SDGs目標「飢餓」、日本企業の意識調査で最下位に フードロスをなくすことが問題解決につながるのか?
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  インド洋に浮かぶ島国、マダガスカル共和国。WFP(世界食糧計画)によると、南部では厳しい干ばつが続いており、現在、少なくとも約130万人が食糧不足に陥っているのだという。そこにコロナ禍に伴う移動・渡航の制限が加わり、支援物資も十分に届けられない状況になっているという。

【映像】8億人以上が"飢餓" SDGs目標2番目も企業意識は最下位?

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 貧困や飢餓に喘いでいるのはマダガスカルの国民だけではない。世界では、今も約8億人が食糧不足の危機にあるというデータもある。そこで期待されるのが「SDGs」達成に向けた取り組みだ。目標とされている項目のうち、筆頭には「貧困をなくそう」、次に「飢餓をゼロに」が挙げられているからだ。

 しかし、個人から企業にまで広がる意識の高まりや活動のうち、気候変動やジェンダーの問題に比べて、貧困や飢餓の問題にどこまでリソースが割かれているのだろうか。実は帝国データバンクによる日本企業へのアンケート調査では、「力を入れている項目」の中で「飢餓」は最下位だったという。

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 5日の『ABEMA Prime』に出演したWFP日本事務所の下村理恵副所長は「飢餓や栄養不足というのは、2010年半ばぐらいまでには減少するだろうと言われていた。ところが、飢餓はむしろ急増している状態にある。そうした状況に苦しむ人たちの半分以上がアフリカに住んでいて、残りがアジアとラテンアメリカなどと言われているが、十分、かつバランスの良い栄養が摂れないことで、特に多くの子どもたちが発育に影響を受けている」と説明する。

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 「我々は“衣食住”と言うと思うが、それらがなければ人間は生活することができない。特に食は、生きていく上で最も大切なものだ。SDGsの最初に挙げられていることからも、かなり重視してくれていると思うし、私としても優先度の高い問題だと考えたい。ただし、必ずしも最優先とは言い切れない面もある。一つの項目に力を入れたからといって全てが良くなるということではないと思うし、だからこそWFPも、17の項目のうち、最後のパートナーシップに力を入れ、企業・団体との連携を強化し、改善へ同じ方向に向かおうとしている」。

 その上で下村氏は、日本人には貧困や飢餓の問題に対し実感が湧きづらい状況にあるという課題がスタジオで出されると、次のように話した。

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 「関心の分野が人それぞれ異なるということもあるだろうが、マダガスカルでは少ない食べ物を分け合って食べたり、お腹を空かせながら眠ったりすることもあるが、日本ではお腹が空けばスーパーマーケットやコンビニエンスストアもあるし、食べ物がどこでも手に入る。アフリカは日本から相当遠いところにあるし、私自身も帰国すると、そういうことをあまり意識しなくなってしまう。その意味では、このようにして時々でもいいからニュースや話に耳を傾けて忘れないようにする、あるいは皿に盛り過ぎて食べきれずに残してしまう、そういったことに気をつけるなど、できることから少しずつ始めればいいのではないかなと思う」。

 慶應義塾大学の若新雄純特任准教授は、「真剣に議論すべき」としたうえで、食品ロスと飢餓問題解決の関係性について問題提起した。

「僕ら日本人が食べ残しとかをなくしたりすることで飢餓の問題がなくなるのか。何をすれば(飢餓解決に)つながるのか、本当に上手に接続できていない気がする。小学校の時に給食を全校生徒揃って食べていて、毎日合掌し“いただきます”と感謝していたが、結局それではどうにもならないわけだ。もちろん企業も食べ残しをなくそうとか、廃棄をなくそうとか色々な活動をしていくと思うが、本当にそこから苦しんでいる飢餓問題の解決につながるならやり始めればいいと思うが、(本当にやるべきことが)もし、もっと根本的なことなのだとしたら僕らは何を考えればいいのかと思う」。

 一方、ジャーナリストの佐々木俊尚氏は「我々日本人は何をすればいいのか」という番組の問いの立て方そのものに疑問を投げかけた。

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 「こういう議論になると、必ず先進国の国民である我々は“途上国に何ができるのか”という“上から目線”で話をしてしまうが、何言ってるんだ?と思う。日本にだって、貧困に困っている人は山程いる。加えて、“トレードオフ”の問題がある。地球温暖化防止のために温室効果ガスの排出抑制を行えば、当然エネルギー不足が生じ、ひいては農作物の不足に繋がり、飢餓人口が増える可能性も出てくるだろう。日本では若者たちが“これ以上、豊かになる必要はない”というデモをしていたが、その足元で貧しくなっている日本の現状はどうするのか。至る所にトレードオフ、バランスが存在するわけで、一つのことだけを訴えれば解決するという発想は捨てるべきだと思う。

 昔、インドにやってきて“私は何をすればいいんですか”と聞いた日本人に、マザー・テレサは“日本のことを考えなさい。愛は足元からだ”と言ったという有名な話がある。遠くの国のことばかり議論していれば、共感を得られないのは当たり前の話だ。新宿に行って街を歩けば、ホームレスがいっぱい倒れている状況がある。映像を見て気楽に話すのではなく、目の前に突きつけられたときの当事者性を持って話をしなければ、望遠鏡で見える所にだけ愛情を注ぎ、目の前の貧しい人たちのことが見えてないという、ディケンズの“望遠鏡的博愛”になってしまう」。

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 下村氏は「私も日本に帰ってきてテレビを見ていたとき、貧困で大変な状況におられる方が増えていることを知った。実際、寄付をお願いしようとすると、困っている日本人がたくさんいるのに、なぜ他国にお金を回さないといけないのか質問される。確かにその通りだと思う。ただ、世界的な飢餓を無くすことに取り組んでいる私としては、世界で起きていることについても少し考えていただければと思っている」と話していた。(『ABEMA Prime』より)
 

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