顔の特徴から個人を特定する顔認識機能付きカメラの利用について、国の個人情報保護委員会は、ルール作りの検討を始める。
現在は主に、データの利用目的の公表義務に留まっているが、より適正な利用の在り方について、来年1月から有識者による検討会を行い、議論していくという。この顔認識機能付きカメラについては、JR東日本が東京オリンピックを契機に導入を進めていた。
「顔認証機能の前提となるデータベースの登録については、JR東日本から指名手配中の被疑者や警備員の方々が不審と認めた者について登録する方針であると報告を受けていた。この報道を受けて、JR東日本に改めて確認したところ、過去の出所者などについて顔認証のデータベースに登録しない方針であるとの報告を受けたところである」(当時の赤羽前国土交通大臣)
公共の場所に設置することで、防犯や、容疑者の追跡などの活用に期待できる顔認識カメラ。課題となっているのは、顔の画像データを取得し、利用することへの社会的な合意だ。
先月、Facebookは、ユーザーが投稿した写真に写っている人を、AIで自動的に識別する機能を廃止し、これまで蓄積してきた10億人を超える顔データを削除することを明らかにした。
サービスを提供するMetaは「全ての新しいテクノロジーは利益と懸念の両方の可能性を
もたらす。私たちは適切なバランスを見つけたいと考えている」として、プライバシーに配慮する観点から決定したと説明している。
一方で、そのテクノロジーの利益を追い続けているのが中国だ。無人コンビニのユーザー登録や、食堂の決済などで顔認識機能を活用。そして、中国の地方政府が目指しているというのが、監視システムの強化。
ロイター通信などによると、河南省で導入を目指しているのが、街頭の監視カメラで撮影した人物の映像と、すでにデータベースに保存されている個人情報を顔認証技術などで照合し、記者や留学生などの個人を割り出すというもの。赤色・黄色・緑色に分けられ、赤色や黄色の人物がホテルにチェックインしたり、列車などのチケットを購入した場合、瞬時に警告を発するという。
新たなビジネスや治安維持など、様々な活用の可能性が広がる「顔」というデータ。一方で抱える、プライバシーや監視されることの気持ち悪さといった問題をどう考えるべきなのだろうか。
ニュース番組『ABEMAヒルズ』は、米・イェール大学助教授で経済学者の成田悠輔氏に顔認識技術の今後について話を聞いた。
「顔認識の技術自体はどんどん進む。使い方によっては、特定のグループの人物を差別する可能性がある。それぞれの国がどれくらいの規制をかけるのか、少なくとも議論は必要だ」
“顔”を使うサービスが増えていくことで、私たちの“顔”に対するプライバシーの概念も変化していくと語る成田氏。
「プライバシーと呼んでいる概念が、どんどん変化していくと思う。スマホを使うようになって、人々は企業にたくさんのデータを渡している。SNSの情報、買い物データなど、これらは半世紀前の常識でいえばプライバシーの侵害だった。ゆくゆくは、僕たちの身体の状態なども、どんどんデータ化されていき、未来では僕たちがプライバシーと呼んでいたものは蒸発して、ポンとなくなってしまうのではないか」
成田氏は、感情や気持ちという“心”もデータ化していくと語る。データによって感情が読み取られ、知られたくない心の内側まで企業に渡ってしまう可能性も……。
その問題点に成田氏は「政府や会社にデータを渡して不幸になっている人っている?」と投げかけ。続けて「僕たちはプライバシーなんて気にしてない。いざ便利なサービスが提示されて誘惑をかけると、人々は簡単に自分のプライバシーを渡してしまう。これは歴史が証明してる」と述べる。
「ゆくゆくは監視カメラを使ってGDPなど、経済の状態を測れるようになっていくだろう。社会がどうなっているか。カメラが捉えたデータで測れるようになる。笑顔がどれだけ溢れているかなど、幸福度も計測できるようになっていくかもしれない」
(『ABEMAヒルズ』より)
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