硬貨取引や通帳発行にかかる“手数料”が話題…電子決済を促す銀行業界が見据える「BaaS」とは?
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 「ゆうちょ銀行が51枚を超える硬貨の取引に手数料」
 「三菱UFJ銀行が4月以降、新規口座で紙の通帳を発行する場合、年間550円の手数料」

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 銀行の新たな方針をめぐって、利用者からは困惑の声が相次いでいる。ところが、元日本銀行フィンテックセンター長で京都大学公共政策大学院の岩下直行教授は「金融環境が変わった」と指摘する。

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 「硬貨の取引や紙の通帳の話は、ゆうちょ銀行や三菱UFJ銀行だけではない。実は多くの銀行で硬貨の取り扱いは有料化されているし、通帳も銀行によって違うが、紙の発行には一定の費用がかかるといったルールが導入されている。皆さんは通帳は発行されるのが当然だと思っているかもしれないが、紙の通帳を発行しているのは日本の銀行ぐらいで、ドイツでちょっと例があるぐらいだ。だから海外の人から見ると、日本の銀行はなんて便利なんだろうということになるらしい。

 その上で硬貨の交換や通帳の発行はなぜ有料化されるかということだが、それはかなりのコストがかかっていたからだ。通帳に関していえば特別な紙を使っているし、1冊あたり1000円くらいかかっているのではないか。また、ATMも専用のものを作らないといけない。しかも年間で200円の印紙税を払っていたりする。

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 これは金融が自由化される前の1980年代ぐらいまで、銀行は規制の下で利ざやが確保されていたので、規模を大きくすれば儲かったからだ。そのためには預金を集めなくてはいけない。したがって預金をくださる方々は“神様”なので、最大限のサービスをしようという発想になっていた。

 ところが今や規模を大きくしたからといって、自動的に儲かる時代ではなくなった。加えてスマホの普及とキャッシュレスの拡大という環境の変化もある。銀行としても、電子決済中心のお客様は安上がりなので、どんどん使っていただきたい。一方、紙幣や硬貨、紙・ハンコなど、伝統的でコストのかかるものを愛用するお客様もいる。両者の間でコストの差がはっきり出てきてしまったので、なるべく電子決済の方向に誘導していきたい。これが有償化の背景にあるということだ」。

 岩下教授が指摘したキャッシュレス決済、インターネット・バンキングが普及した先には、これまで銀行が提供してきた機能をAPI化する「BaaS(Banking as a Service)」というクラウドサービスも構想されている。

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 九州のふくおかフィナンシャルグループ傘下のデジタルバンク「みんなの銀行」の永吉健一副頭取は「預金や振込、為替、貸付といた機能を開放し、事業者さんが自社のアプリやウェブサイトから使えるようにし、例えば預金残高を確認したり、お金を送ったりできるようにするという世界だ」と話す。

 「例えばカーディーラーさんハウスメーカーさんから見積書をもらい、メインバンクにローンの申し込みをしに行っていたのが、その場で審査が完了し、“新たに200万を今3%で貸しますよ。どうしますか?”と聞かれ、ポチっと押したら借り入れができる、といったことが可能になるのではないか」。

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 オンラインサロン「田端大学」塾長の田端信太郎氏は「例えば携帯電話会社を引っ越すたびに電話番号が変わってしまうことが、スイッチさせる上での障壁になっていた。それでは携帯電話会社の競争が促進されないということで、総務省がナンバーポータビリティを導入した。銀行口座も同様で、クレジットカードや公共料金の引き落とし先と紐づいてしまうので、某銀行のようにシステム障害を繰り返していたとしても顧客は“メインバンクだから変えられない”となって、新規参入したい銀行もなかなか割って入れない。そうしたところも、銀行同士のAPIでオープンになってほしいと思う」とコメント。

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 岩下教授は「すでにBaaSは相当な規模で拡大していて、例えば住信SBIネット銀行さんの場合、ヤマダ電機でネット銀行の口座を作れることができる。あるいは第一生命保険さんが保険料の引き落としや払い込みのために住信SBIネット銀行と楽天銀行を選ぶということが報じられたが、これはつまり第一生命が銀行の代理店になって、口座を作らせるということができるようになるというものだ。これまで銀行に行かなくてはできなかったことが他の企業の中でできるのがBaaSだ。大いに可能性があるし、すごく便利になると思う」と話していた。(『ABEMA Prime』より)

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