倒産件数が増え、薬剤師の“偏在”も…夏野剛氏「日本の薬局はシステムとして非常に非効率。統合を進めるべき」
夏野氏「非常に非効率だ」
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 去年1〜11月までの間に、全国で倒産した調剤薬局の件数が過去最多を更新したことが報じられている。(東京商工リサーチ調べ)。背景には新型コロナウイルスによる病院への“受診控え”があると見られているが、OECDの調査では、日本は薬剤師の数が先進国の中で群を抜いて多く、増加率もトップだという。

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 一体何が起きているのだろうか。

■「暇では?儲かってるんでは?と思われがちだが…」

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 13日の『ABEMA Prime』に出演した薬剤師の長尾剛司氏は、「病院の“門前”に薬局が増えていること、それに伴って薬科大の数が増えていることがある。私が入学した頃に比べて、薬科大の数は倍くらいになっている。そそういう市場の需要と供給のバランスが背景にある。さらに言えば、薬を売れば儲かる、そして医療機関の儲けにも繋がるという構造があったため、“医薬分業”として機能を薬局にシフトさせていった。このような制度変更と医療政策のマッチングに課題があったため、財務省や厚生労働省が対応を検討している状況にある」と説明。

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 また、「私の学生時代を思い出すと、“薬局を経営することが薬剤師にとって一つのゴール”みたいな、そういうキャリア形成の仕方があった」とした上で、「実は日本の制度として、1日の処方箋の枚数は40枚当たり薬剤師1人という規制もある。薬局を集約化することで、その枚数を多くするシステムも必要になっていくが、まだまだこれからだ。人に依存している部分も多いので、自動化やロボット化といったことも考えなくてはならないと思う」と話した。

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 他方、薬局の現状について医薬ジャーナリストとしても活動する薬剤師の吉澤恵理氏は「高齢化が進んだことで全国的に在宅医療が推進され、自宅で終末を迎えようという動きも出てきている。そうなると、個人に対して薬のケアをする人が必要になってくる。そのため、近年では薬剤師にしかできないような仕事にシフトしていて、人手不足の現場も少なくない」と明かす。

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 薬局に行くと薬剤師たちが暇そうにしているように見えることもあるかもしれないが、実はガラスの向こう側では、そういう患者さんたちのためにオーダーメイドの調剤を行っている。何種類もの薬を朝用・昼用などにパッキングし、個人宅や施設に配達、“お薬カレンダー”などにセットする。しかもセットして終わりではなく、飲み残しがないか、飲んだ時に体調の変化はなかったか、といった情報を吸い上げて医師に伝え、問題があれば解決策を探る。

 これは都会でも同様で、私もフリーランスの薬剤師として東京、千葉、埼玉の薬局から個人宅にお届けする仕事もしている。こうした仕事が一般の方には見えにくく、昔ながらの、“薬を取って渡すだけ”のままで成長が止まっている薬局もあるので、暇ではないか、お金が儲かっているではないかと思われがちだ」。

■「統合を進めて行かなければ、薬剤師さんを効率的に動かしていくことはできない」

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 こうした状況に対し、規制改革推進会議の議長としてオンライン診療の問題などに取り組んできた慶應義塾大学の夏野剛・特別招聘教授は「薬局の数が多いことが問題だ」と問題提起。

 「門前薬局はうちの近くにもいっぱいあるが、結局は同じ薬を複数の窓口で出しているだけ。僕の子どもが“その薬は扱っていない”と言われ、他の薬局に言ってみると、どこも扱っておらず、結局“取り寄せるので明日また来てくれ”ということになった。つまり、数としては多いのに、決められたことをやれば決められた収入があるので、全く競争の仕組みが機能していない。

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 一方で、吉澤さんがおっしゃったように、自宅へ届けるというところまでやろうとすれば、薬局当たりの薬剤師さんの数を増やさないといけない。でも30万人もいる薬剤師さんの中には、大変な業務をやられていない方々もいる。やはり薬局の統合を進めて行かなければ、薬剤師さんを効率的に動かしていくことはできない。

 加えて、処方にも問題がある。一体どれだけの人が“お薬手帳“を使っているだろうか。あるいは病院で診断を受けた後、一度外に出なければならない決まりになっているので、雨が降っているときは濡れながら処方箋を薬局に持って行く。そして、薬局で改めて症状について説明しなければならないということもある。システムとして非常に非効率だ。

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 やはり薬の知識もインターネットで簡単に検索できるようになった今、時代に合わせた形にしていかないといけないし、コロナ禍でオンライン薬剤処方ができるようになったのに、活用している薬局はまだまだ少ない。冒頭で“倒産が増えている”と紹介されていたが、残念ながら6万件のうち26件だけだ。他の産業の倒産率から見れば、あり得ないくらい低いし、“増えている”というのはおかしい。

 そもそも日本医療の最大の問題点は、個人営業の方が儲かることだ。それは17万人いるお医者さんも一緒で、勤務医さんは厳しい労働環境で待遇も良くないのに、個人開業医さんはコロナになってもほとんど面倒を見ようとしない」。

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 東洋経済新報社・会社四季報センター長の山田俊浩氏も「例えばTSUTAYAなどのチェーンが進出してきた結果、昔からあった町のビデオ屋さんが無くなったように、薬局も大手によるM&Aなどで伸びてきている。やはり大病院の門前で並んでいる薬局はサービスが良く、そこに患者が集中することでの淘汰も始まっていくと思う。アメリカではAmazonが実験的に取り組みを進めているし、日本でも薬価が継続的に引き下げられていく。“このままではいけないよね”というのは薬局の方も分かっていると思う」と話していた。(『ABEMA Prime』より)

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