冬はなんとなくやる気が出ない、寒くなっていつも体調が悪い……もしかしたら、それは“冬のうつ病”かもしれない。
冬のうつ病は「ウィンターブルー」と呼ばれ、季節の変化が原因となる「季節性うつ病(季節性感情障害:SAD)」のひとつ。ニュース番組『ABEMAヒルズ』に出演した臨床心理士で明星大学心理学部准教授の藤井靖氏は「冬うつ」の症状についてこう話す。
「うつ病になると、典型的には食事ができなくなる『拒食』や、あるいは眠れなくなる『不眠』の症状が出ます。しかし、“冬うつ”の場合は、逆に『過眠』『過食』『体重増加』などの症状があらわれやすいです。寝ても眠気が取れにくかったり、炭水化物や甘いものを欲しがちになることも多いです。総じて、秋口から感情が落ち込みやすくなって、物事が楽しめなくなり、春になると改善するという特徴があります」
患者本人が自覚できないケースも多いという冬うつ。藤井氏は自覚できない、いわゆる“仮面うつ”について「ちょっとした変化を見逃さないで」と注意を呼びかける。
「なんとなく『疲れだろう』と思っていたら、その背景に精神の落ち込みや、意欲の減退があったりします。日本におけるうつ病の症状保有者は推定500万人といわれていて、受診率はそのうちの約2割です。季節性で期間が10月〜3月だとすると、単純に月割で見て、冬のうつ病患者が数十万人いてもおかしくはありません」
季節性のうつは、薬物による治療がうまくいかないケースもあるという。藤井氏は冬うつの原因の1つとして“日照時間の減少”を挙げる。
「冬は日照時間の減少に伴い、日光を浴びる時間が減ります。すると、ビタミンDが作られにくくなります。それにより脳内の神経伝達物質で、感情の制御に関わっている『セロトニン』が減り、これが気分の落ち込みなどの症状にもつながります」
もし自分が冬うつになった場合、どのような対策があるのだろうか。
「身近にできる対策として、日の出以降の朝30分の散歩がおすすめです。曇っていても野外であれば約2万ルクス以上の光量があり、セロトニンを夏と同じような状態に保ちやすくなります。一般的に蛍光灯などの室内照明では300〜700ルクスといわれていますので、それよりも外に出て光を浴びるといいでしょう」
その上で、藤井氏は「遊びも丸一日ではなく半日にする」「夏以上に人に話して感情をスッキリさせる」といった対策を紹介。
「人間の身体は環境の変化に関わらず身体の機能を一定に保とうとする『ホメオスタシス』の機能があります。冬は寒いので、体温を保つためにこの機能がフル活動します。一方で、下半期は、年末や年度末で物理的に忙しい人も多い。すると、人間の身体に負荷がかかっている状態に、さらに負荷がかかります。ダブルで負荷がかかると、心身にも影響が出てしまうのはある意味自然なことです。日常生活の中でできる対策として、遊びに行くのも丸一日ではなく半日にしたり、心理的には日々起こる自分のいろいろな感情を受け止めてくれる、身近な存在も重要になります。雑談などを通して夏以上に人と話して、感情をスッキリさせる機会を作るという対策も効果的です」(『ABEMAヒルズ』より)
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