19日に開催された衆議院本会議で、日本のアート振興について、岸田総理大臣が「わが国の文化資源やアート作品は、観光を通じた地域活性化などに貢献する資産であり、これらを将来にわたって継承活用するため世界に魅力を発信し、新たな創造を持続的に支えることが重要だ」と述べた。
【映像】ひろゆき氏「クールジャパンは失敗」利益が出る“やり方”に言及(17:00ごろ〜)
アート振興の推進を明言した形になったが、世界的に見ても、日本のアート市場規模は低い水準で推移。まさにアート“後進国”といえる。アート市場で遅れを取る日本には、何が必要なのだろうか。
ニュース番組『ABEMA Prime』に出演したウェブ版「美術手帖」編集長でアートジャーナリストの橋爪勇介氏は「日本は美術館に行くと(人が)とても多い。新型コロナの流行前だと大きい展覧会に60万〜70万人が行っていたような国だ」と話す。
「それなのに『市場はこの数字?』と意外に思われる。売り買いになると、途端に冷めた感じになってしまう感じは何なんだと。文化予算も、日本は韓国の10分の1しかない。GDP比でいうと、日本の方が大きいのにもかかわらず、ここまで文化がないがしろにされている。このような状況は変わっていってほしい」
橋爪氏が特に注目しているのが、韓国のアート施策だ。橋爪氏は「韓国は軽減税率や、税に対して優遇することを明確にしている。それによって海外のギャラリーがどんどん進出した。『フリーズ』という世界的なアートフェアが今年初めて韓国で行われる。韓国は世界のアート市場の中でも、どんどん頭角を現してきている」と説明する。
なかなか広がらない日本のアート市場に、ネット掲示板『2ちゃんねる』創設者のひろゆき氏は「これは区分けの問題だ」と指摘。フランスでは18歳になると、日本円で3万円程度の“アートパス”が支給され、漫画や映画、音楽など、好きなアート作品を購入できるという。ひろゆき氏によると、日本でも大ヒットした『鬼滅の刃』の漫画がアートパスでかなり売れているといい「フランスでは『鬼滅の刃』はアートだ。本来、海外で売れている漫画やアニメはアート市場でカウントしてもいいはずなのに、日本では『漫画はアートではない』と切り捨てている。それでは市場が狭くなる。数字のマジックの問題ではないか」と見解を語った。
コロナ禍により大規模なアートイベントの開催が減る中、注目されているのがアート作品とNFT技術の掛け合わせだ。売買も活性化し、中には億単位の高額で取引されるNFT作品も存在する。中でもフランスはヨーロッパにおけるNFTアートの中心地になりつつあり、アメリカ・シアトルでもNFT美術館がオープンするなど、世界の注目が集まっている。
橋爪氏はNFTアートの盛り上がりをどのように見ているのだろうか。橋爪氏は「正直、分からない。去年、NFTの記事を何回書いたんだというほど書いた。NFTアートと言われても、我々が今まで見てきた既存機能とちょっと文脈が違うアートもNFTの中にどんどん入ってきている。それこそ、これまでのアートでは考えられないようなクリプトアート、ピクセルアートなどが入ってきている中で、どうなるか正直分からない」と述べる。
投資としてNFTアートを持っておくと、何か先行利益があるのだろうか。ひろゆき氏は「ビットコインや仮想通貨と一緒で、基本的に価値はほぼないだろう」と話す。「ただ『価値があるんじゃね?』というふうに買っていく人がいるので“投機”で金額が上がっていく。ババ抜きみたいなもので、最後の人が損をする。価格がつくかどうか、こういうものだと言えない橋爪さんが正解じゃないかなと思う」と述べた。
その上で、ひろゆき氏は「定着はすると思う」とNFTアートに言及。「例えば『まんだらけ』(※漫画やフィギュア、プラモデルなどを扱う店舗)みたいなもので、他の人には全然価値を感じないような昔のおもちゃが10万円とかで売られている。他の人の家にあったらゴミと見なされるようなものでも、高い商品があったりする。他人にとって何の価値のないものでも『NFTの市場で売られているもの』という文脈で買われる。(NFTアートは)残り続けると思うが、基本ババ抜きであるという構造は変わらないんじゃないかなと思う」と推測した。
また、日本人がアート作品を買わない理由として、ひろゆき氏は「日本の構造の問題だ」と指摘。
「例えば、家に40億円の絵を置いておいて、地震でその絵が破れたらどうするのか。ヨーロッパには何百年も崩れていない倉庫がいくらでもある。湿度もそんなに高くないから、そこに画を置いておけばいい。でも、日本の場合は湿度も高いから、置いておいたら腐るかもしれないし、地震もあるし、火事もある。(値段が)高い作品を長期保存するコストが高すぎる。そういう問題があって、日本のお金持ちがあまり投資しないというのはある」
(『ABEMA Prime』より)
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