「実際の放送を見れば印象が違う」「コンビニ側にはメリットしかない」ジョブチューンの“食べずにジャッジ”炎上を冷静に分析する
ジョブチューン批判は正義?
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 「この度の番組出演者、番組とは無関係のお店に対してのSNSをはじめとする誹謗・中傷、迷惑行為はお止め頂きたくお願い申し上げます」

 放送内容が物議を醸し、出演したシェフとは無関係のシェフにまで誹謗中傷が及んだバラエティ番組『ジョブチューン アノ職業のヒミツぶっちゃけます』。騒動を受けてTBSは4日、番組の公式Twitterアカウントでそう呼びかけた。

【映像】ジョブチューン批判は正義? 食べずに論評はダメ?

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 発端となったのは、元日の放送分で、有名料理人がコンビニの人気商品をジャッジするという趣旨の企画。審査がファミリーマートの「和風ツナマヨネーズおにぎり」に及んだ際、審査員の1人であるイタリアンシェフが商品の“見た目”を吟味するも、「食べたいなという気にさせない」と、口にすることなく切り捨てた場面だった。シェフは進行役や開発者に促されて試食するも、判定は「不合格」。改善のためのアドバイスをした上で、“すみません”と謝罪した。

 一連のやりとりにTwitter上では批判や疑問の声が上がり、今も論争が続いている。

■ワンシーンだけの“切り取り”と実際の放送とでは受ける印象が異なる?

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 お笑いコンビ・鬼越トマホークの坂井良多は「我々も“誹謗中傷”をするような芸風でやっているので、思うところはある。審査員全員が“おいしい”と言ってしまえば“批評”としては良くないと思うし、ある意味で一役買って出ようとした行為でもあったと思う。そういう人がいるからこそ、番組が盛り上がる部分はあると思う。ただ、あまりこういうことを言うと、我々も炎上してしまう。それでも、番組を見ずに批判するのはダメだと思う」とコメント。

 「こういう出演者を批判しすぎた結果、全員が彦摩呂さんや勝俣州和さんみたいに“うまい!”と言う人だらけになってしまい、言いたいことを言う人、“毒舌”な人がいなくなってしまうかもしれない。ホリエモンさんやひろゆきさんのようにマイナスの意見を言っているイメージのある人が“うまい!”と言ったお店には、みんな行きたくなるんじゃないか」。

 相方の金ちゃんも「騒ぎ過ぎの気もする。テレビだし、シェフとしても番組の中での“役割”を全うしようとしただけだと思う。それから、文字にしてしまうと印象が良くないが、映像で見れば喋っているときの表情もあるし、そんなに辛く厳しい感じだったのだろうかと思う」と指摘した。

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 フードジャーナリストの山路力也氏は「番組を拝見したが、改善点のような建設的なアドバイスもされていたし、トータルで受けた印象としてはネットで騒がれているようなひどさは感じなかったし、基本的には問題ないと思う。やはり高級レストランのシェフがジャッジすることで、一般の消費者とは違う視点が入るところが番組の肝で、だからこそ面白かったのだろうなと思うし、仕組み自体は間違っていないのではないか」との見方を示す。

 実業家のハヤカワ五味氏も「私もリアルタイムで全編を見たが、なぜ食べたくないと思ったのか、すごく丁寧に説明されていたので、特に問題はないかなと思った。それがニュースになっているのを見ると、“食べずに不合格を出した”みたいな書き方で切り出されていて、だいぶ印象が違うと感じていた」、テレビ朝日平石直之アナウンサーは「コンビニ側が叩かれすぎに見えてしまうかもしれないので、編集で守ろうという意図が感じられた。結果、厳しいことを言ったシェフの側に矛先が向かってしまった」とした。

■収録した番組が燃えた時の責任は発言者?制作者?

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 ここまでの議論を受け、リディラバ代表の安部敏樹氏が、テレビ番組出演時に「そういう編集をするのか」と驚いた経験を明かした。

 「コンビニというのは、客に短時間で商品を判断してもらわないといけない。だから社内の企画会議で通そうと思えば、見た目が悪い商品はポジティブではないはずだ。その意味では、シェフの意見が逸脱しているという感じはしない。一方で、私は“収録”のテレビ番組が嫌いだ。なぜなら、勝手にめちゃくちゃな編集されることがあるからだ。

 以前、12人で議論するという番組に出演したとき、“1人対11人”の構図になっていて、“あれ?俺、現場ではここまで悪役ではなかったんだけど”と、辛かった。確かに自分の発言ではあるものの、編集の仕方次第では、別の受け取れられ方をされてしまうものになってしまう面もある。でも放送直前まで番組の内容は教えてくれないし、生放送ではないので“そういうつもりで言ったわけではない”という弁明の余地もない。

 みなさんも、時に“炎上するくらいの気持ちで言ってくれ。厳しいことを言ってくれ”みたいに言われて収録に臨むことだってあるだろう。そこで出た発言が面白かったからと切り取られたときに、“あの流れを無視してこれか”みたいなことが起きるはずだ。収録・編集があった場合、発言の責任は発言者にあるのか、それとも番組制作者あるのか、という問題も出てくると思う」。

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 この指摘に山路氏も「今回の問題の背景には、編集、あるいは番組の構成もあると思う。コンビニエンスストアの担当者が涙を流す様子が映されたことで、よりシェフに“悪役”感が出てしまった。しかし実際の現場がそこまでどうだったかは分からない。編集での切り取り方は出演者のイメージを非常に左右するものなので、私自身も、言葉には気を付けるようしている」、金ちゃんは「僕らの場合、“あそこはカットほしい”と事務所に言うタイプで、意外にリスクマネジメントをしている。ただ、今回はシェフのみが痛い目に遭っている感じがあるが、そもそもバラエティ番組なので、視聴者が真面目に見すぎというところがあるかもしれない」と話した。

■コンビニにとってはメリットしかなかった?

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 金ちゃんの示唆を受け、坂井は「味覚は人によって違う。全員が“うまい”という商品があるのなら、企画会議をやっている意味もないじゃないか。そして、このおにぎり、今メチャクチャ売り切れているらしい」と話すと、テレビ朝日の平石直之アナウンサーも「今回のことで、むしろ応援したいという気持ちになった人が買いにいった結果、売り切れの店が続出しているということが報じられている。放送ではコンビニの担当者が痛い目に遭ったということになっているが、実際には商品が売れて、逆にシェフが厳しく言い過ぎだ、という展開になっている」。

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 山路氏は「コンビニ3社に関して言えば、番組に出た結果はメリットしかなかったと思う。皆さんがテレビを見ているお正月のあの時間帯に、自社の商品をあれだけ紹介してもらえるわけで、広告宣伝に換算したらいくらになるかという話だ。恒例の企画でもあるので、コンビニとしてもあのような演出がされることも分かった上で出演しているはずで、“食べずに判断”にというあの衝撃的な場面と、その後の改善提案の場面を通して、視聴者には“コンビニの人たちというのは、こんなに一生懸命に商品開発をしているんだ”という思いが伝わったんだと思う。そしてコンビニ業界というのは、1位のシェアが圧倒的。それでも3者が横並びで出られるというのは、業界2位、3位の企業にとってはかなりのメリットがあることになる。特にファミリーマートと、あの商品の印象に一番強く残ったんじゃないか」。

 坂井は「誹謗中傷も起きるくらいの、このネット時代を逆手にとってコンビニとイタリアンのシェフが“炎上コラボ”みたいな商品を出せばいいんじゃないか(笑)」と提案していた。(『ABEMA Prime』より)

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