12日、政府は新型コロナウイルス対策本部の会合で、第6波に備えた新型コロナ対応の全体像を決めた。ワクチン接種について、岸田総理は「12月から3回目の追加接種を始める」と述べたほか、12歳未満への接種の方針も固めた。そして、ワクチン接種以外にも飲む治療薬の確保、病床の拡大などを軸とした対策を行うとしている。
【映像】ひろゆき氏「コロナ“飲み薬”買い占めの懸念は?」医師の答え(21分30秒ごろ〜)
第6波の感染拡大が懸念される中、ワクチンの普及と飲み薬の登場で私たちの生活はどこまで元に戻るのだろうか。『ABEMA Prime』では専門家と共に考えた。
子どもへのワクチン接種ついては2日、アメリカのCDC(疾病対策センター)が5歳から11歳までの児童を対象とした接種推奨を決定。すでに全米各地で順次接種が始まっている。「3回目のワクチン接種」と「12歳未満へのワクチン接種」では、優先順位としてどちらを上に置くべきなのだろうか。アメリカ国立衛生研究所・研究員の峰宗太郎氏は「最も大切なのは1〜2回目の接種、1回も打っていない人を少なくしていくことだ」と話す。
「お子さんも含めて、多くの方が接種していることが重要だ。なぜかと言うと、ワクチンを打つと重症化はかなりの確率で長い期間防げる。一方で、時間と共に感染や発症を予防する効果は下がり、重症化のリスクも上がるので『ブースター(追加)接種でしっかり防ごう』といった考えが必要になる。しかし、まず優先すべきは無防備で本当に感染しやすい状態にある人を減らすことだ。これが重要だと思う」
一方、追加接種と子どもへの接種、両方を同時進行で行う場合、日本でワクチンは足りるのだろうか。峰氏はこの疑問に「心配しすぎる必要はない」と語る。
「ワクチンの量については、日本は十分に確保できていると聞いている。今のところ、どちらも並行して進めていくことが可能だと考えているので、心配しすぎる必要はない。ブースター接種に関しても、重症化を防ぐという意味であれば急ぎすぎる必要はない。しかし、感染や発症を予防する、または流行を強く抑制したいのであれば、しっかり打つべきだろう。流行が収まっていればそれほど考えなくていいが、基本的予防の徹底も引き続き訴えることが大事だ」
仮に、新型コロナの「第6波」が来た場合、インフルエンザの処方薬のように新型コロナの“飲み薬”は手に入るのだろうか。峰氏は「流行状況による」とした上でこう話す。
「軽症の方がある程度、気軽に飲める経口のお薬になる。口から飲めるお薬であれば行き渡ると思う。個人のリスクとしては、飲み薬が効くとはいっても、100%効くわけではない。感染すれば重症化するリスクは当然高い。誰が重症化するのか、これは事前に予測がつかない。個人としては基本予防策をとって、ワクチンを打って感染しないことが大事。やはり予防を徹底していただく必要はどこまでも重要だ。ただ、社会全体として考えれば、感染者数が増えても(飲み薬の普及によって)重症者を確実に減らせるので、医療のひっ迫度合いが変わってくる。国の政策や疫学的に大きな視点で見れば、かなりインパクトがある」
今月に入り、東京ではおおむね1日の新規感染者が30人以下で推移している。そもそも日本では第6波はあるのだろうか。
「波の大きさがどうなるかは分からないが、第6波、第7波は来るのではないかと考えている。新規感染者数が増加する、そういうフェーズが今後もやってくる。しかし、重症化する人がどのぐらい増えるかというと、第5波のようなことにはもうならないのではないか。これは、やはりワクチンの効果が非常に大きい。そして飲み薬も出てくれば軽症の方に飲んでいただくことによって、病床のひっ迫を防げる。波の内容は大きく変わるのではないか」
これにネット掲示板『2ちゃんねる』創設者のひろゆき氏が「そうしたら、もう日常に戻ってしまっていいのではないか。インフルエンザの流行で12月に1000人死んでも、みんな『そんなもんだよね』と受け入れていた。新型コロナで月に1000人くらい死んでも『そんなもんだよね』と普通の生活にした方が良いのでは」と指摘。
この指摘に峰氏は「今後、受け止め方が変わっていく可能性は大いにある」と回答。「要はバランスの問題だ。流行自体をこれからも深刻に捉えるのか。それとも重症化や亡くなる方が減って、ある程度、風邪やインフルエンザのように考えるようにチェンジしていくのか。これは特に政策決定に関して、コンセンサス(合意)を得ていくべきだと思う。そういう意味においては、今後コロナをどのように捉えていくか、変わっていく可能性は大いにあると思っている」と述べた。
一方、昨年末から中断している観光支援事業「GoToトラベル」について、政府は来年2月頃に再開する方向で調整を続けている。イベントの人数制限の緩和が検討され、飲食店における人数制限も撤廃に向けて検討が進められている。来月には忘年会、年明けには新年会シーズンが控えている今、新型コロナをどのように捉えるべきなのか。
峰氏は「流行が今のように完全に収まっている状況であれば、飲食店での人数制限を撤廃したり、GoToトラベルをやっても、大きな問題は起こらないだろう。流行状況に合わせた対策が必要だ」と話す。
「しかし、今後第6波が強く来た場合、自由のままでは、やはり感染状況は悪化する。その場合は、たとえ割合が減っていても、重症化する人が出てくる。そこをどこまで許容するかという話になる。やはり感染流行が起きたときは、抑えるべき。流行が続くことで新たな変異ウイルスが出てくる、少しであっても重症化する方、亡くなる方が出てくるのは問題だ。今は経済や社会的自由とのバランスを考える時期に入っていると思う。がむしゃらに何がなんでも抑える、といった考えではなく、バランスを考えていくことが求められている」
その上で峰氏は「日本は今、非常に流行が抑えられている。もう明るい方向なのではないか、規制を緩めて当然いいだろうという気分になっていると思う。しかし、今世界全体を見ると、新型コロナの感染は悪化している状況だ」と警鐘を鳴らす。
「特にヨーロッパを中心に非常に大きな流行が起こっている。それを考えると、世界の議論と日本の議論は完全に乖離している。世界で流行が続いていることは、今後日本にまだ入ってくる可能性もあるということ。新たな変異ウイルスが、世界のどこかで誕生する可能性はいくらでもある。特に世界に『海外旅行をしたい』『海外に行ってビジネスをする』ということになれば、世界の状況も見ながら議論をしなくてはいけない。今は、日本の国内で制限を緩和することは可能だと思うし、それを図るべきだと思う。だが、決して世界の状況を忘れないでほしい」
感染拡大が続いている国もある一方、感染者が減少し、新型コロナとの付き合い方に変化が生まれようとしている日本。第6波への備えと共に、個々の感染予防対策は引き続き続ける必要がありそうだ。(『ABEMA Prime』より)
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