衆議院選挙の小選挙区の「10増10減」をめぐって、自民党内から異論が噴出している。
選出する議員一人あたりに対する有権者数が選挙区によって大きく違うなど、いわゆる「一票の格差」を是正するために決められた「10増10減」。東京、神奈川、愛知など大都市圏で10議席増え、宮城、福島、和歌山、山口など10の県では1議席ずつ減ることになる。
【映像】ひろゆき氏、議員定数増の声に「焼け太りだ。政治家が幸せになりたいだけ」
11日、自民党の世耕弘成参院幹事長は国会内で「場合によっては議員定数を増やすという選択肢も考えてはいいのではないか」と発言。自民党の二階俊博元幹事長も10日のラジオ番組で「腹立たしい。こんなことが許されるのか。地方にとって迷惑な話だ」と述べている。
選挙区の区割り見直しは2016年、当時の安倍総理のもと、与党の自民党、公明党の賛成多数で決まったが、そもそも議員は増やすべきなのか、減らすべきなのか。ニュース番組『ABEMA Prime』に出演した稲田朋美・衆議院議員は「一票の格差と議員定数が少ないか多いかは別問題」とした上で「少し増やすことに賛同したい」と話す。
「私は議員定数は増やしてもいいと思う。なぜかというと、この問題と少し離れるが、今の選挙制度の中で、女性の候補者を増やしていくことが、特に自民党の中でも、なかなか難しくなっている。そういう意味から議員定数を少し増やすことに賛同したい」と意見。
議員定数は、2012年の野田総理(当時)と自民党・安倍総裁(当時)の党首討論の中で、消費税を上げる代わりに、身を切る改革として0増5減を行ったが、また増やしてもいいのだろうか。稲田氏は「日本の議員の数は、諸外国と比べて決して多いわけではない。定数削減であれば、安倍政権になってから15減らしている。身を切る改革はまた考えたらいい」と話す。
これを聞いたネット掲示板『2ちゃんねる』創設者のひろゆき氏は「そもそもコロナ禍で普通に働いている人の給料が上がらなくて大変だと言っている中『一票の格差を直さないといけないから議員を増やそう』って、もう焼け太りしようぜと言っているだけではないか」と指摘。「一票の格差を直すために議員を減らせば丸く収まる。丸く収めるよりも自分たちの派閥を広げて『無職になるよりは政治家でいたい』という人に、税金からお金を払い続けるために、定員を増やそうと言っているのではないか。国民のためじゃなくて、自民党の政治家の人たちが幸せになりたいだけでは。10増10減ならまだ分かる。でも議員定数を増やすのは『それは焼け太りじゃないの?』という話だ。一票の格差を直すためなら10増10減でいい。一票の格差を直す以外の目的があるから、議員定数を増やそうと言っているのではないか」と疑問を呈した。
稲田氏は「一票の格差を直す話と、議員定数の話は別だ。一票の格差を直すために、最高裁が言っているのは『2倍以下にすべき』と言っている。2倍以下にする仕方は、0増5減のときもそうだったが、いろいろな方法がある中で、アダムス方式で10増10減することになっている。それがどのような問題になるのか。地方の議員をどんどん減らしていく弊害は、元当事者としてあると思っている」との考えを示した。
一方、リディラバ代表の安部敏樹氏は「稲田さんの言っていることは、僕には理解しづらい。女性の議員比率を上げる目的なら、たぶん今減らしたほうがいい。10増10減で、1回ここで男性の政治家たちに辞めてもらって、それからもう1回増やせば女性の数が増える。稲田さんの目指している方向に進むのではないか」と指摘。
元経産省キャリア官僚で制度アナリストの宇佐美典也氏は「お金の話は別に政党交付金を減らして、議員の方に当てるなどで調整できるから、全体で調整すればいい。議員を増やすことも選択肢でありだと思うし、そもそも一票は平等であるべきもの。アメリカなんてもっと厳格だ。上院下院の差で分けて、アメリカだったら下院ではほとんど1票は平等になっている」と述べる。
作家の鈴木涼美氏は「一票の格差の問題はもう法律ができていて、何度も違憲状態だという判決も出ている。既定路線で直していくべきだ」と意見。「一票の重みが重い地域の人が『10増10減』に反対するのは、当たり前だ。だって自分が損するんだから。でも今、得している状態の人の意見は別に聞かなくていいと思う。一票の格差の問題と議員定数の問題を別に考えることはもちろんそうだが、おじいさん(議員)たちが不利益で拒否して、話が本当に進まなくて一票の格差がこのままになるぐらいだったら、都心(の議員数)を増やすという選択肢もなくはないのかなと思う」と考えを示した。
作家の乙武洋匡氏は「そもそも一票の格差が、なぜ地方と都会みたいな場所の問題だけで語られるのか。これが不思議だ」と疑問を投げかける。
「そもそも憲法では、選挙を通じて選ばれた国会議員は、全国民のために仕事をすることが定められている。だから、本来は和歌山県から選出されたから和歌山県民のために、福井県から選出されたから福井県民のためにということではなく、約1億3000万人全国民のために働く。建前としてはこうなっている。ところが現実は選出された議員は、自分の県のために働いていることも多い。だからそこの議員が減ると『地方の声が届かなくなるんだ』というのもそれは確かに現実だと思う」
その上で、「だったら、他のことにも目を向けてほしい」といい「男性女性、日本国民はほぼ半々なのに、議員は男性ばかり、女性は少ない。これは女性の声が届きにくい状態になっていないか。年齢も20代が人口の中に一定程度いるのに、20代の議員がどれだけ国会議員の中にいるか。障害を持って議員をしている人はどれだけいるか。数が少ないところに議員を置かないと、声が通らなくなるのは納得できる。ところが他のことは何も言わずに、たまたまその地方のことだけを言うから『あなたたちが議席なくなるから(反対している)でしょ』と思われちゃう。これは当然だと思う」と訴え。
乙武氏の意見に稲田氏は「すごく共感する。全く同じだ」とコメント。「日本の国民の代表であるべき国会になぜ10%しか、女性の議員がいないのか。ひとり親の問題や、女性活躍と言った途端に左翼だと言われ、おかしなことになる。障害者の問題もそうだし、若者の問題もそうだし、そういう多様な国の姿を国会に表すためには、私は単独比例という制度はいいと思う。それを入れるために、議員定数を増やすことも考えるべきだと思う」と答えた。(『ABEMA Prime』より)
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