カナダでコロナワクチン接種義務化に抗議するトラック運転手らが「フリーダム・コンボイ」という抗議デモを起こし、この影響でアメリカとの国境にかかる橋を大型トラックで封鎖するなどの騒動になった。
きっかけとなったのが、カナダの国境をまたいで移動するトラック運転手への新型コロナワクチンの接種義務化。これに抗議するドライバーたちによって橋は封鎖され物流などに大きな影響が出た。旗やプラカードを掲げ、行われる抗議デモ。動きは日に日に拡大し、一部の州では非常事態宣言も。こうした事態を受けカナダの地元警察は13日、装甲車を含む50台以上の車両を出動させた。橋を封鎖していたデモ隊の排除へと乗り出し、これまでに数名を逮捕したと発表している。
14日、カナダのトルドー首相は緊急事態法を発動し、デモの収束を図る方針を表明。1988年に制定されたこの法律が実際に適用されるのは初めてで、公共の場で集まったり特定の場所を使うことが禁止できるようになるという。
フリーダム・コンボイの動きはカナダのみならず、世界各国に広がりを見せている。
カナダから東へ6300キロ離れたフランスでは、カナダで発生した抗議デモに触発され、フランス全土から車でパリへ向かうデモが発生。凱旋門の前をデモ隊の車が占拠し、交通を妨害した。また、シャンゼリゼ通りでは武装した警察と激しく衝突。まかれた催涙ガスが飲食店にも流れ込むなど、辺り一帯は混乱状態になった。パリ警視庁は、このデモで少なくとも44人の身柄を拘束したと発表している。
さらに、太平洋の南西に位置するニュージーランドでもワクチンの接種義務化や規制に抗議するデモが行われ、出動した警察隊とデモの参加者が激しくもみあう場面も……。
現地メディアによると、デモの参加者約120人が逮捕され、対応にあたった警察官2人がけがをしたという。ロイター通信によると、14日、ニュージーランドのアーダーン首相は、公共放送のインタビューに応じ、このデモについて、「国内でこれまで見たことが無い」とした上で「トランプ氏をモチーフにした旗やカナダの旗が見られる」「海外から輸入された抗議行動のようだ」と述べている。
このデモ活動フリーダム・コンボイについて、国際政治学者の六辻彰二氏は次のように見解を述べた。
「(このデモ活動は)基本的にはトラック運転手が中心となって、ワクチン接種義務化に反対・抗議するということではあるが、ただ9割ほどの運転手は、ワクチン接種が済んでいる状態だ。そのため、抗議している人たちはごく少数。なぜこんなに拡大しているのかというと、カナダでワクチン接種の義務化というのが色んな職種に広がっていて、それでもってワクチン接種をしない人が増えて、その中で失職する人も増えて、失業者の不満というのを吸収する形で拡大していってるのがフリーダム・コンボイの大きな特徴だ」
また、デモに参加している人はフリーダム・コンボイの発端となるトラック運転手の家族や周りの人たちの他にも、同じような考えの方が集まっているという。一方で、その背景にはデモを煽るテロ組織もいるのではないかと語る。
「カナダの報道では、“スリーパーセンターズ”という米極右組織が関わっていると言われている。カナダ政府からテロ組織に指定された団体だ。本来はアメリカを拠点にしていて、ブラックライブズマター参加者を銃撃するなどのテロ活動に関わっている。トラック運転手たちと足並みを揃える形でこのデモを一部煽る形で関わっているとみられている」
スリーパーセンターズの狙いは何なのか。六辻氏は「抗議活動に合流する形で参加することで、日陰の存在である自分たちがそうでもないんだとアピールできる機会だと利用している」と話す。
世界に飛び火しているフリーダム・コンボイ。ワクチン接種義務化や経済状況の停滞などで不満を抱えている人が多い中、「政府への批判が高まれば高まるほど(極右団体が)抗議デモを利用して拡散していく」と六辻氏は懸念する。
「フリーダムコンボイは少数の人たちで、職場とかでも疎外感を感じた人たちがネットなどでつながって、“ここに居場所がある”と思ったからこそこうした形で集まった。米極右と呼ばれる人たちも社会的に自分たちが疎外されていると意識を強く持っている人たちが多いからこそ、つながって、共鳴し合ってた。自由と引き換えにこうした現象を生み出していると強く思う」
(『ABEMAヒルズ』より)
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