家計簿アプリなどを提供する株式会社マネーフォワードでは、1200人を超える社員のうち3割ほどが何らかの“つながり”がきっかけで入社したのだという。同社の富田政孝・人材採用部長は「“自分のチームには、あの人がいいんじゃないか”とイメージする。“リファラル採用”だからこそ、それが実現できると思う」と説明する。
“こんな人物が欲しい”という人事の情報に基づき、社員が条件に合うような知人・友人、あるいは家族を勧誘、担当者に紹介し、採用へつなげるリファラル採用だが、富田氏は旧来の“コネ採用”“縁故採用”と違いについてこう強調する。「人柄やスキルはしっかりジャッジさせていただいているし、お互いを理解した上で判断しているのが違いだ」。
パーソルホールディングス株式会社の市野喜久・グループ営業本部担当部長も「通常の採用活動では有能な方との出会いが難しいということで、企業側が取り入れていっている。“つながり”という意味では“コネ”“縁故”と同じかもしれないが、そこには“自分の家族や会社と取引がある”というイメージが強い。その点、リファラル採用は、自身が直接つながりを持っているという違いがあると思う」と話す。
「リファラル採用には、採用の効率が上がる、入社した方が辞めにくい、といった効果がある。もはや1社だけという“終身雇用”の時代ではないし、今は大企業中心に広まっているが、ある意味で従業員がリファラル採用の媒体だとするならば、中小企業や地方の企業でも広がると見ている。逆に、様々な採用方法、マーケットの知識など、都市圏や大企業との格差を埋めていかないと、人材が獲得できなくなってしまう可能性もある」。
そんな“リファラル採用”の支援サービスを約800社に提供する株式会社MyReferの鈴木貴史CEOは「背景には労働人口が減少し、優秀な人材を獲得できなくなってきたという環境の変化があると思う」との見方を示す。
「リーマンショック以降、有効求人倍率が伸び続けているが、企業の採用手法は求人広告を出す“待ち型”から、ダイレクト・リクルーティングと言って、スカウトに行くような“攻め”の文化が浸透し始めた。人脈を生かすリファラル採用は、その延長で広がっていったと思う。リファラル採用を使って転職の潜在層に対して戦略的にアプローチするという流れが2017~18年頃に来た」。
エンジニアでもあるタレントの池澤あやかは「特にソフトエンジニアは人材獲得が難しくなっていて、ベンチャーでは採用のためのコストが大きな負担になってきている。人間関係が近ければ入社してくれる可能性も高いし、IT業界だと割とメインの採用方法になってきていると実感している。最近では、紹介してくれた社員に報酬を出している企業も増えている」と話す。
株式会社KADOKAWAや株式会社ドワンゴの社長も務める慶應義塾大学の夏野剛・特別招聘教授は「まず、“コネ”や“縁故”が関わってくるのは、ほとんどが新卒採用の話だ。逆に、リファラル採用はほぼ中途採用の話だということだ。また、日本企業のインターン制度は国際標準ではない、“えせインターン制度”だ。海外のインターンは2カ月、3カ月と働くが、日本では数日程度。これでは能力や適正も分からないし、ただ優先的に入社させるための“青田買い”だ」と指摘。
その上で、「うちの会社でもリファラル採用は積極的にやっていて、採用となった場合は本人に50万円、紹介してくれた社員にも50万円をあげることにしている。それでも日本の求人サービスの中間マージンが大きく、採用されるとかなりの額を成功報酬として取られてしまうから、リファラル採用の方がいい。また、普通の人材紹介で来るのだと採用率は2%くらいだが、リファラル採用の40%くらいある。それはリアルに知らない人は紹介できない仕組みになっているからだ。やはりSNS上でしか付き合いがない人を推薦されても、能力も何も分からない。うちの会社では、それはリファラルとは呼んでいない」と話していた。(『ABEMA Prime』より)
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