「神宮外苑をスポーツの拠点となる緑豊かな街にする」。9日に開かれた東京都の都市計画審議会において賛成多数で可決された、明治神宮外苑の再開発計画。2036年の完成までに、神宮球場や秩父宮ラグビー場の移設に加え、商業施設や高さ190mの高層ビルも建設されることになっているが、ネット上には疑問の声があがっている。
その大きな理由が、再開発に伴い伐採される樹木の存在だ。都はエリア内にある約1400本の樹木のうち971本を伐採する計画だが、1926年に完成して以降、日本初の「風致地区」に指定(景観を保全するため、都市計画法による規制を受ける)された風景が大きく変わってしまうことに懸念の声が相次いでいるのだ。
現地調査も行っている中央大学研究開発機構の石川幹子機構教授は「伐採される樹木の本数の問題ではない。日本の近代を象徴するような、非常に歴史的な空間であるということをどなたも、少なくとも東京都は不問に付している」と批判、芝生広場の両脇、現在は軟式球場などがあるエリアが会員制テニスクラブになり、面積が3分の1になってしまうことについて「非常にみすぼらしい、情けない空間になる」と指摘する。
「こんなに深い森と、皆が遊べる楽しい場所。これは世界にないし、誇りに思わなくてはいけない。なぜその価値が分からないのか。やはり社会全体が不勉強だと言わざるを得ない。例えば青山通りから銀杏並木を抜けた先にある芝生広場と、さらにその先にある絵画館と背後の深い森。これはアメリカの国会議事堂の前に代表される、都市美運動(City Beautiful Movement)で、こういう場所に商業ビルを建てると言ったら、アメリカ国民だって怒ると思う。樹木も、この文化的な景観の中の一つの要素だということだ。反対という表層的なものではなく、日本の文化の非常に大事なものを破壊していいのかという、より深い問題提起をしたい。ぜひ皆さん、事の重大さを理解していただきたい。
また、風致地区というのは建築物の高さ制限を15mにして良い景観を守りましょう、木を切ったりするのはなるべくやめましょうという紳士協定で、全国に800以上あるが、神宮外苑は大正15年、最初に指定された記念すべき場所だ。100年以上も前からある木もたくさんあり、それらが伐採か、あるいは移植されることになる。すでに新国立競技場が建設される際に約90%に上る1500本が切られているので、ほとんど全滅に近い状況になってしまう」。
実際、ユネスコの諮問機関である「国際記念物遺跡会議」(イコモス)は先週、「コロナ時代に逆境する高密な都市再開発は再考すべき」「秩父宮ラグビー場は現地建て替えにするなどして神宮外苑の文化的景観を守っていくべき」と指摘している。
石川氏は「都は公園まちづくり制度を使っているが、これは公園のない所に早く公園を作り、安全な街にするための制度だ。しかし今回はすでに高密都市の大事なオープンスペースである公園を壊して10年をかけ、人をたくさん呼び込もうということだから、これは街づくり制度というものの趣旨に反している。風致地区のルール違反ということも含め、法令を法律を守らない都市づくりというものが民主的な手続きという形を取りながら進んでいくという。これは賛成・反対以前に、非常に大きな社会問題だ。
私はやみくもに何が何でもと言っているわけではなくて、建て替えるにしても、木を残して、皆が喜んでくれる解決策がある。もっと知恵を絞って、いい再開発を考えていこうということで問題提起している。新国立の植樹を見ていただければ分かると思うが、お年寄りも赤ちゃんも、皆仲良く一緒に、街を繋いでいくという、そういう懐の深い考え方が必要なのではないか。外苑が持つ潜在的な力をしっかり読み込んで次の世代に繋がる再開発と皆で考えていきたい」と訴えた。
一方、近隣に住んでいるというカンニング竹山は、批判の声に対し「持ち家の人とはまた意見が違うだろうし、偉そうなことは言えないが、神宮外苑を毎日のように走ったりしている立場から言わせてもらうと、たまにしか見てねえくせにガタガタ抜かしてんじゃねえ!と。そもそも空気も汚れているし、みんなが集まるとゴミだ何だでメチャクチャにしていくし、バンバン木を切って新国立競技場が建った結果、めちゃくちゃキレイになって、治安も良くなっている」と反論。石川氏に対しても、「申し訳ないが、先生、俺は分からん」と話した。これに石川氏は苦笑しながら、「分かってください。勉強をしてください」と切り替えしていた。(『ABEMA Prime』より)
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