2度目の修羅場は、勝利でくぐり抜けた。「第1回ABEMA師弟トーナメント」予選Aリーグ2位決定戦、チーム深浦とチーム木村の対戦が1月8日に放送され、チーム深浦の佐々木大地五段(26)が個人2勝1敗で、チームの予選通過に大きく貢献した。スコア2-2で迎えた最終第5局では、タイトル経験もあるベテラン木村一基九段(48)を相手に、102手で快勝。1位決定戦でも同じく第5局を任され、惜しくも敗れ予選突破を逃していたが、同じくプレッシャーのかかる一局で、大きな勝利と経験を手に入れた。
師匠と2人でつないできた戦いを、自分の手で終わらせるわけにはいかなかった。第1局から負け、勝ち、負け、勝ちと交互に勝敗がついたこの戦い。師匠の深浦康市九段(48)は、当然といった様子で最終局に弟子の佐々木五段を送り出した。佐々木五段は過去に団体戦「ABEMAトーナメント」で木村九段と2局指し、いずれも敗れていた。もちろん予選突破も大事だが、戦いながら成長してほしいという深浦九段の“親心”を背に受けて、弟子は強い気持ちを抱いて、盤へと向かって行った。
後手番から木村九段の得意とする相掛かりをしっかりと受けて立つと、集中力が好手につながった。形勢、持ち時間ともにリードし、見守っていた深浦九段からも「おー、これはいい手だ。うん、いい手だ」と声が出るほどの充実した内容。将来はタイトル戦線にも名を連ねるのではと言われる佐々木五段の実力が十分に発揮された一局は、そのまま佐々木五段の快勝で幕を閉じた。終局後も「予選突破もかなり難しいところかなと思っていたので、内容としても悪くなかったですし、自信のつく予選突破になりました。師弟で勝ち取った予選突破なので、お互いよかったという感じです」と、顔もほころんだ。
普段から「深浦一門」としてTwitterの共同アカウントを運営する仲良し師弟でもあるが、将棋に関しては、厳しい指導もある2人。とはいえ、この土壇場での快勝に深浦九段も「ぎりぎりの戦いですが、何より佐々木大地を褒めてあげたいです。次も頼むよ」と手放しで褒めると、佐々木五段も「これだけ師匠に褒められて動揺しています」と照れた。将棋界の父親のような存在の前で、プレッシャーをはねのけての勝利。佐々木五段が飛躍するきっかけとなるには十分の戦いとなった。
◆第1回ABEMA師弟トーナメント 日本将棋連盟会長・佐藤康光九段の着想から生まれた大会。8組の師弟が予選でA、Bの2リーグに分かれてトーナメントを実施。2勝すれば勝ち抜け、2敗すれば敗退の変則で、2連勝なら1位通過、2勝1敗が2位通過となり、本戦トーナメントに進出する。対局は持ち時間5分、1手指すごとに5秒加算のフィッシャールールで、チームの対戦は予選、本戦通じて全て3本先取の5本勝負で行われる。第4局までは、どちらか一方の棋士が3局目を指すことはできない。
(ABEMA/将棋チャンネルより)