無数のミツバチによって作り出される、はちみつ。甘さを生かしたデザートや料理だけでなく、医療の分野でも活用が期待が寄せれている。
その活用方法について、ニュース番組「ABEMAヒルズ」では研究を続けている中京病院救急科・大須賀章倫医師に話を聞いた。
「僕らはやけどをよく診ているので、その中でも傷に塗るお薬なんですけど、それにはちみつを使ったらどうなんだろうということを最近やっています」
中京病院の大須賀医師が研究しているのは、やけど治療へのはちみつの活用――。
「はちみつ自体は、古代エジプトから使われていて結構研究されてはいるんです。また、はちみつはカビが生えなくて、腐らないんです。実は4年くらい前からはちみつを塗るということはやってきていて、比較的ばい菌が付きにくいという環境が得られるということは分かっています」
大須賀医師が注目したのは、はちみつが持つ抗菌作用。ヒトの皮膚のpH(水素イオン指数)は通常4〜5だが、やけどの時は8〜9に上昇する。はちみつは殺菌力のある過酸化水素を発生する酵素を持ち、pHが3〜4という酸性で、感染症の元となる細菌が生息しにくい環境を持つ特性がある。そして、傷が元に戻るのを促す効果があるとみられている。
大須賀医師は、10月に行われた学会で、足に広範囲のやけどを負った60歳男性の症例を報告。男性は食料倉庫の掃除中に粉塵爆発が起きてやけどをしていた。病院では、培養した皮膚の移植や、抗菌薬投与などの治療をするなかで、塗り薬の要領で患部にはちみつを使用した。男性の傷は48日目にはきれいに治り、抗菌薬に耐性を持った菌が出ることなく治療は終了したという。
「はちみつというのは、抗菌薬ではないので(細菌が)耐性化がしない。だから(細菌が)出てきても使える薬が残ってるし、ばい菌が入ってきたらすぐ叩けるという状態でずっと維持できるので、そういう耐性菌の問題とかには悩まされなくなってかなりありがたいなと思っております」
抗菌薬に頼りすぎると、より強い菌が出てきてしまうかもしれない……。はちみつを使うと、その前の段階で感染を防ぐ効果が期待できるというのだ。
ただ、まだまだ研究段階のため、「やけどをしたからといって患部にはちみつを塗るのは控えてほしい」と大須賀医師は注意を促している。また、軽いやけどをした場合には従来の方法でワセリンを使用することをおすすめした。
「ばい菌を殺すっていう説明をしていたんですけど、それ以外にも例えば、上皮化をもっと早くするとか、そのばい菌が住みにくい環境を作れるとか、色々な良いことがあるらしいということは少しずつ分かってきてはいます。まだ研究段階ですね。はちみつを人工的に作ることがまだできないので、そういう意味で科学という中ではまだ完璧には追いつけてはいないのかなとは思います」
ニュース番組「ABEMAヒルズ」のコメンテーターで、NTT東日本関東病院のニコラス・レニック氏は「やけど治療でははちみつは一度も使ったことはない」とした上で、医学分野では「エビデンスは集まってきている」と明かす。一方で、「(はちみつは)人工的に作られていないので、統一性があまりない」と課題に言及する。
「実際に海外のスーパーで18種類のはちみつを買って調べたところ、抗菌薬としての効果はかなり違いがあり、細菌に効果がないものもあれば、むしろ細菌が含まれているものもあったので、スーパーで買ったはちみつを(薬として)塗れるというものではないですね」
では、健康維持や美容のために利用されてきたマヌカハニーの効果はどうだろうか。レニック氏は「細菌を殺す効果はあるがウイルスを殺す効果は期待できない」と話す。
「ただ、それが病気を防ぐことになるのかが大きな問題だ。成人の感染のほとんどはウイルス性なので、細菌を全部除外したとしても風邪をひいたりする。通常の咽頭炎の9割はウイルス性がほとんどなので、例えばマヌカハニーを毎日、1時間に1回舐めたところで咽頭炎を完全に防げるかというのは期待できない」
はちみつがやけどに効くのかはまだ研究段階。解明が進めば、蜂の努力の結晶は幸せな甘みだけでなく、人類にとって更に大きな役割を果たしてくれるようになるのかもしない。
(『ABEMAヒルズ』より)
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