「制服代が高い。義務教育なのに、お金がかかり過ぎる」。無償とされる義務教育だが、授業料と教科書代を除き、体操服やドリル、絵の具や裁縫セットにリコーダー、中学では柔道着など、通学にあたっては多くの出費が強いられる。そんな状況に、保護者たちからは不満の声も上がっている。
■「子どもたちに不憫な思いはさせたくない」
佐々木カナさん(仮名・30代)がTwitterに投稿したのは、長男が公立中に入学する際の画像。指定の夏・冬服に体操服、通学用のカバンやシューズなど、一式で10万円近くになったという、その“証拠写真”だ。それでも佐々木さんは「家計的には苦しいが、試着時の長男の様子を見て、こんなに喜んでくれるなら、やはり買わなくてはいけないのかな…」と、複雑な親心を吐露。
山田えり子さん(仮名・40代)の場合、夫の仕事の都合で3回の転勤を経験。子どもたちが使っていた体操服などを買いなおしたことがあるという。 新たな土地のため知り合いもおらず、“お下がり”をもらうことも叶わなかった。「机の規格が変わって道具箱が使えなくなってしまったり、前の学校の体操服を着せて行かせるのは可哀相かなと思い、買いなおさないといけないねという話になった」。
小学6年生と小学3年生の息子を育てる木下サオリさん(仮名・40代)は、さらに厳しい状況を訴える。6年前にうつ病で仕事を辞めた夫に代わり、フルタイムで働いている。「上の子の入学式の後、教材を買うコーナーに並んだが、おはじきセットや絵の具セットなどで、すぐに1万円弱になっていた。かなりショックだった」。
年齢差から“お下がり”を使うことが出来ないこともあり、書道セットは2つ目を購入。「最近びっくりしたのが、書道セットと書初めセットが別だった。書道セットは(一番安いものでも)1人4500円、書初めセットが1人3000円、2人いるので合計15000円になった。学校は同調圧力も強いと思うので、上中下と3種類あったら、中にしておくのが、いじめのリスクも減らせて無難かなとは思うが…」。
生活に余裕はないが、子どもたちに不憫な思いはさせたくないと、切り詰めながら費用を捻出。それでも長男の中学校入学を前に、不安は募る。
「子どもが封筒を持って帰ってきて、“明日までに”と。検討する余地もないまま、いきなり8000円というときもある。でも、例えば昔ながらの竹製の物差しは、もう用済みだ。百均で買ってもいいじゃないかと思うが、それだと教室で浮いちゃうのかなということもあって、800円を払った…」。
■「学校の中にメルカリを作ればいいのでは」
このように、算数セットや色鉛筆、道具箱など一式で6000円程度、さらに通学帽や上履きなどで7000円という具合に、出費は小学校入学前の保護者説明会から始まる。そして入学してからも、様々な指定品や推奨品などを購入することになる。
大学入試対策を手掛けるLoohcs代表の斎木陽平氏は「保育所や高校の授業料の無償化というところが議論になっていたが、ここからは給食費も含め、国が補っていくことが必要だと思う。そもそも、全てのものをみんながそれぞれ買わなくてはいけないものなのだろうか。例えば彫刻刀なんて、使わなくなって処分されているのではないか。みんなが新品を買っているからそっちの方がいいとなっているだけであって、学校の中にメルカリというか、“お古”を使うのが当たり前なんだという状況を作ればいい」と提言。
するとカンニング竹山も「“100円均一で買ってください”と言ってもいいものもあると思うが、やっぱり業者が入り込んでいて、“学校指定”という形で商売をしている。確かに中学校が“私服でいいですよ”となった場合、3年間で見ると制服代よりも高くつく可能性もある。ただ、物差しや筆、分度器など、授業で使うものに関しては、学校にドサッと置いてあってもいいのではないか。リコーダーだって、口に付ける部分だけを売るようにするとか、やりかたはあると思う」と応じた。
一方、WEB漫画家のやしろあずき氏は「僕の地元には商店街があって、制服はこの店、彫刻刀はこの店と、“学校指定”があることで成り立っているところがあったと思う。そういうところも、うまく回るといいと思う」と指摘した。
■「児童手当を使えば無償化は実現できる」
『隠れ教育費』の著者で、公立中学校の事務職員として保護者の負担減に取り組んでいる栁澤靖明さんは、「本当に、“ごめんなさい”と言わなくてはいけないと思った」とした上で、次のように語った。
「そもそも憲法では義務教育は無償と定めているが、その範囲は授業料に限定されているとの解釈もあり、最高裁もその説を取っているが、それは戦後間もない時期のこと。国力が高まったら法律を作っていき、無償の範囲どんどん広げていこうという議論があった。教科書の無償化も、そういう中で出てきた。
ところがその後、“受益者負担論”、つまり利益を得る人がお金を払えばいいじゃないかという流れが出てきた。全国の教育長協議会というところでも、個人が所有するもの、個人に還元されるものは公費ではなく私費でいいんじゃないか、自治体としてもお金を出さなくても良くなるので、受益者負担論だ。しかし憲法に戻れば、教育を受ける権利というのは、保障された基本的人権だ。その権利をお金で買うのか、と考えると、無償にしていくべきじゃないかと私は考えている。
また、学校の“指定品”というのは校長を中心とした教職員で決めることになっているが、それを見直すための時間を取っている学校はほとんどない。学校側としては一応“推奨品”であって、必ず買えというわけではないが、ほとんどの保護者がそれを買ってしまうという状況もある。そうであれば、ノートや文房具についても、“共有又は備え付け”といえば、公費できる。そういう工夫をすれば、私費から公費に移行できるし、無償化に一歩でも二歩でも進めようという取り組みもできるはずだ。
もちろん、事前にご準備いただけるよう、年間でこれくらいのお金がかかるという予算を年度初めに出したり、現金ではなく引き落としにしたり、といった取り組みも現場では出てきている。また、斎木さんがおっしゃったような、使わなくなった辞書の寄付、あるいは柔道着とか制服のリサイクルなども全国的に広がっていると思うし、竹山さんがおっしゃったように、鍵盤ハーモニカの本体は買っておいて、吸い口だけ別売りにして保護者が負担しているという学校もある。
加えて就学援助の仕組みもある。ただ、利用基準や支給の時期が自治体によって異なっているし、これはそもそも私費負担でいいが、経済的に大変な家庭には国が援助しますよ、という制度。今の状況が固定化されていることには変わりない。そこで児童手当の活用だ。1人につき年間で12万円もらえるが、これで大体ペイできる計算になるので、教育という現物給付にすれば、無償化が実現できる。授業のために何が必要なのかということをしっかり精査した上で、児童手当の財源を活用していけばどうかと私は提案している」。(『ABEMA Prime』より)
この記事の画像一覧■Pick Up
・キー局全落ち!“下剋上“西澤由夏アナの「意外すぎる人生」
・「ABEMA NEWSチャンネル」がアジアで評価された理由
・「ABEMA NEWSチャンネル」知られざる番組制作の舞台裏