「なぜ、K-1をやめるのか?」木村“フィリップ”ミノル、独占激白
【映像】木村“フィリップ”ミノルが衝撃告白
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 先月28日、12月4日にエディオンアリーナ大阪で行われる「K-1 WORLD GP 2021 JAPAN」の対戦発表記者会見が行われ、スーパー・ウェルター級タイトルマッチで和島大海(月心会チーム侍)と対戦することが発表された現王者の木村“フィリップ”ミノル(PURGE TOKYO)が「今回をK-1のラストマッチにしたいと思っている」と述べ、大阪大会がK-1でのラストファイトとなることを電撃発表した。

【映像】木村“フィリップ”ミノルが衝撃告白

 そのうえで「格闘家としての木村“フィリップ”ミノルのキャリアは続く。これからも格闘家として突き進んでいく。男として生まれた以上、もっと上を目指すのは当たり前。僕はここで止まっている人間ではない。次のステップに進むタイミング」と続けた木村だったが、ファンが注目した“次のステップ”に関する言及を避けたこともあり、いまもなお様々な憶測が飛び交っている。目下、10連続KO中の王者である木村の口から飛び出したK-1引退宣言。その決断の背景にはどのような思いがあったのか。

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■自問自答の末に「格闘家としての自分が好き。誇れる部分」だと気づいた

 2010年のプロデビュー以来、リングに上がり続けた木村はいつしか闘う意味を見失いかけていた。この一年は闘いから離れ、格闘家としてではなく、一人の人間として過ごしてきた。そこで自問自答を繰り返したのは「自分の生き方」だった。

「K-1に憧れて試合するけど、今のK-1はテレビ放送もない。チャンピオンになったところで、以前のように爆発的に名前が売れるわけでもない。金がすぐついてくるわけでもない。反動くるよね。求めてるものと現実が違うから」

 デビュー以来、必死で駆け抜けた10年を振り返って木村は率直な思いを明かす。一方では、複雑な心境も。

「これ(格闘技)以外に心からやる気が出て、やりがいを感じられるものもない。格闘家としての自分が好きだし、一番誇れる部分。そこを捨てるのは違う。どんなにきつくても格闘家の自分が無かったら、俺はなんでもない。試合をしてないときは自信が無かった。『格闘家なんだ』と改めてそこで思った」

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■気になる「次のステージ」 木村少年が思い描いた夢

 11月、都内某所。K-1引退を口にした木村の本音に迫った。

 木村“フィリップ”ミノルは、ブラジルで生まれた。ブラジル人の父と日系ブラジル人の母を持つ木村は3歳で来日し、山梨県で育った。格闘技を始めたきっかけは幼き日に父と遊びでやっていたボクシングだったという。そして木村は、3歳での来日を機に、父からおもちゃのサンドバッグとグローブを買い与えてもらった。映画『ロッキー』を流しながら、ボクシングをするのが1日の遊びだったと当時を振り返る。

 その後、ボクシングにハマったこともあり、自宅近くのキックボクシングジムに入会。さらに格闘技の楽しさにのめり込んでいった。本格的に格闘技の道を志すことについて父は知らない。そのことについて木村は次のように静かに口を開いた。

「お父さんは……小学校1年生の時に離婚して、お父さんはブラジルに帰って、ずっと母親と二人。連絡を取っていないし、格闘技をやっていることは直接伝えていない。何十年も会ってない。もう、20年くらい」

 木村にとってグローブは父との思い出そのもの。母が帰ってくるまで、いつも独りぼっちだった木村の遊び相手は、父のくれた赤いグローブだったという。

「お母さんが毎日仕事でいなくて、一人っ子なので20時くらいまでずっと一人でいる時間が多くて。毎日500円が置いてあって、K-1のビデオをレンタルして見ていた。その中でピーター・アーツやアーネスト・ホースト、ジェロム・レバンナ、マイク・ベルナルドなどの名前を覚えだして『ヘビー級のK-1ヤバい』ってなって」

 世界中の猛者がリングの上で死闘を繰り広げた頃のK-1。何度負けても這い上がり、リベンジを果たす。その様子は木村少年にとって眩しく、まさに映画『ロッキー』そのものだった。そんな木村少年の心に「あの時のK-1ファイターになる」という思い、夢が芽生えた。

