米イリノイ州で、来年度から高校における「メディアリテラシー教育」が義務化されることが決定、初の試みとあって話題を呼んでいる。
法政大学の坂本旬教授は「2016年の大統領選挙でフェイクニュースがすごく問題になったこともあり、翌2017年にワシントン州で“メディアリテラシー支援法”ができ、全米に運動として広がっていった。一言では言えないが、やはりオンライン上の怪しげな陰謀論がアメリカを分断していると言われていて、教育現場でも深刻な問題と受け止められていて、最初にこの問題に手をつけたのは情報を扱っている学校図書館の職員たちが、情報の読み解きを子どもたちに教えなければいけないという意識をもって始めた」と説明する。
「イリノイ州のカリキュラムを見ると、“情報”と“メディアメッセージ”は何が違うのかと思われるだろうが、これはファクトチェックなどによって真偽を見極めるというだけでなく、感動させる情報や怒りを感じさせる情報、例えばプロパガンダについても読み解きしないといけないということだ。ソーシャルメディア上の情報はアルゴリズムで見せられている部分があるが、そのことを僕たちは学んでいないし、学校でも教えていない。トランプ大統領が当選した時に言われていたことだが、ロシアからのフェイクニュースが多かった。言い換えれば、投票行動に影響を与えれば民主主義は崩壊する。それだけにこの問題は国防につながる深刻な問題だと世界的に考えられている」。
パックンは「義務化されたのは初めてだが、取り組みとしては数年前から始まっていて、あちこちの学校でメディアリテラシーのカリキュラムが導入されている。やはり大統領選挙の不正を未だに主張している人がいること、新型コロナウイルスについて真実を認めない、マスクやワクチンの効力を認めない人がいる。そして、そうした情報がどこで流行っているかというと、子どももアクセスができるネットだ。例えばFacebookがなぜ問題になっているかといえば、自分たちのアルゴリズムが国民の分断を煽っているということを知っていながらビジネスを進めたからだ。こういうのは “悪”だと僕は思う。
また、僕も小学3年生になるまでは漫画・アニメと実写版の違いが分からず、どこかでバッグス・バニーに会えると信じていた。だから早いうちに情報源のリアルとフェイクの違いが見分けられるようにしないと、国の情勢をも変えてしまうという恐ろしいことになってしまう。先日、バージニア州の州知事選挙で共和党が勝ったが、それは教育制度、教育委員会に対する親の怒りを保守メディアが煽ったからだ。今回も、“我々の情報源を勝手に制限しようとする”という反論が必ず出てくると思う」。
翻って、日本の教育現場におけるメディアリテラシー教育の現状はどうなっているのだろうか。
坂本教授は「今のところカリキュラムとして入ってはいないが、近いものとして国語でプレゼンテーションをして自分の考えを主張するときには信頼できる情報を集めなければいけないという意味の領域が入ってきた。高校の情報の教科でも、信憑性の話が出てきて、少しだけ教える。一方、ネットを使ったいじめの問題に対しては、情報モラル教育というものが行われている。ただ、これはリスクを伝えて、むしろSNSはやらないほうがいいというような教育なので、これだけでは足りない。
アメリカではデジタル・シティズンシップ教育といって、自分の投稿は一生残るということを幼稚園から教えている。日本はとても考え方として遅れていると思う。スマホを持ち始めてからでは遅い」と指摘。さらに「メディアリテラシーというのは、決してメディア規制に代わるものではないし、逆にメディアリテラシーがあれば、Facebookのような問題を放っておいたほうがいいということでは決して無い」と話していた。
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