数秒単位で繰り広げられる詰むや詰まざるやの攻防は、対局者だけでなく観戦している棋士にとってもスリリングで難解だ。「第1回ABEMA師弟トーナメント」予選Bリーグ1位決定戦、チーム鈴木とチーム中田の対戦が1月29日に放送されたが、この第1局でチーム鈴木の梶浦宏孝七段(26)と、チーム中田・佐藤天彦九段(34)が激闘を繰り広げたことで、解説を務めていた中村修九段(59)が「いやー、意味がわからない」とパニックに。この様子にファンも同じく興奮することになった。
この大会は、団体戦「ABEMAトーナメント」ほかで用いられている持ち時間5分・1手指すごとに5秒加算というフィッシャールールで戦う。残りが1分、2分とあるうちはまだいいが、最終盤で残りが10秒にも満たない状況が繰り返されると、経験豊富な棋士であっても、簡単には乗り切れない。読みどころではなく、反射的に手が行くところで指すほどだ。この佐藤九段と梶浦七段の一局でも、攻める側・守る側、少しでも間違えば一瞬で決着がつくというしびれる展開になった。
厳しく攻める佐藤九段に、なんとかしのごうとする梶浦七段。これを解説するはずだった中村九段も、さすがに思考と言葉が追いつかない。「うわー、いやー。際どい。いやー、意味がわからない。うわー、打ち歩詰めに…、ぎりぎりだな。こんなので受かるの?ウソでしょ?え?これはダメだって言っているのに、ダメじゃないの?困ったねぇ」。もちろんこの言葉だけでは意味がわからないが、盤面を見ても詰んでいるのかしのいでいるのかわからない。それほど難解な局面が、数秒単位で進行していくのだから、指し手も解説もたまったものではなかった。
対局は佐藤九段が118手で制したが、この熱戦を見守ったファンも興奮が冷めないのか「おお、アクロバティックだな」「激しいよおお」「すごい。サーカスみたいだ」といった感想が多く見られていた。
◆第1回ABEMA師弟トーナメント 日本将棋連盟会長・佐藤康光九段の着想から生まれた大会。8組の師弟が予選でA、Bの2リーグに分かれてトーナメントを実施。2勝すれば勝ち抜け、2敗すれば敗退の変則で、2連勝なら1位通過、2勝1敗が2位通過となり、本戦トーナメントに進出する。対局は持ち時間5分、1手指すごとに5秒加算のフィッシャールールで、チームの対戦は予選、本戦通じて全て3本先取の5本勝負で行われる。第4局までは、どちらか一方の棋士が3局目を指すことはできない。
(ABEMA/将棋チャンネルより)