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■波乱万丈のチャンピオンロード

 映画『ロッキー』の主人公の姿と重ね、憧れたK-1ファイターたちのようになることを決意した木村が「K-1チャンピオンでベルトが欲しいわけでもない」と話すように、手にしたチャンピオンベルトは特別な意味をなさなかった。そのことについて木村は「嬉しいですよ。大事ですけど、一個の形でしかないと思う」と答える。

 高校卒業後、木村はK-1ファイターになる夢を持って上京。2010年にプロデビューを果たす。2014年からは新生K-1にも参戦するようになった。現在10連続KO中と無類の強さを発揮する木村だが、チャンピオンベルトにたどり着くまでの道のりは、まさに波乱万丈だった。

「イメージは全戦全勝。無敗で穴の無いチャンピオンになる」

 そんな思いと自信を持って乗り込んだK-1のリングで木村を待っていたものは挫折の連続だった。「キャリアを振り返ってみたら波乱万丈。ある意味、味のある選手だと思うけど、自分の狙いとは逆でしたね」と木村が認めるように、何度も挫折を味わった。人目をはばからず、負けて涙したこともある。

 さらに意外な告白も。もはや無双状態にある木村だが「試合は怖い」という。「試合は基本的に怖い。そんなに好きでもない。だからこそ、リングを早く出たい。恐怖心なく試合をしたのは1回もない。試合が決まったときから、処刑される時間が迫っている感じ」と今まで聞かれることの無かった本音まで明かした。

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■矢口哲雄氏「木村ミノルの名に恥じない闘いをして欲しい」

 繊細な内面を持つ木村を陰で支え、KOを量産する現在の豪腕スタイルを二人三脚で完成させた人がいる。木村が東京の父として慕っているキックボクシングジム「PURGE TOKYO」の代表を務める矢口哲雄氏だ。

「肩だヒジだ、手首だ…関節を痛めさせてもらっています。僕のミットは標的を動かさないミットなので、自分が怪我をするかもしれない。そこは根性勝負。毎日が気持ちと気持ちのぶつかり合いです」

 矢口氏は木村との練習の日々を振り返り、笑顔を見せる。対する木村も全幅の信頼を寄せる。

「格闘技を1から教えてくれた人なので、ずっと一緒にやってるので、お父さんみたいな人。その前に見たロッキーとか、(実の)お父さんが見せてくれたボクシングはまさに運命。お父さんが残したものを、矢口さんが形として僕に教えてくれた。どっちもお父さん的な存在だし、僕の夢を叶えるためにリンクしてたと思います」 

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 矢口氏の教えについて、木村はこうも語る。

「ミット打ちでも1個の技、コンビネーションを徹底してやらせる。本質を極めるというか。他のトレーナーは色々な技術をインプットしたりするが、矢口さんは1個のことができて、それがアウトプットできるまで徹底的に磨かせる。そして構成を作ってくれる。反応に対して、次のコンビネーションを組み立てる。ずっとブロックを組み立てる作業。だから、試合のときも自然に相手を追い詰められる。地味な作業ばかりだけど、試合ではすごい力を発揮します」

 一方、木村の成長を間近で見続けてきた矢口氏は、K-1を引退する決断を下した木村についてどのように思っているのか。

「彼が18歳くらいからずっと見ていた選手。寂しい気持ちはある。やるかやらないかは本人が決めること。本人が決めた以上、木村ミノルの名に恥じない闘いをして欲しい」

 波乱万丈のキャリアを歩んだ木村のK-1ファイナルが、12・4大阪で幕を開ける。

「K-1には『K-1リベンジ』という大会があったくらい、リベンジっていうテーマがある。負けても終わりじゃないというのが、K-1選手にしかない魅力。這い上がってスターになるところを見せたい。なりたかった自分。夢を実現するためには、今ここの枠を出ないと形にならないと思った。自分のキャリアは勝ったり負けたり、負けもたくさん経験したキャリア。そういうキャリアでも世界でトップになれる。チャンピオンの座に就ける。リベンジ精神の素晴らしさを格闘技に根付かせたい」

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