17日に発生した、大阪・北新地のビル火災で、男性14人、女性10人のあわせて24人が死亡した。4人が病院で治療を受けている。火を放ったのは、このクリニックの61歳の患者とみられていて、警察が捜査を進めている。
【映像】「全身真っ黒」「現場は心療内科」一部報道にあった問題の“見出し”
「ビルの4階が燃えています」と通報があったのは同日午前10時過ぎ。昼頃から各メディアが一斉に報じ続けたが、ネットでは報道を見た人から「死者が増えるたびのプッシュ通知がつらい…」という声が寄せられた。そのほか「現場は心療内科・精神科」「全身真っ黒」などの表現が本当に必要なのか、さまざまな意見が相次いだ。
ニュース番組『ABEMA Prime』に出演したネット掲示板「2ちゃんねる」創設者のひろゆき氏は「元々は東スポなどがちょっと過激なタイトルを載せることをやっていた」と言及。「ネットニュースは基本的にはタイトルをクリックされてなんぼだから、過激なタイトルをつけがちだったが、最近は報道もやるようになってしまった。日本中が過激なタイトルをつけたもの勝ちの文化になっている」との見方を示した。
米・イェール大学助教授で経済学者の成田悠輔氏は「ひろゆきさんは、センセーショナルな見出しをつけることを先導してきた。責任があると思う」と指摘する。これにひろゆき氏は「どちらかというと、僕ではなく、僕がやっていたサイトをまとめていた人たちがやり始めた文化だ」と弁明。「僕が先導したわけではなく、僕以外の人がやっていても、たぶん同じような状況になっていたと思う。その意味では日本人の性質が答えだと思う」と述べた。
火災の現場となった8階建てのビルには、消防車など44台が出動。火はおよそ30分でほぼ消し止められた。当初は「27人が心肺停止」と報じられ、被害の大きさから地方紙も号外を出すほどだった。
慶應義塾大学特任准教授でプロデューサーの若新雄純氏は「ちょうど僕は今日の午後に別のニュース番組に出ていた」と話す。
「ずっと(現場が)中継されていた。確かに心肺停止の方が増えていってつらい気持ちも分かるが、このニュースはみんなが関心を持つだろう。人々の関心が高まっている中で見出しが煽っているように見えたかもしれないが、めちゃめちゃ煽ったかというと、僕自身は言われるまであまりそう思わなかった」
報道の在り方が議論された事件は、過去にもある。2001年の池田小児童殺人事件では犯人について「精神障害者」と報道され、2016年の津久井やまゆり園殺人事件や2019年の京都アニメーション放火殺人事件では、被害者の実名報道をめぐり疑問の声が上がった。中には報道を見てPTSDを訴える声もあった。
本事件では「クリニックに現れた50歳から60歳くらいの男が持っていた紙袋を蹴り倒し、漏れ出た液体から火が燃え広がった」という目撃証言から、警察は放火と殺人の疑いで捜査を進めている。この男は現在、意識不明の重体で、その後の捜査関係者への取材では、現場のクリニックに通院歴がある61歳の患者とみられることが分かっている。
今後、事件の真相と共に報道の在り方も慎重に議論していく必要がありそうだ。(『ABEMA Prime』より)
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