救急搬送が毎月…「“難病”に指定してほしい」治療への助成や研究開発の促進を求める患者たち
‘希少疾患’当事者に聞く
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 「最近では、救急車で運ばれるのが毎月のこと。アナフィラキシーショックになって意識がなくなることもある」。

 外村潮美さん(20)は、骨髄内の「肥満細胞」が異常に増え、重いアレルギー症状を引き起こす「全身性肥満細胞症」を患っている。国内に数人いるかどうかといわれる、希少な病気だ。

【映像】指定難病とどう違う?‘希少疾患’当事者に聞く

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 症状を抑えるためには、白血病治療に使われる高額な抗がん薬など6種類の薬を服用しなければならない。しかし20歳の成人を迎えたことで助成の対象から外れてしまい、月1万円程度だった自己負担額が大きくなってしまった。

■「難病指定」を目指して活動

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 そこで外村さんが目指しているのが、国による「全身性肥満細胞症」の「難病指定」だ。これが認められれば、医療費の助成が受けられたり、治療薬の選択肢が増えたり、といったことが期待されるという。

 ただ、「全身性肥満細胞症」の患者数は極めて少ないため、“横のつながり”は持てていない。そこで外村さんは、主治医とともに全国の患者の状況について調べながら、SNSでの情報発信をするほか、オンライン署名のキャンペーンを立ち上げ、申請に向けた活動を続けている。

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 「目標は10万人だが、署名は3万6000人くらいまで来た。国会議員や、指定難病について決める人に伝わるといいなと思っている。体調が良くなってアナフィラキシーが出なくなってきたら、検討委員会に申請したい」。

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 日本難病・疾病団体協議会常務理事の辻邦夫さんは「罹る確率が低かったとしても、国民の誰しもが罹る可能性を持っていることに変わりはない。やはり国民全体の問題として捉えていかなければならない、ということで二つの制度が出来ている。一つは改正児童福祉法で、名前の通り小児慢性疾患の患者に対する“福祉“のためだ。もう一つが、指定難病に関わる難病法で、こちらは福祉の部分に加え、研究者が少ないところを促進するためという意味もある。

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 ここで問題になるのが、制度の切れ目の問題だ。例えば小児がんについては、がん対策基本法があり、別の体系になっているので、大人になるとほとんどの方の助成が除外されてしまうという状況が生まれてしまう。もちろん、全ての難病が指定されるべきだが、こうした制度上の問題、そして国民の理解が進んでいないこともあり、なかなか打破できない」と話す。

■「具体的に何がダメだったのか分からない」

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 辻さんの話にもあったように、日本の難病支援は緒についたばかりだ。2014年に「難病法」が成立し、指定された難病も338個まで増えてきたものの、指定されるのは簡単なことではない。実際、去年6月の厚生労働省の検討委員会による審査通過では、48疾患のうち追加された疾患はわずかに6にとどまる。

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 「政治家の方々も、それこそ与野党関係なく議員連盟を作っていただいて応援していただいているし、委員会のメンバーである先生方には全てを難病に指定したいという方も多い。ただ、医療費の助成が行われるということは、税金を使うということだ。そこは国民の納得が得られるかどうかが非常に大切なところで、慎重に検討しなければならないというところがある」と説明する。

 また、委員会の議論は非公開だという。「厚労省が言うには、“傍聴者がいると突っ込んだ議論、率直な意見交換ができない”ということだが、それではかえって疑心暗鬼を呼んでしまう」。

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 歩行障害やてんかん発作などの他に感染症に弱いという特徴がある希少難病「MECP2重複症候群」を患う河越かなでくん(9)の母・直美さんは、「指定難病に登録されることでデータベースに疾患が載るので、治療のための研究が進んだり、そこへの助成金が下りたりする面もあると思う」と話す。

 ただ、「MECP2重複症候群」は2年連続で検討までは辿り着くも指定は見送られたまま。直美さんは「具体的に何がダメだったのか分からないと先生もおっしゃっていたので、そうなると私たちとしてもどうしたらいいのかなと…」と肩を落とした。

■佐々木俊尚氏「患者数が少ない疾患に対しては」

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 指定難病の「潰瘍性大腸炎」の患者でもあるジャーナリストの佐々木俊尚氏は「単純にいうと、指定の要件は患者数が多いということ、原因が分からないこと、完治しないことの大きく3つだ。潰瘍性大腸炎も12万人くらいの患者がいるので研究費が投入され、20年くらい前に比べて劇的に薬が良くなった。第2次安倍政権が続いたのも、安倍さんがその恩恵を受けたからだと思う。

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 一方で、潰瘍性大腸炎には軽症、中等症の方もたくさんいて、重症化する人はわずか。だから助成も中等症以上の人にしか出ないし、もう難病指定から解除しまってもいいのかもしれない。日本は高額療養費制度もあるので、他の国に比べれば自己負担額も数万円くらいで済むことも多い。どちらかと言えば、国から認められたり、治療法が開発したりといった、先の見通しが立たないことだと思う。そして、コミュニティだ。潰瘍性大腸炎の場合、患者同士の交流も活発だし、情報も得やすいという意味では安心感がある。だから外村さんのように周りに誰もいない孤独を想像すると、いたたまれないものがある。

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 これは想像でしかないが、指定難病として認められないのは、それによってどんどん歳出が増えていくのではないかといった、役人特有の恐怖感のようなものもあるのかもしれない。それでも、やはり外村さんのように患者数が少ない疾患に対しては、少なくとも助成は増やせるように制度改正すればいいのではないか」。(『ABEMA Prime』より)

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