国会で男性の育児参加を促すための制度整理が進む中、ライターのヨッピーさんのツイートに多くの反響が寄せられている。
昨年10月に子どもが生まれたばかりのヨッピーさん。8日、「僕、『よーし、育児ゴリゴリやるぞ~!』ってな意気込みだったんですけど、育児教室の先生や助産師さんがみんな『ママが~』『ママは~』ってママ主体で話をするし、男性が参加出来ないものもたくさんあったりするので、僕自身は別に気にしないけどあれで心が折れる父親もいると思うから改善して欲しい」とTwitterに投稿。1.5万件のリツイート、10万件の“いいね”を記録した。
■「“保護者の方”と呼びかけてもいいのではないか」
9日の『ABEMA Prime』に出演したヨッピーさんは「奥さんと一緒に行くと、質問は全て“ママは?”。僕は“まあいいや”で済ませていたが、“俺、おらんでよくない?”“これでは行きたくない”と思う人も出てくるだろうと思って、つぶやいてみようと。反響はあるとは思っていたが、ここまでとは思っていなかった」と話す。
力が必要な場面や、手が大きいことが役立った経験から、子育てについて、「むしろ男性主体でもいいのではないかという気がする」と話すヨッピーさん。「僕は“役割分担”という言葉もあまり良くないし、片一方しかできないことがあるとリスクに繋がる。早い段階でミルクに変わったということもあり、うちでは“寝かしつけはお母さんで、入浴はお父さん”というようなことはやめ、双方が一通りのことをできるようにしておいて、手の空いている方がサッとやるようにしている」という。
そこで感じたのが、“女性主体”の現実だ。
「例えば厚労省の『健やか親子21アンケート』という質問票の場合、“お母様へ”となっているので、いつも奥さんが記入している。しかし“小児救急電話相談を知っているか?”といった質問については、父親だって答えるべきではないか。“お父さんは風呂に週何回入れているか、ミルクを何回あげているのか”といった質問も、父親に記入させれば“ゼロ回だ。うわ、やらないと”ということになると思う。むしろ母親だけに答えさせるから、“お母さんなんだし、やらないと”というプレッシャーになると思う。
一方で、父親が参加できないものがあるのは仕方がないとも思っている。例えば男性がいる場面で授乳の話はしづらいだろう。ただ、僕やパパさんもいるような時には、“ママは、ママは”と呼びかけるのではなく、“保護者の方”と呼びかけてもいいのではないか。まずはこういう、コストをかけずに済むようなところから意識を変えていってほしい」。
それでも、ツイートには批判的な意見も少なくなかった。
ヨッピーさんは「ツイートへの反応は、“その通りだ”も、“心が折れるなんて、なんだ?”みたいなものも含めて、女性からのものが多かった気がするが、それは今まで女性が言われてきたことだからではないかと思った。例えば社会進出が始まった頃、女性たちはおじさんたちに“女に仕事は務まらない”と言われていたのだと思う。とはいえ、“これまで父親が育児に関わってこなかったツケ”と言うが、それは“女性が専業主婦になって仕事をしてこなかったからだ”と言っているのと同じではないか」と訴えた。
■子育てに“リスペクト”を
タレントの井口綾子は「女の子は小学校高学年になると生理が始まってPMSがあったり、妊娠・出産でもつわりや体型の崩れがあったり、身体的に辛い部分があるので、どうしてもママが主体となってしまう部分もあるのかなとは思うが、そうでない男性に対しても呼びかけることはできると思う」とコメント。
家庭教育協会「子育ち親育ち」の田宮由美代表は「私自身、家事・育児は女性がするのが当然、みたいな空気の中で育ってきたが、女性の社会進出も進み、“イクメン”という言葉も定着してきている。それでも男性の育児参加率や育休取得率はまだまだ低い。だからこそ、こうして社会に一石を投じ、議論をすることが大切だ」と話す。
その上で田宮氏は「私の周りには、バリバリ仕事をして男性にもっと手伝ってほしいと、協力してほしいという人もたくさんいるが、お金が必要なので働かざるを得ないが、本当は専業主婦として家事、育児に専念したいという方もいる。事情は家庭によって様々なので、そこは話し合いだと思うし、それは子どもに接する時間が平等ということではない。それぞれの家庭に合ったライフスタイルを社会が受け入れ、“あそこは特別だ”という目で見ないようにすることが必要だ」と指摘した。
慶應義塾大学の若新雄純特任准教授は「僕は古いタイプなので、やっぱり“母性”というものがあると思っている立場だが、例えば僕の妹は、親たちから“昔はみんなやってたんだよ”と言われていた。しかし、昔はこうだった、というだけでは何の正統性もない。加えて、社会に出産や子育てに対するリスペクトがなさ過ぎるのではないだろうか。男女で担っていくことと同時に、育児をしている人にしっかり手当てをする世の中にしていけば、結果的に女性が担う場面が多かったとしても、“むしろ女性だからこそ引き受けられる仕事だ”という価値観が出てくることもあると思う。その点では、会社の中でも負い目を感じながら育休を取っている、ということも同じだ。女性が“育休を取ります”と言うと、“まあ、そうよね”となるのは、リスペクトというよりは、昔からみんなそうだったからではないか。そうではなく、“お前育休取るのか。すばらしいな”となれば、男性だって取得がしやすくなるはずだ」。
ジャーナリストの佐々木俊尚氏は「例えばファミリーマートの『お母さん食堂』は“役割を女性に押し付けている”としてものすごい批判を浴びたが、こうした問題が批判されないことについてはバランスが悪い気がする。とはいえ、どこかの誰かをあげつらってワーワー言う、男が悪い、女が悪い、と言い合っているだけでは問題は解決しない。イクメンという言葉がある一方で、育児をしたいけど、仕事が忙しくて早く帰れない、でも奥さんは育児休業中なので、自分が働かないと家計が成り立たないし、という男性だって山ほどいるはずだ。それは法制度も含めて構造的に変えることを考えないと、不毛な議論に終わってしまう。また、「“役割分担”という言葉には、一つの価値観を押しつけてしまっている感もある。別に妻だけがやっている家庭もあれば、夫だけがやっている家庭もあっていい。そうでなければ、それこそ多様性に反する」と話していた。(『ABEMA Prime』より)
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