整ったルックスと物腰の柔らかい口調で、特に女性ファンから人気を得る「西の王子」斎藤慎太郎八段(28)が、ほろよい気分で意外な一面を見せた。8組の師弟による早指し棋戦「第1回ABEMA師弟トーナメント」には、熱血漢で知られる師匠・畠山鎮八段(52)と出場。大会前に「ABEMAトーナメント」では恒例となっているチーム動画の収録に臨んだが、昼からバーベキューでビールを飲んだ勢いもあってか“料理勝負”では「僕の方がおいしかったかもしれません。ははは」と上機嫌に。想像された師弟関係よりも、はるかにくだけた雰囲気が、ファンの間で話題となった。
畠山八段は、関西奨励会の幹事を長く務め、弟子である斎藤八段だけでなく、数多くの奨励会員に対して、厳しくも愛のある指導をしてきたことで知られる。小学1年生だった斎藤八段が、自ら畠山八段のもとを訪れ、指導対局をしてもらったことが弟子入りのきっかけ。「畠山先生には、子どもに対してとは思えないほど、厳しく指導をしていただいた。大人と同じような扱いをしてもらえてうれしかった」と思い出せば、畠山八段も「小学校1年生で飛車・香落ちで来る子は珍しかった。6枚落ち、4枚落ちの子には『惜しかったね』とか言うけど(斎藤八段には)そういうことは言わなかった気がする」と、若き才能に最初からプロになる可能性を感じて甘やかさなかった。
少年時代は線も細く、体調を崩すことも多かったという斎藤八段だが、プロ入り後にはタイトルも獲得し、昨年度は初めて名人挑戦も果たした。今期も順位戦A級では単独首位に立っており、2年連続での名人挑戦に向けて快走している。20年以上の付き合いにもなり、酒を酌み交わすようにもなった畠山・斎藤の師弟。今回のバーベキューロケでも、その一端が見えた。
先手を奪ったのは畠山八段。得意(?)としているモノマネを披露し、斎藤八段が「なんて反応していいかわからない!」と困惑していると、畠山八段はさも当たり前といったように「それが修行でございます。師匠の昔話を聞く、酒の相手をする、下手な歌・詩吟を聞く。それが昔からの修行」と言ってのけた。
これに後手番から反撃したのが、ビールを飲んで勢いのついた斎藤八段だった。趣味として料理をしているだけに、このバーベキューでもてきぱきと調理を進めたが、師匠はほとんど料理経験なし。大きな肉をお互い焼いてみたものの、畠山八段が「なんか自分で焼いたけどイマイチ。火が強くなっていたから、絶対さっきよりおいしいと思って、自分で焼いた方がおいしいと言おうと思ったんだけど…」と納得いかない表情を見せると、斎藤八段は「ふふふ」とニヤリ。さらに「もしかしたら、僕の方がおいしかったかもしれません。言わないでおこうと思ったけど。ははは」と少し赤みがさした顔で笑い始めた。
入門当初はもちろん、成人したぐらいでもこんな軽口を言えるような関係性ではなかったかもしれないが、20年を超えた師弟関係は、親子にも似たようなもの。このシーンにファンからも「ほのぼのする素敵な師弟関係」「うひゃあぁ~」「眼福」といった反応が寄せられていた。
◆第1回ABEMA師弟トーナメント 日本将棋連盟会長・佐藤康光九段の着想から生まれた大会。8組の師弟が予選でA、Bの2リーグに分かれてトーナメントを実施。2勝すれば勝ち抜け、2敗すれば敗退の変則で、2連勝なら1位通過、2勝1敗が2位通過となり、本戦トーナメントに進出する。対局は持ち時間5分、1手指すごとに5秒加算のフィッシャールール。
(ABEMA/将棋チャンネルより)