強い寒気の影響で、各地で厳しい冷え込みが続いている。暦の上でも本格的な冬の寒さを迎えるこの時期、「暖かいお風呂に浸かって、疲れを癒すのが楽しみ」という人も多いのではないだろうか。
しかし、この行為、疲れた体を癒すどころか、命取りにすらなる危険をはらんでいる。国際医療福祉大学大学院の前田眞治教授は「ヒートショック」の現象について、こう注意を呼びかける。
「体の外の温度が上がったり下がったりすることによって、血圧が高くなったり、脈拍が増えたり減ったりしながら、体に害を与えるというのがヒートショックなんですね。脳内出血が起こったり、あるいは急激な血圧の変化で血管を閉じてしまって、脳梗塞や心筋梗塞などが起こって、死に至るということは往々にしてございます」
寒暖差による急激な血圧の変化によって脳梗塞や心筋梗塞を引き起こすというヒートショック。危険性は、それだけではない。
「血液の循環が悪くなりまして、そして頭の中に血液が行かなくなって、意識障害になってしまうということがございます。意識が遠のくという時はわからないものですから、そのままお風呂のお湯の中に沈んでしまいます。(お湯に)鼻まで入ると、死亡率90%を超えます」
ヒートショックが原因の意識障害による溺死。厚生労働省の統計(令和2年)によると、高齢者が浴槽で気を失うなどして亡くなった人数は、年間4724人。その年の交通事故の死亡者(2199人)の2倍以上となる。
しかし、これらの事故は高齢者だけの問題ではなく、若い世代も十分に警戒すべきだと前田教授は警鐘を鳴らす。
「実は血管の弾力性がある若い人でも起こります。血圧が急激に高くなって、脳出血を起こすのは若い方も。そういったことで亡くなってしまう、あるいは重度の障害が起こってしまうということも若い人にはございます。特に冷たいところから熱いところへ、熱いところから冷たいところへ、こういった乱高下が起こるような、温度変化のところには(若い世代でも)要注意ということになります」
誰しもが襲われる可能性のあるヒートショック。ヒートショックを防ぐには、浴室のドアを開けて部屋の暖気を取り込んだり、お風呂のフタを外して蒸気をたてておくなど、寒暖差をなくすように工夫することが大切だ。また、暖かい室内から外に出る時にも注意が欠かせないという。
「ヒートショックによる事故というのは、家の中から外へ出るときに非常に起こりやすいんですね。体の1部分でも出てますと、冷たい空気がパッと当たると血圧がシュッと上がるんですね。ですから、外へ出るときは(家の中が)暖かいからといって、後で着るのではなくて、家の中からコートやフリースを、しっかり着込んでいただいて外に出ていただきたいと思っております」
(『ABEMAヒルズ』より)
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