恋愛を語る手段から、アイドルとファンを繋ぐツールに 若者に響く「短歌」の魅力
【映像】日向坂46・宮田愛萌が短歌に込めた思い
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 女性アイドルグループ・日向坂46の宮田愛萌(23)が、「衣装」をテーマに短歌を詠んだ。

「アイドルの/スイッチ入る/空色の/愛の魔法に/袖を通せば」

 宮田が短歌を披露したのは、アイドルが自ら言葉を紡いだ短歌を持ち寄る「アイドル歌会」。今回で4回目の開催で、チケットが即完売するという今注目のイベントだ。

宮田「日向坂の衣装は、“衣装さん”が1人1人手作りで作ってくださっていて、本当にたくさんの愛がこもっている。衣装によって自分の気分も変わり、アイドルだと自信を持って言えるようになるので、『愛の魔法』と表現した」

【映像】アイドルが考えた短歌(他の作品)

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 起源は1300年前とも言われる「短歌」と、「アイドル」という異色の組み合わせ。イベントの発案者である歌人・笹公人氏にその魅力を聞いた。

「まず、結構みなさんの水準が高い。『短歌の新人賞を取っちゃうんじゃないかな』という人も出てきている。アイドルの方は仕事柄、非常に即興に慣れているし、サービス精神が旺盛なので『今ファンの方がこれを知りたいだろうな』と思うことを自ら短歌にしてくれる」

 また作品の解説や鑑賞だけでなく、周囲の人とも協力して楽しめる短歌のもう1つの側面を押し出した企画もある。出題者が半分作った短歌を、他の人が考え完成させていく遊び、「付け句」だ。イベントでは、他の出演者や、会場や配信で見ているファンも参加し、自由な発想で1つの作品を作り上げる楽しさを分かち合った。

 恋愛を語る手段として平安貴族に愛された短歌が、時を超え、現代のアイドルとファンを繋ぐツールに。今、この短歌が「若者の間でより親しまれやすくなっている」と短歌総合誌「短歌研究」の国兼秀二編集長は話す。

SNSと短歌の相性の良さが第一にあると思う。特にTwitterで短歌という器を使い、今日起こったことや考えたこと、悔しかったこと、うれしかったことなどをSNSに載せる若者たちが増えてきていることは間違いない」

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 文字数制限のあるTwitterと、31文字で思いを語る短歌。その親和性は高く、短歌に触れる層が増えたことによる影響は、出版業界にも波及しているという。

 歌舞伎町で生きるホストによる歌集「ホスト万葉集」など、若者が手に取りたくなるような作品も多く出版され、戦前からの歴史がある「短歌研究」は去年、1932年の創刊以来初となる重版となった。また、いま注目されているのが短歌の映像化。マルセイユ国際映画祭で3冠の快挙を成し遂げた「春原さんのうた」は、一首の短歌が原作になっている。剛力彩芽(29)が主演した短編映画「世界で一番すばらしい俺」も、1冊の歌集をもとに作られた。

「短歌というのは“隙間だらけ”。詳しく細かく描写しているわけではなくて、1行で『自分が手紙を出した』『相手の目が自分を見てくれなかった』『自分も死にたくなった』みたいなことが書いてあるだけ。けれど、そのスカスカの何も書いていないところに、自分の思いで、自分で勝手に皆さんが気持ちを寄せていく。『どういう人が書いたんだろう』『どういう人が傷ついて悲しかったんだろう』という思いは、皆さんが自分の出来事のように想像するけど、(短歌は)映像化するときの余地が大きい」(短歌総合誌「短歌研究」・国兼秀二編集長)

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 難しいと思われがちな短歌を、アイドルが詠む時代――。歌人の笹公人さんは、「今まで短歌と縁がなかった人たちがさまざまな形で短歌に触れることにより、新しい世界が切り開かれるのではないか」と期待を寄せている。

「昔から、いつも『短歌ブームだ』と言われている。いつの時代も静かな波があるけど、Twitterによりそれが目に見える形となっているので、ブームに見えているのかなという感じもする。とにかく『いまこの一瞬の思いを形にしたい』『永遠のものにしたい』、そういうことが短歌はすぐにできる。将来読み返して『当時こんなことがあったな』とそのときの気持ちに戻れるところも素晴らしい。コミュニケーションのツールとしても優れている。特にこのコロナ禍で、色々なモヤモヤしたものを短歌として吐き出す……心にも良いんじゃないかと思っているので、ぜひやってほしい」

(『ABEMAヒルズ』より)

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