将棋ファンなら誰もが憧れる、棋士にとって最高の名誉。それが「永世称号」です。この称号は、一度タイトルを獲得しただけでは得られません。長い年月をかけて通算または連続でタイトルを規定回数防衛し続けた、真のレジェンドのみに与えられる将棋界の「殿堂入り」を意味します。本記事では、「永世竜王」「永世名人」といった称号について、基本情報からその重みまでを徹底解説します。
目次
- 将棋界最高の栄誉!「永世称号」の重みと偉業を徹底解説
- 永世称号の獲得は「気の遠くなるような偉業」
- 永世称号の規定と獲得条件一覧
- 永世称号 歴代保持者・有資格者 一覧
- 藤井聡太竜王・名人の今後の永世称号獲得シミュレーション
- まとめ
将棋界最高の栄誉!「永世称号」の重みと偉業を徹底解説
将棋や囲碁の世界には、特定のタイトルを規定回数以上獲得した棋士にのみ与えられる、永久不変の称号があります。それが「永世称号」です。
この称号の何が特別かというと、一度獲得すれば例えその後タイトルを失冠したとしても、生涯にわたって名乗り続けることができる点にあります。まさに、将棋界における「殿堂入り」の証であり、棋士にとって最高の栄誉です。
永世称号の獲得は「気の遠くなるような偉業」
将棋の永世称号は、現在「竜王、名人、叡王、王位、王座、棋聖、棋王、王将」の8つのタイトルに設けられています。その獲得条件はタイトルごとに異なり、以下の通り、非常に厳しいものです。(※王座のみ「名誉王座」という名称です)
特に永世名人は「棋士の最高栄誉」とされ、実力名人位を5期保持した棋士に与えられますが、現役中は「名人資格保持者」として、原則では引退後に正式に名乗ることが許されます。
永世称号の規定と獲得条件一覧
| 序列順 | 永世称号名 | 獲得条件 | 補足事項 |
| 1 | 永世竜王 | 連続5期 または 通算7期 保持 | |
| 2 | 永世名人 | 通算5期 保持 | 現役中は「名人資格保持者」。引退後に襲位 |
| 3 | 永世叡王 | 通算5期 保持 | 比較的新しい称号規定(2023年制定) |
| 4 | 永世王位 | 連続5期 または 通算10期 保持 | |
| 5 | 名誉王座 | 連続5期 または 通算10期 保持 | 称号の名称が「永世」ではない |
| 6 | 永世棋聖 | 通算5期 保持 | |
| 7 | 永世棋王 | 連続5期 保持 | 連続獲得のみが条件 |
| 8 | 永世王将 | 通算10期 保持 | 通算獲得のみが条件 |
永世称号 歴代保持者・有資格者 一覧
将棋の現行8タイトルおよび、終了したタイトル(永世十段など)の永世称号の資格を持つ、またはすでに襲位している主な棋士を一覧にまとめました。
| 棋士名 | 永世称号(資格) | 獲得条件・主な偉業 | 補足 |
| 羽生善治 九段 | 永世竜王、永世名人、永世王位、名誉王座、永世棋王、永世王将、永世棋聖 | 史上初の「永世七冠」の資格保持者。 現行タイトルのうち7つの永世資格を持つ。 | 現役のため、原則引退後に正式に名乗る |
| 渡辺明 九段 | 永世竜王、永世棋王 | 永世竜王(通算7期)、永世棋王(連続5期) | 現役の永世二冠の資格保持者 |
| 藤井聡太 竜王・名人 | 永世竜王、永世王位、永世棋聖 | 永世竜王(連続5期)、永世王位(連続5期)、永世棋聖(連続5期) 史上最年少で永世称号の資格を獲得 |
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| 谷川浩司 十七世名人 | 十七世名人(永世名人) | 名人 通算5期 | 現役中に十七世名人を襲位 |
| 森内俊之 九段 | 十八世名人(永世名人)の資格 | 名人 通算8期 | 現役のため、原則引退後に正式に名乗る |
