一律給付するという公約「未来応援給付」の意向が強く反映された形での決着といえる。

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 2019年に消費税が10%に引き上げられた際にも、公明党の主張にあった食料品などは8%に据え置くという軽減税率が受け入れられた。今回も同様に公明党の圧に自民党が折れる形での決着となった感が否めない。しかし、衆院選挙で単独過半数を獲得した自民党が、なぜ、そこまで公明党に配慮しなければならないのか。

 その理由について政治ジャーナリストの青山和弘氏は「公明党の政策を実現させてあげないと連立政権がもたないという事情がある」と指摘。「自民党議員は選挙で公明党の票をものすごく頼りにしている。(公明党の固定票が)各選挙区にだいたい2万票あると言われていて、この2万票が自民党議員に入らなければ、選挙の結果は全く違うものになっている」と説明する。

 また元自民党職員で政治評論家の田村重信氏も「公明党さんとの協力をすることによって票が加算される。さらに自民党はタカ派的だということになると中間層が減ったりする。そういった意味では、いい関係だ」と続ける。

 公明党は自民党の政権を安定させる頼みの綱というわけだが、その支持母体である創価学会のある学会関係者は「カギを握っているのは女性部と呼ばれる女性会員の集団。彼女たちに嫌われたら政治家は一巻の終わりだ」と選挙や公明党内の舞台裏について明かす。

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 以前はやり合っていた両党が手を組むようになったのは1998年、当時の橋本政権が参院選に惨敗したことがきっかけ。政権を安定させるために次の小渕政権は自由党、公明党を与党に引き入れようと試みた。

 当時の様子を前出の関係者は「小渕さんや自民党幹部が丁寧に歩み寄ってきてくれました。公明幹部も、いまこそ公明党が日本を救う時だという説明をしてくれて、次第に受け入れるようになった」と振り返ると「女性のパワーは最強で、実質、彼女たちの存在抜きには政治は語れないのでは。選挙のときには朝から家のことはほったらかして、ひたすら選挙活動に汗を流します。自民党の100倍は働いているのでは。婦人部のおばちゃんたちは自民党議員であっても、いったん応援すると決めたらまるで息子が出るかのように“勝たせたい”と動く。『比例は公明党で』と自民党議員が演説すると『あの人は良い人だ』とさらに勝たせてあげようと頑張る」と選挙時に党内で絶大な影響力を発揮する女性部の存在に言及する。さらに政策の実現には互いの合意が必要となり、その物差しとなるのが女性部の存在だとも。

「女性部の方々は本当に庶民そのもので裕福な方などいない印象。政策もそんな女性たちに受けがいいかがポイントで、政治家たちはそこに最大限気を配っています。そこを外すと嫌われて大失敗。つまり落選します」

 これらの話に対して田村氏も「公明党さんに理解してもらえないようだと、法案・政策として国民受けしない。政策を実現するには政権党でないといけないのは自民党も公明党さんもよくわかっている」と理解を示した。

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 創価学会の会員数は827万世帯に達し、今回の総選挙で公明党は比例で700万票以上を獲得するなど、その結束の強さを改めて見せつける結果となった。

 青山氏は「一つの選挙区に公明党の票は濃淡あっても2万票ほどある。これが無くなるとガラッと選挙結果が変わってしまう。これが抜けると自民党は単純計算で過半数割れしてしまう。20年以上連立をやっていると、その構図が染みついており、切り離せない。公明党は安保や憲法など相いれない問題もあるが、見返りの部分。公明党が一番に掲げた政策。今回であれば政策集の一番上に書いてある10万給付だけはは守ってあげないといけない。公明党もこれが守られないのであれば、政権与党にいる意味もない。女性部も説得できないということで、絶対に死守してくるので、あっという間に決まってしまったという感じだ」と自民党の公明党依存、さらに10万給付の舞台裏について説明した。

 一方で青山氏は、今回の決定に対して疑問を呈することも忘れない。

「経済対策として本当に効果があるのか精査した形跡がない。子どもを持つ人たちだけが本当に困っているわけではない。ここに10万円を配ることが、本当に公平なのか精査された状況ではない。ただ公明党が主張しているからということでやったという感覚だ。(自民党は)ちょっとした抵抗で960万という所得制限と半分をクーポンにする。クーポンにすると貯金できずに使わざるを得ないので、経済対策として通すという形になった。10万円を配ることがどれだけ適した政策なのか、例えば仕事を失った女性であればお金を配れば使ってしまうけど、仕事を戻してあげることが持続可能性という意味では大切。子どもをベビーシッターに預けやすくするなどの政策にお金を使う道はあるのに、お金を配ってしまえば一気に消えてしまったり、貯金に回ってしまったりする。精査ができていないので、バラまきという批判を受けても致し方ない」

 その後、話を衆院選に戻した青山氏は、今回の選挙の結果を受けて両者の関係が微妙に変化し、今後、健全な相互関係が機能しないのではとする懸念を示す。

「選挙で落選した甘利さんや石原さんは公明党の推薦を受けていない。こういうのが効いたのではという見立てをしている人もいる。そうなるとますます公明党怖いよね。大切にしないとダメだよねというマインドが自民党に出てくる。今回の選挙では大物議員も『比例は公明党で』と口をそろえている。昔は恥ずかしいと思われていたが、最近は当たり前のように言うようになってきた。この状況だとこれくらいの政策(10万円給付)は飲んであげようということになってしまう」

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