男子プロテニスの国別対抗戦『ATPカップ』は大会6日目を終え、決勝トーナメント進出の4カ国が出揃った。大混戦のグループCから抜け出したのはカナダだった。グループラウンド最後の戦いの相手はドイツ。勝てば準決勝進出が決まるという状況で試合は始まった。
まずナンバー2シングルスでデニス・シャポバロフ(14位)がヤン・レナード・ストルフ(51位)を7-6(5) 4-6 6-3で退け、続いてフェリックス・オジェ アリアシム(11位)がここまでセットを落としていないアレクサンダー・ズベレフ(3位)を6-4 4-6 6-3で倒した。ドイツの準決勝進出の可能性がすでに消えていたことは、多少影響しただろう。個別の勝利にポイントと賞金が付与されるとはいえ、チームが一体となって抱くモチベーションの力には及ばなかった。
カナダの魅力は、若い二人の華のあるプレーと相乗効果だ。一歳違いのふたりはジュニア時代からライバル同士であると同時に、互いの実家に寝泊まりするほどの仲良しでもある。昨年のウィンブルドンでは、オジェ アリアシムが初めてグランドスラムの準々決勝に進むと、シャポバロフはさらにその先の準決勝へと快進撃を見せた。そして1カ月半後の全米オープンで今度はオジェ アリアシムアリアシムがベスト4入りを果たすのだ。
今大会、入国する際の検査でコロナ陽性だったシャポバロフは第1戦のシングルスに調整が間に合わなかったが、するとオジェ アリアシムまでが乗りきれないムードのまま敗れた。こうしてアメリカに0-3という最悪のスタートだったが、イギリスとの第2戦ではシャポバロフが復帰。25位のダニエル・エバンスにストレートで敗れたものの、オジェアリアシムに覇気が戻った。12位と互角のキャメロン・ノリーをストレートで破り、シャポバロフとオジェ アリアシムのペアでダブルスに勝利。試合後の会見でシャポバロフは言った。
「フェリックスの試合を見てすごい刺激を受けたんだ。おもしろい試合だったし、まだ可能性はあるって思えたんだ。自信が湧いてきた。多分チームのみんなもそうだったんじゃないかな」
そして2日後。4チームが1勝1敗で並ぶグループCは、どのチームも自力だけでは1位になれなかった。カナダにチャンスが残されるのは、先にデイセッションでイギリスがアメリカに勝った場合のみ。そしてイギリスは勝った。
勢いで運も引き寄せたカナダ。勝利後、チームキャプテンでもあるオジェ アリアシムはこう振り返った。
「ロッカールームからデニスが勝ったのを見て、最高に気持ちが高まったよ。そのエネルギーを試合で生かせたと思う。僕たちのチームは最初の4試合に負けて、そこから4試合続けて勝った。この勢いを失わずに次に臨みたい」
カナダは明後日の8日、ロシアと準決勝を戦う。7位のマッテオ・ベレッティーニと10位のヤニック・シナーのいるイタリアを2−1で破ったロシアは、ベストメンバーからはほど遠い布陣であるにもかかわらず、グループラウンド3戦全勝での決勝トーナメント進出だ。
明日7日は、一日早く決勝トーナメント進出を決めていたスペインとポーランドの準決勝が行われる。両チームともグループラウンドのオーダー変更がなければ、ナンバー2シングルスでパブロ・カレーニョブスタ(20位)とカミル・マイクシャク(117位)、ナンバー1シングルスはロベルト・バウティスタ アグート(19位)とフベルト・フルカチュ(9位)が対戦する。ダブルスのペアは両チームともここまで2パターンあり、スペインはアレハンドロ・ダビドビッチ・フォキナ(50位)/ペドロ・マルチネス(69位)で2勝、マルチネス/アルベルト・ラモスビニョラス(45位)で1勝をあげている。ポーランドのほうはヤン・ジーリンスキ(D96位)/シモン・ワルコフ(D114位)で2勝したが、初戦のフルカチュ/ジーリンスキは敗れた。
ランキングで判断するならシングルスで1勝1敗となり、ダブルス勝負に持ち込まれるが、ランキングでは展開の読めないところがテニスの、特にこのATPカップのおもしろさ。マイクシャクは先日のスペイン戦で世界ランク44位のフェデリコ・デルボニスを破ったし、ダブルスのジーリンスキ/ワルコフはそのアルゼンチン戦でダブルス22位/46位のペアに勝った。
スペインはメンバーのうちトップ2を含めた3人が30代。経験値と抜群の安定感を誇るテニス大国に、平均年齢24.4歳の新進のポーランドが挑む。
文/山口奈緒美