ウトロ地区放火事件、Yahoo!ニュースのコメント欄には肯定する投稿も ヘイト対策は“排除”だけでなく“包摂”を
ヘイトスピーチを減らすには…?
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 今年8月、在日コリアンが多く住む京都府宇治市のウトロ地区で発生した火災。ケガ人は出なかったものの、火は建物7棟に燃え広がり、地域の歴史を伝えるための「ウトロ平和記念館」(来年4月に開館予定)の展示品や資料など、約40点が焼失した。

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 そして6日、ウトロ地区の空き家に火を付けた疑いで有本匠吾容疑者(22)が逮捕された。有本容疑者は7月にも民団(在日本大韓民国民団)の建物などに火を付けた疑いでも逮捕されていることから、一連の事件は人種差別など憎悪や偏見による犯罪「ヘイトクライム」ではないかとの見方も出ている。

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 在日韓国人の徐東輝弁護士は「率直に言って、すごく暗い気持ちになっている。突発的に起こした事件というわけではなく、やはり在日韓国・朝鮮人に関係するコミュニティや施設を連続的に放火していっているのを見ると、ヘイトスピーチを超えた大きなヘイトクライムが久しぶりに起きてしまったという印象だ」と話す。

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 一方、Yahoo!ニュースのコメント欄などネット上には、「燃やされても当然だと思う」「朝鮮人が日本にケンカを売っているからだ」「若いのに大した男だ」など、有本容疑者の起こした事件を肯定・助長するような書き込みも見られる。

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 「私が日韓関係の本を書いていた10年前には、在特会というグループが中心となった大規模な路上でデモ等が行われていたが、5年前にヘイトスピーチ解消法ができ、社会の中でも“やってはいけないことだ”だという理解が少しずつ進んできたことなどもあり、去年は1件、今年も10件前後に収まっている。ただ、背景にはコロナ禍で集会がしにくくなっているということと、言論空間がオンラインに移ってきているという事実もあると思う。むしろ誹謗中傷問題を含め、オンラインの方でヘイトスピーチが加速している可能性がある」(徐弁護士)。

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 ジャーナリストの佐々木俊尚氏は「ヘイトクライムは明らかに犯罪だが、ヘイトスピーチに関しては、何が“ヘイト”なのかという判断基準が明確ではない部分もあるので、罰則を強化しすぎない方がいいという意見もある。実際、僕の発言がネット上で何度も“ヘイトだ”と言われている。その上で、今のヘイトクライムやヘイトクライムの根幹にあるのは人種差別などよりも、社会への不満や憎悪を浴びることへの快楽があるのではないか。京王線で起きた“ジョーカー”の事件もそうだが、誰かを憎悪しているというよりも、自分が憎悪を浴びることが動機になっているのだと思う」と指摘。

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 「そうだとすれば、いくら国が“ヘイトスピーチ、許さない”というスローガンを作ったり、メディアが”ヘイトはやめよう”と言ったところで効果はない。それどころか、“反ヘイト”の活動をやっている人たちが旗を振れば振るほど、嫌がらせができて気持ちいいという感情が沸き起こってきて逆効果になるのかもしれない。対策としては法律に基づき淡々と処罰していくこと、そして決して“ダークヒーロー”にはしないことだと思う。例えば『2ちゃんねる』で暴走族が“珍走団”と呼ばれたように、“かっこいい存在”で無くなれば、憧れる人もいなくなるのではないかという発想もあると思う」。

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 徐弁護士も「例えばアメリカのトランプ支持者がファクトチェックされた情報を信用しないのは、そもそもメディアを信用していないからだ。“これが事実だ”と言われたところで、もう一つの真実、“オルタナティブ・ファクト”が存在しているという凝り固まった考え方があるので、対話が生まれない。これと似たような構造があると思う。解決策としては距離を取るということも考えられるが、私も含めたマイノリティーたちは対象にならざるを得ない。現行法でも業務妨害や名誉毀損ということで対処できるケースも数多いが、具体的な被害者が出てくる前になんとかしないといけない」と佐々木氏に賛同。

 さらに、ヘイトスピーチをしていた当事者に話を聞いた際のエピソードを紹介した。

 「“韓国人が嫌いだから”ということではなく、“所属しているコミュニティ内で自分が承認されていない、抑圧されているという感覚があった”と言っていた。なんとか認められようという中でオンラインでヘイトスピーチや誹謗中傷をしてみると、リツイートや“いいね”で承認欲求、快楽が得られてしまう。そこから“韓国人はダメなんだ。中国人はダメなんだ”という凝り固まった考えになっていったようだ。そういう話をオフラインでしっかり聴いた後は、泣きながら“二度とヘイトスピーチをしない”と言って握手をしてくれた。“この人たちが言っていることは嘘だから”“誹謗中傷だから”といってAIなどを使ってコンテンツを排除するだけではなく、社会的に承認されている、包摂されているという感覚を作っていくことは、すごく長い道のりに見えて、実は最短距離なのかもしれない」。(『ABEMA Prime』より)

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