| 佐藤康光 九段 | 永世棋聖 | 棋聖 通算5期 | 現役の永世棋聖資格保持者 |
| 中原誠 十六世名人 | 十六世名人、永世王位、名誉王座、永世棋聖、永世十段(※終了) | 永世五冠の資格を保持 | 十六世名人、永世十段などを襲位・名乗る |
| 大山康晴 十五世名人 | 十五世名人、永世王位、永世王将、永世棋聖、永世十段(※終了) | 永世五冠の資格を保持 | 十五世名人などを襲位・名乗る |
| 木村義雄 十四世名人 | 十四世名人 | 名人 通算8期 | 実力制名人として永世名人の資格を獲得し、襲位 |
| 米長邦雄 永世棋聖 | 永世棋聖 | 棋聖 通算5期 | 永世棋聖を名乗る |
藤井聡太竜王・名人の今後の永世称号獲得シミュレーション
藤井聡太竜王・名人は、2023年度に前人未踏の八冠を達成し、多くのタイトルで永世称号の資格獲得に向けて突き進んでいます。
ここでは、すでに資格を獲得したタイトルと、次に獲得が期待されるタイトルに焦点を当てて解説します。
1. 永世称号の資格を「すでに獲得」したタイトル
藤井聡太竜王・名人は、すでに以下の3つのタイトルで永世称号の資格を獲得しています。
| タイトル | 永世称号名 | 獲得条件 | 資格獲得時点の年齢 |
| 棋聖 | 永世棋聖 | 通算5期(連続5期) | 20歳11ヶ月 |
| 王位 | 永世王位 | 連続5期 | 21歳1ヶ月 |
| 竜王 | 永世竜王 | 連続5期 | 23歳3ヶ月 |
・永世棋聖(通算5期・連続5期): 2020年から2024年の第95期まで5連覇を達成し、規定の通算5期を満たしたため、史上最年少で永世称号の資格を獲得しました。
・永世王位(連続5期): 2020年から2024年の第65期まで5連覇を達成し、規定の連続5期を満たしたため、永世王位の資格を獲得しました。
・永世竜王(連続5期): 2021年から2025年の第38期まで5連覇を達成し、規定の連続5期を満たしたため、永世竜王の資格を獲得しました。
2. 今後の「永世称号獲得の可能性が高い」タイトル
名人(永世名人・〇世名人)
獲得条件:通算5期
現状:現在通算2期保持
・シミュレーション:現在の名人位を継続して保持し続ければ、通算5期達成は時間の問題と見られています。永世名人は「棋士の最高栄誉」であり、その達成が最も注目されます。
王将(永世王将)
獲得条件:通算10期
現状:現在通算3期保持
・シミュレーション:通算10期と非常にハードルは高いですが、藤井竜王・名人の年齢と実績を考えると、射程圏内にあると言えます。
まとめ
本記事では、棋士にとって最高の栄誉である永世称号について、その複雑な規定、歴代の偉大な保持者、そして現役トップランナーである藤井聡太棋士の驚異的な獲得スピードを解説してきました。
永世称号の獲得は、単なるタイトル獲得ではなく、「将棋の歴史に永遠に名を刻む」ことを意味します。連続または通算での規定回数をクリアするためには、数年にわたる絶対的な強さと安定感が求められます。
特に、史上初の「永世七冠」の資格を持つ羽生善治九段の偉業は、今後も語り継がれるでしょう。そして、すでに永世二冠の資格を持つ藤井聡太竜王・名人が、次にどのタイトルで永世の扉を開くのかは、将棋ファンならずとも最大の関心事です。
若くしてこれほどの偉業を成し遂げている藤井竜王・名人は、今後、最高栄誉である永世名人の資格獲得、そして史上初となる永世八冠の達成という、誰も想像しなかった領域へと将棋界を導いていく可能性があります。
将棋の「永世称号」を知ることは、棋士の壮絶な戦いの歴史を知ることに他なりません。この記事が、将棋観戦をさらに深く、ロマンあふれるものにする一助となれば幸いです。




