2021年1月6日に発生、世界中に衝撃を与えたアメリカ合衆国議会議事堂襲撃事件。逮捕者の中にいたのは、トランプ大統領(当時)が「ディープステート」と呼ばれる“闇の政府”と戦っているといった陰謀論「Qアノン」の支持者たちだった。彼らは新型コロナウイルスについても、背景に「人口削減計画」が存在、ワクチンには「マイクロチップ」が入っているなどと主張している。
そんな「Qアノン」の信奉者である日本人は「Jアノン」とも呼ばれているが、大晦日の『ABEMA Prime』に出演した「Q Army Japan Flynn」隊員のAISEI氏もまた、「アメリカだけではなくて、全世界のメンバーとの交流がある。テレグラムでつながっている。Twitter、フェイスブック、インスタグラムでの活動ができないので、ネットで活動できるのがテレグラムしかない状況だ」「Qは我々人類に問いかけをしている。それを自分の頭で考えて、自分で調べて、自分で行動を起こす。他人やメディアが言っていることを鵜呑みにしないで、自分自身で考えるところに共感して活動している。私も普段の生活も変わったし、考え方や思考が広がった」などと説明。
新型コロナワクチンについても、やはり「ビル・ゲイツによる陰謀計画というのも聞いたことがあるし、殺人兵器、人口削減計画、5Gなど、一緒くたにされて突然死が起きるという情報もある」といった主張を繰り返した。
これに対し、慶應義塾大学の若新雄純特任准教授が「陰謀論ってやつがないと拠り所を見つけられない人がいることに衝撃を覚えた」「Qを中心とした世界よりも、もっと信頼できる政治家とか会社の上司や先輩など、もっといい場所がないのか」とコメント。「2ちゃんねる」創設者のひろゆき氏も“エビデンスなき主張”には裏付けがないと厳しく詰め寄り、“論破”を試みるも、AISEI氏との距離は縮まらないようだった。
こうした「オルタナティブ・ファクト」や「ポスト・トゥルース」を象徴する議論に、イェール大学の成田悠輔助教授は「こういう議論の進め方が良くないと思う」と指摘した。
「ある種の考え方や価値観を持っている人のポジションを“陰謀論”ってラベルを貼るような形で作り上げ、ひろゆきさんがファクトやロジックに聞こえるような『Wikipedia』の情報に基づいて論破していくみたいな感じのやり方はよくない。論破っぽいことをできているようで、全然できていない印象がある。そもそも出発点として、議論したり、説得したり、ということ自体に意味がないんじゃないか。こういう世の中では、“事実”や“真実”はほとんどすべての人にとって日頃から接している情報やメディアで流れているもの以上でも以下でもない。それぞれが違うメディアを見て、違う情報に接する社会になった以上、事実や真実の定義が異なってくるのは、もうどうしようもない。
これはそんなに深い話じゃなくて、聴いている音楽が、見ている動画がみんな違うということと何も変わらないことなんじゃないか。僕もAISEIさんの話を聞いていて、ちょっと癖の強いパンク・ミュージック好きの話のような感じがしたし、飲み会とかで聞いたら、大喜びして胸が高鳴っていた話ではないのか。こうやってスタジオで真面目な話をしなくちゃいけないという中に一人だけ呼んできたので追い詰めてしまったような気がするが、好みや感覚の違いなんだ、というところを出発点にして話を進めた方が良かったと思うし、そうやって人を虜にしてしまう部分がある、っていうところに焦点を当ててもいいのではないか。5人で1人を追い詰めるということをやるんだったら、僕たちも一人ずつQアノン信者の集会に行って、マイノリティとして戦うくらいのことをしたほうがいいと思う」。
若新氏は「良いか悪いか、合っているか間違っているかに関係なく、陰謀論というものが一部の人に人気で、拠り所になっていることはよく分かった。それがなぜなのかを掘り下げたほうがいいんじゃないかって思ったし、そこをまず直視したほうがいい。僕も研究者の端くれだから、普段はデータとか事実を重視するが、このスタジオにいる人たちだって、それが成功や幸せに近づくような気がしているのは、勉強ができてテストでいい点を取れて学歴があるからではないか。ただ、“データと合ってませんよ”と言っても、“いや、ワクワクするし“という側面があるのはわかるが、そこから暴力行為や違法行為に走ることまで認めていいわけじゃない。どう向き合っていくか難しい」と話していた。(『ABEMA Prime』より)
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