2月23日の名古屋国際会議場イベントホールにおけるタイトルマッチ本番まで2週間となった2月9日、後楽園ホールで行われた王者・中嶋勝彦と挑戦者・藤田和之のGHCヘビー級選手権の1度だけの前哨戦はヒリヒリしたものになった。

 さる1月16日、仙台サンプラザホールでマサ北宮相手に4度目の防衛を果たした中嶋の前に立ったのが藤田。中嶋ではなくベルトを2分近くも凝視し、やっと中嶋を見たと思ったら無言でリングを降りた。中嶋は「俺が持ってるこのベルトが欲しいんだろ? だったら挑戦を受けてやるよ」と無言の挑戦アピールに答えたが、藤田は「挑戦してほしいんでしょ? 挑戦してほしいんだったら挑戦してあげるよ」と上から目線。

 この日の前哨戦は中嶋、拳王、征矢学と藤田、杉浦貴、ケンドー・カシンの金剛vs杉浦軍の6人タッグの形で行われたが、藤田は金剛の決めポーズに割って入ったり、先発を買って出て「前哨戦やるよ、おいで!」と中嶋を手招きして高飛車な姿勢を見せた。

 ゴングが鳴ると、藤田は中嶋に打撃を繰り出す距離を与えずに密着。グランドで藤田がコントロールしようとすれば、中嶋はスタンドで藤田の左内腿にインローを打ち込んで動きを止めるという地味ながらも緊迫感ある攻防が繰り広げられた。この最初の攻防にタイトル戦に懸ける2人の気持ちが凝縮されていたと言っていいかもしれない。

 その後はカシンが拳王相手になぜか弱々しいチョップを放つ無気力ファイト(?)で金剛をイラ出せ、例によって乱戦となったが、この試合の主役はやはり藤田だった。

 金剛は一丸となって“野獣攻略”にかかり、中嶋が低空ドロップキックで藤田の突進をとめると、すかさず征矢がラリアットを叩き込み、さらに中嶋と拳王が前後からのミドルキック挟み撃ち連打! 仕上げとばかりに中嶋がヴァーティカル・スパイクの体勢へ。

 だが藤田は踏ん張ってこらえる。中嶋はトラースキック3連発を放つも、野獣・藤田は倒れない。そしてラリアットでなぎ倒し、中嶋の体がキャンバスにめり込んでしまうのではないかというパワーボム…いや、野獣ボムで叩きつけたのである。

 これで勝負あったかに見えたが、自らフォールを解いた藤田は、うつ伏せ状態の中嶋に非情な顔面蹴り! 片膝でフォール圧勝ぶりを見せつけると、GHCヘビー級ベルトを高々と掲げ、そのまま肩にかけて意気揚々と引き上げた。 

 そしてバックステージでは「俺がノアだよ。俺がノアだよ。俺のノアだよ。なあ? 俺がノアなんだよ。わかった? それだけだよ。来るべきところにきたんだよ、ベルトが。ノアは終わりだよ」と、一方的にまくしたてて控室に消えてしまった。

 昨年10月10日、大阪で丸藤正道を撃破してGHCヘビー級王者になった中嶋は「時代が動くぞ。中嶋勝彦…俺がノアだ!」と宣言し、日本武道館では元日決戦では潮崎豪の挑戦を退けて「アイアム・ノア!」を封じ込めたが、ここにきて藤田に「俺がノアだ」を奪われた格好だ。

 また、この日のメインでは、昨年12月に右上腕二頭筋腱脱臼の手術を乗り越えて9ヵ月ぶりに復帰したものの、元日決戦で中嶋に敗れ、1・4後楽園では清宮海斗にも敗れて「自分自身のこれからというものをどう考えて、どう立ち上がっていくか。俺が欠場している間、ノアの最前線で戦ってきた丸藤正道、杉浦貴、田中将斗、拳王を倒していかないとGHCも見えてこない」と4番勝負を直訴した潮崎の4番勝負第2戦が行われた。

 1・27後楽園における杉浦との第1戦ではゴーフラッシャーで叩きつけ、豪腕ラリアットを狙ったものの、フロント・ネックロックで締め上げられて、レフェリーストップ負けを喫している潮崎は、この日は田中将斗と対戦。

 何とか光明を見出したい潮崎は、本田多聞譲りの回転地獄五輪、スリーパー・スープレックス、ゴーフラッシャー、豪腕ラリアットで攻め立てたが、田中の鋭いエルボーにことごとくストップされて攻めきれず、スライディングDに沈んでまたも敗北。今年になってシングル4連敗になってしまった。

 中嶋勝彦と潮崎豪…かつてはAXIZなるタッグチームでノアの未来を照らすも、袂を分かって別々の道に進んだ2人は、揃って正念場を迎えている。

文/小佐野景浩