17日、大阪市北区の雑居ビルで発生した火災で、発生救助された28人のうち火元とみられる4階のクリニックにいた24人が亡くなる痛ましい事件があった。この火事では19日までにクリニックのアルバイトである西村美夕璃さん(21)ら死亡した6人の身元が特定されたが、ほとんど火傷はなく、死因は一酸化炭素中毒だったという。警察は放火と殺人の疑いで、クリニックの防犯カメラの映像などから現場にいた住所・職業不詳の谷本盛雄容疑者(61)を特定。警察が目撃者に聞いた話によると、エレベーターから現れた谷本容疑者は紙袋を持っており、持参した2つの紙袋を蹴り倒すと漏れ出た液体から燃え広がったということだ。
偶然、その場に居合わせただけで失われてしまった方々の命があり、その方々の家族の悲しみも忘れてはならない。理不尽な犯罪により理由もなく奪われてしまった命について、自身が犯罪被害者でありながら、同じような境遇の人々を支援する狭山市犯罪被害者等支援の会「オリーブ」の佐藤咲子代表は「本当に身を切るような思いがした。お一人お一人の人生があり、ご家族がいるということは被害者にならなければわからない。なぜこんな人の命を軽く考えて、自分の欲望を満たすような人がいるのか」と憤る。
佐藤さん自身も15歳の時にご両親を強盗殺人で亡くしている。取材に応じた12月18日は、57年前に事件が起きた日と奇しくも同じ日だった。その後、45年間にわたって事件のことを誰にも話せず、兄とも話すことはなかったという。
一方、多くの尊い命が失われた京都アニメーションの事件の容疑者は殺人などの罪で起訴されたが、責任能力を調べるために精神鑑定中となっている。佐藤さんは「よく精神鑑定をすると刑が軽くなるというが、そういう(殺人)行為をすることはできている。人を殺すような行為をしているのに、精神鑑定というのは被害者として公平ではないと思う」と私見を述べた。
佐藤さんのご両親の事件については容疑者の死刑が確定しているというが、そのことについて佐藤さんは「今は欧米に倣って『死刑は野蛮な国がする』という風潮があり、なかなか執行されない。精神鑑定をしたとしても、やはり命で償ってほしいというのが、私たち被害者の心情だ。命で償ったとしても、心の傷が癒されることはない。それでも司法的に解決されることは被害者の悲願でもある。そのことを世の中の人、精神鑑定をする人にも議論して欲しい」と訴えた。
19日にABEMA『ABEMA的ニュースショー』に出演したフリーアナウンサーの馬場典子氏は佐藤さんの主張に対して意見を求められると「私も常々、どうしたらよいのか考えてしまう。亡くなった人はかえってこない。亡くなった時点で命と共に人権をすべて奪われているが、罪を犯した側の人権はその後、守られる可能性がある。生きている以上、守らなければならないというところの理不尽さは本当にやり切れない」と私見を述べた。
馬場氏の話を聞いたフリーアナウンサーの大島由香里氏も「こういう犯罪を防ぐには…と考えてもなかなか策が見つからない。罪を犯す前に、犯人にできることはないのかと考えれば、心の苦しさや歪みみたいなものが犯行に繋がってしまうと考えた時に、心の苦しさをちゃんとケアできるような場所を身近にしていった方がいい。日本で精神科やメンタルクリニックに通っていると『え、そうなの?』と引いてしまうこともあるが、体の怪我と同じように心の傷というのも病院で治療してケアすることが普通になれば、犯罪につながる種が少しでも減るのではないか」と持論を展開した。
本件について、ロシア人として初めて日本の司法試験に合格。日、英、ロのトリリンガル弁護士として活躍するベロスルドヴァ・オリガ氏は「裁判が終わるまでは無罪推定なので、証拠を見て判断していくことになる」としたうえで「こうした事件を見聞きして、法律は万能ではないと痛感させられる次第。とくに法律があると刑罰があって、刑罰があるから犯罪をしないでおこうという気持ちになる人もいると思うが、罪を犯すことを決断した人にしてみれば、法律は何もできない。制度態勢を整え、皆が犯罪に手を染めないような環境を整備していく方がいい」と指摘した。
■Pick Up
・「ABEMA NEWSチャンネル」がアジアで評価された理由
・ネットニュース界で話題「ABEMA NEWSチャンネル」番組制作の裏側