保湿クリーム「ニベア」と混ぜるとシミが消えると謳った化粧品の広告がネット上で相次ぎ、ニベア花王が「一切関与していない」と注意喚起する事態になっている。
【映像】「必見、ニベアに混ぜるだけ」デマ広告の画像(※現在は削除)
50代の女性が「騙された」と訴えるのは、インターネット上で女性が見た化粧品の広告だ。広告には「ニベアに混ぜるとシミが消える」といった内容が記載されていた。
実は、同じ謳い文句はこの化粧品だけではない。「青缶にコレで シミは消える」「必見、ニベアにコレを混ぜるだけ」と、ほかの商品の広告でも同様の表現が使われていた。
広告を見て「シミが消せるかも」と思った女性は白い瓶に入った化粧品を購入。しかし、商品を定期購入し、ニベアと混ぜて3カ月使っても効果がないどころか、シミが濃くなってしまったという。
この事態を受けて、ニベア花王は公式Twitterで「『ニベアクリームと●●を混ぜるとシミが消える』という類の広告にニベア花王は一切関与しておりません。ニベアクリームを、ほかの製品と混ぜて使わないでください」と注意喚起。「他の製品を混ぜると、ニベアクリーム本来の特長や成分の働きなどがそこなわれてしまう可能性があります」と呼びかけた。また、取材に対して、ニベア花王は広告の内容を全面否定。製品が無断で広告に使用されていたという。
一方、広告主であるA社のホームページにはこう書かれていた。
Q.ニベアと混ぜて使用すると良いと聞きました。実際はどうですか?
A社:混ぜ合わせて使用するよりも、スキンケアの最後に「蓋をする」イメージでご使用いただくことをお勧めいたします。
A社に取材を試みるも、期日までに回答はなかった。
同様の広告を出していたB社は「広告の内容や詳細すべてを把握できていなかったため、今回のような広告が出てしまっていたという状況となります」と説明。どのような謳い文句か把握しないまま、広告が世に出てしまったといい、「全てを把握しきれていなかったという点に関しては弊社に落ち度がございますため、現状WEBプロモーションを停止いたしまして、確認・調査を行っております」と釈明した。
なぜ、人はデマ広告を信じてしまうのだろうか。ニュース番組『ABEMAヒルズ』コメンテーターで臨床心理士の藤井靖氏は「人間は欲求を理性や論理でコントロールしている。大量の情報や口コミは、理性や論理を外す格好の材料になる」と指摘する。
「美に対する欲求は多くの人が持っています。商品説明など大量の情報や口コミは、理性や論理を外す格好の材料。特に口コミは社会的参照といって、人間の行動の大きな手がかりになります。口コミで高評価だと、『これは買ってもいいんだ』と自分を説得したり、『これを買うことにメリットがあるんだ』と無意識に合理化する心理が働きやすくなります。売る側としては、そのプロセスをいかに早めるかどうかが重要になりますし、特にWEB広告では口コミや情報を多く羅列させて、見た人が『自分の欲求をとにかく早く満たしたい』と欲求充足的になるような仕組みが見られます」
一時の欲求に流されず、冷静に後悔しない買い物をするためにはどうしたらいいのだろうか。
「情報を注がれる機会が多ければ多いほど『これは自分にとって良いものだ』という発想が、欲求と相まって形成されます。まずは、情報を見る時間を少なくすることが大切です。また、身体が疲れていて、夜にそれらの情報を見てしまうと『綺麗になりたい』という欲求を満たせるかどうかよりも『買って満足したい』といった心理になりがちです。夜、ついつい物を買ってしまう心理になりやすい人は、なるべく朝に見るようにしてください。朝に見て『これはちょっと決められない』と思うのであれば、それは自分にとって必要な商品ではないかもしれません」
最後に藤井氏は、ネット上における情報の信頼性について、こう言及した。
「研究者的視点でいえば、ネット上で“シミが消える”などという『こんなこと実現するの?!』というくらいの画期的な効果が打ち出されているとすれば、それよりも前に、専門家集団である学会や、大きな研究部門を持っているメーカーがそのことを発表しているはず。いわゆる民間療法的なものの中から、新しい発見やイノベーションが見出されることはまずほとんどないという前提で、情報に振り回されないようにすることが重要です」 (『ABEMAヒルズ』より)
■Pick Up
・「ABEMA NEWSチャンネル」がアジアで評価された理由
・ネットニュース界で話題「ABEMA NEWSチャンネル」番組制作の裏側