「障がい者と健常者の壁を壊す」「選択肢の幅を広げてあげたい」“車いすモデル”の挑戦
葦原海さん撮影風景
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 事故で両脚を失いながらも、車いすのモデルとして活動を行う女性がいる。「障がい者と健常者の壁を壊したい」と表舞台に立ち続ける彼女の思いに、ニュース番組『ABEMAヒルズ』は迫った。

【映像】葦原海さんの撮影風景

 1月某日。この日、都内の結婚式場で行われていたのは、とあるファッションブランドの撮影会。撮影するカメラマンと被写体となる女性モデル。一見よくある撮影風景だが、よく見るとモデルを務める女性には両脚がない――。

 彼女は葦原海さん(24)。モデルを中心にタレント活動を行っていて、モデル業の他、SNSで車いすユーザーの日常を発信している。TikTokのフォロワーは35万人に上る。現在、事務所に所属せず、フリーで活動しているという葦原さん。多い時には1日5本以上の仕事を抱える日もあり、移動は車いすで行くことが多いという。

 車いすユーザーでモデル。独自の道を切り開いている葦原さんだが一体なぜ、彼女は発信を行っているのだろうか。

「エンタメを通して、知らないという壁を壊したいんですよね。『自然と福祉のことを知るきっかけになった』という機会を増やしたくて」

 笑顔の裏に隠された、確固たる思い。かつてはテレビの美術スタッフを目指していたという葦原さんは、高校生のころの交通事故が原因で車いすユーザーとなった。

「一番最初に目覚めた時は、母の泣き顔が見えたんですね。事故のこととか全然覚えてないですけど、ベッドだったし、母は泣いていて。その時は足も切断されてたので、痛み止めや麻酔も効いて、目が覚めたらすぐ寝てしまう感じだったので、『あ、生きてる』というのが第一声の感想です」

「障がい者と健常者の壁を壊す」「選択肢の幅を広げてあげたい」“車いすモデル”の挑戦
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 しかし、この逆境にも葦原さんはめげることはなかったと話す。

「足を失ったことに対して落ち込んだことは一回も無くて、周りの目線を気にするということも元からなかったんですよね。周りと違うというギャップとかに悩むことは無かったし、周りの目線気にして動けなかった時期があるとか、そういうのは全く無かったです」

 そんな葦原さんの人生に転機が訪れた。「テレビの裏側が見てみたい」と参加した、パラリンピック普及が目的で開催されたファッションショー。ランウェイを歩く中、彼女が目の当たりにしたのは、観客の大半が障がいを持つ人や福祉に関わる人しかいないという光景だった。

「『パラリンピックをもっと親しんで貰いたい』とか、『知ってもらいたい』という一貫性もあったと思うんです。なのでリオパラリンピックの選手とかもランウェイ歩かれてたんですけど、広めたいと思ってやったイベントが、実際、そもそも興味・関心ある人にしか届いていないという風に見えたときに、『それを変えたい』と思ったのがきっかけです」

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 どうしたら「障がい者」と「健常者」の壁を壊すことが出来るのか……。彼女が出した答えは「表舞台に立つ」ということだった。車いすユーザーである自身が活動を行うことで、障がい者と呼ばれる人たちの新たな在り方を考えるきっかけを作る。そんな思いから、彼女は車いすタレントとして活動を開始した。

「かわいいとかおしゃれとか、みんなが幅広く興味関心を持つフィールドで、その先にたまたま発信してるユーザーが車いすユーザーだから『車いすの目線も知れた』とか、『自然と福祉のことを知るきっかけになった』という機会を増やしたくて。エンタメを通して、知らないという壁を壊したいんです。バリアフリーというのは、そもそも知るきっかけが一番のバリアフリーだと思っているので」

 YouTubeやInstagramといったSNSを通じた発信。更に講演会や自治体のPR撮影など、様々な活動を行う葦原さん。彼女にはもう一つ、大きな目的があった。

「障がいを持った子たちが通う学校に行ったときに、『あなたの将来の夢はなんですか』と聞いても、モデルや女優と答える人がいなくて。『車いすユーザーだからアイドルや女優できない』というところよりも、『この人みたいになりたい』という憧れの人物像がいないとか、想像できる環境がないというところが一番なのかなと個人的に思って、だからこそ『この人みたいになりたい』と思ってもらえるように、選択肢の幅を広げてあげたいなって思ってます」

 活動開始から約5年。SDGsの推進など、徐々に障がい者を取り巻く環境の変化を感じるようになったと葦原さんは話す。「エンタメで障がい者と健常者の壁を壊す」という大きな目的に向かって一歩ずつ、歩みを進めていきたいという。

「(壁は)徐々に壊せているんじゃないかなと思います。まだまだだとは思っているんですけど。1、2年前を振り返ると、少し先に進めているのかなと思います。一つの目標とすれば、モデルとして、『車いすの人でモデルのこういう人がいるんだ』という知名度をもっとあげたいなと思ってるし。職業の一つとして成り立たせることが一つの目標として思っています」(『ABEMAヒルズ』より)

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