男子プロテニスの国別対抗戦『ATPカップ』は大会5日目を終え、グループAとグループDの最終順位が決定した。まず準決勝進出を決めたのは、スペインとポーランドだ。
世界ランク19位のロベルト・バウティスタ アグートと20位のパブロ・カレーニョブスタを擁するスペインの準決勝進出は、ラファエル・ナダルを欠く布陣とはいえ妥当な結果。今日のセルビア戦を含めて3戦全勝、一つも星を落とさずにグループラウンドを終えた。
一方、ポーランドの準決勝進出は少々意外な感もある。エースのフベルト・フルカチュは世界ランク9位の実力者だが、ナンバー2は117位のカミル・マイクシャク。ダブルスのランキングもフルカチュの81位が最高というレベルで、皆主戦場はチャレンジャーレベルの大会だ。
そんなポーランドがここまで2勝。といっても対戦したギリシャとジョージアはいずれもいわゆるワンマンチームで、肝心のエースもシングルスに出場しないという中で得てきた2勝だった。最後に迎えたアルゼンチンは層の厚さで抜けている。
しかし、ナンバー2対決でマイクシャクが44位のフェデリコ・デルボニスを6-3 7-6(3)で破り、いきなり形勢をひっくり返した。確かに侮れない選手ではあったのだ。3年前の全豪オープンで、錦織圭があわや1回戦負けを喫しかけた相手が「マイクシャク」という読みづらい名前だったことを、日本のコアなファンは忘れていないだろう。当時のランキングは今よりも低い176位だったが、時速200kmの強力サーブに加え、すぐれたコートカバリングとリスクを恐れない豪快なストロークで、初見の錦織をたじろがせた。
翌年の秋の83位が自己最高ランキングで、トップ50からの勝利はこれまでなかったが、あの“全開”プレーは爆発すれば脅威。実際、あのときの印象そのままの積極的なプレーで、左利きのデルボニスとの激しいストローク戦を制すると、全身を震わせ雄叫びをあげた。
オンコート・インタビューも自信に満ちている。
「相手のランキングのことは考えないようにしていたよ。相手だけを見て、勝つために最善の策は何かを考えてゲームプランを作っていた。僕は100位以下の選手だけど、それ以上のテニスができている気がする」
このあと、フルカチュがディエゴ・シュワルツマンを6-1 6-4で封殺。勝利を決めたポーランドはその後のダブルスもヤン・ジーリンスキとシモン・ワルコフで勝って、文句なしの準決勝進出だ。
「カミルがすばらしい仕事をしてくれて、最高にうれしく思うよ。彼が勝ってくれたおかげで、僕は手堅いプレーをすることができた」
マイクシャクはフルカチュの一つ年上で、互いにジュニア時代からよく知る仲だ。そしてフルカチュは昔をこう振り返る。
「ジュニアのとき、僕はほとんど勝てなかった」
その関係は、ロシアのダニール・メドベージェフとロマン・サフィウリンによく似ている。ワンマンチームだと思われていた両国はともに、ナンバー2がそのポテンシャルを痛快に発揮しながら勝ち続けている。
さて、ここまで2勝のロシアは、ポーランドに続くことができるだろうか。明日は1勝1敗のイタリアとの注目のカードが待っており、その勝者が準決勝に勝ち進む。なお、イタリアと同じ1勝1敗のオーストラリアにもチャンスがあるように思えるが、残念ながらたとえフランスに3-0で勝っても1位になることはない。ロシアが勝てば文句なくロシアだし、イタリアが勝ったとしても3カ国が2勝1敗で並ぶことになり、その場合は試合の勝敗数でオーストラリアは脱落してしまうからだ。
そんなグループBとは違い、グループCは4カ国全てに準決勝進出のチャンスがある。現在どのチームも1勝1敗の横並びで、明日はアメリカとイギリス、ドイツとカナダが対戦。どういう結果になっても確実に2勝1敗のチームが2つになるため、その2カ国の直接対決で勝っているほうが準決勝に進む。先に行われるのはアメリカ対イギリスだが、あとに控えるドイツとカナダも気が気でないだろう。アメリカが勝てば、カナダはたとえ勝っても準決勝には進めず、逆にイギリスが勝てばその時点でドイツの可能性が消えるのだから。先に勝ったほうもまた、あとの勝負が決するまではわからないという状況。これはもう、最初から最後まで目が離せない。
文/山口奈緒美