「事務総長は、新たな入国制限により南アフリカの国々が孤立することを深く懸念しています」
29日、報道官を通じて声明を発表した国連のグテーレス事務総長。新型コロナのオミクロン株が確認された南アフリカなどに対する渡航制限が広がりに、懸念を示している。
【映像】南アの商業施設 買い物客で行列ができている(現地の様子)※1分30秒ごろ〜
アメリカでは、南アフリカなどアフリカ南部8か国に対する渡航制限を実施。こうした世界のアフリカ排除の動きについて、南アフリカのパーヒュラ保健相は「不当な措置である」と反発している。
パーヒュラ保健相「(アメリカの)大統領や政府の渡航禁止という対応は、私たちの助けになりません。事態をより困難にしているだけなのです」
そんな南アフリカの現状について、南アフリカ・ケープタウン在住の岩瀬早織さんはこうレポートする。
「ここは南アフリカ・ケープタウンの中心です。今は夏なので暑くてマスクをしていない人もチラホラいますね」
市内のショッピングモールを覗いてみると、クリスマスに向けた買い物客で賑わっていた。
「店内に入る数を制限していて、こっちに(行列が)並んでいる。金曜日でブラックフライデーなのでちょっと人が多いかもしれません」
屋内ではマスクを着用している人も多く、飲食店も仕切りで区切られ、感染対策はされているようだが……実は去年の同じ時期、南アフリカでは新たな変異株で1日に2万人が感染。医療崩壊の危機に直面していた。
今、南アフリカをはじめとするアフリカ諸国が抱えているのが、ワクチン格差の問題だ。日本でも今月から3回目の接種が始まるなど、“ワクチン先進国”ではブースター接種が進む一方で、南アフリカでは1回目の接種をした人の割合はおよそ30%に留まっている。
アフリカでは、さらに接種率が低い国も多く、南アフリカのラマポーザ大統領は「全ての人がワクチン接種できる体制づくりが必要だ」と主張。「オミクロン株の発現で世界が気付いたはずです。ワクチンの不平等が続いてはならないと。全員がワクチンを接種しない限り、全員に危険が及び続けるのです。 世界の富裕国は、途上国への渡航を禁じるのではなく、途上国の経済活動を支援して、各国民に対して直ちに十分なワクチンを供給すべきなのです」と訴えている。
アフリカ諸国がワクチン供給の必要性を訴える中、手を差し伸べたのが中国だ。習近平国家主席は、セネガルで開催された中国アフリカ協力フォーラムの開幕式で「アフリカに10億回分のワクチンを提供する」と宣言。6億回は無償援助で、4億回分は、中国企業とアフリカ各国が合同で生産するという。その上で、習近平国家主席は「筋が通るなら何も恐れず、発展途上国にとっての正義の主張を掲げよう」と述べ、共通した行動をとるよう呼びかけた。
■ ワクチン供給が遅れるアフリカ「きれいなマスクを毎日みんなが着用できるわけではない」
新型コロナの新たな変異株である「オミクロン株」が世界各地で確認され、日本でも1日、国内で2例目の感染を確認。この状況にテロ・紛争解決に詳しい永井陽右氏は「アフリカでは『まだまだコロナ禍』だ」と話す。
「新型コロナのパンデミックが最初に起きたとき、アフリカでは『衛生状態が悪くて、人口が密集しているスラムエリアで拡大したら終わりだ』と言われていました。その問題意識は、今も一切変わっていません。ワクチン供給の不平等も、COVAX(※2020年に発足した、日本を含む180以上の参加国・地域が新型コロナウイルスワクチンを共同購入し、途上国などに分配する国際的な枠組みのこと)で決まった通り、アフリカの人口である13億人分のワクチンが確保されているはずなのに、実際にどれくらい提供されているかというと、まだ2億回分ぐらいです。いつワクチンが提供されるのかわからず、非常に遅れています」
東アフリカのソマリアで、ギャングの更生支援などを行うNPO法人アクセプト・インターナショナルの代表理事でもある永井氏。ワクチン接種率が全体の3割に満たない国も多いアフリカで、現地の人たちは新型コロナについてどのように受け止めているのだろうか。
「アフリカは人口も多く、決してひとくくりにはできませんが、エボラ出血熱などの致死率が高い感染症と比べると、カジュアルに受け止めている感覚は伝わってきます。『マスクをしよう』『ソーシャルディスタンスを保とう』といったポスターは、いろいろなところで貼って周知されていますが、実際にできているかというと、かなり甘いように思います。そもそも、マスクが手に入らない人もいますし、きれいなマスクを毎日みんなが着用できるわけではありません」
渡航を禁じるのではなく、ワクチン供給の不平等解消と経済支援を訴えた、南アフリカのラマポーザ大統領。ラマポーザ大統領の訴えに、永井氏も「その通りだ」と同意する。
「新型コロナはグローバルイシュー(※地球的規模で解決が必要な問題のこと)で『どこの国が悪い』といった話ではありません。共に勝つか、共に負けるかしかない。対策できていない国があると、また感染拡大は繰り返されるでしょう。どの国であっても同時的な対策が必要です」 (『ABEMAヒルズ』より)
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