「“共依存恋愛”をご存知でしょうか。これはお互いが過剰に依存し合っている恋愛関係のことで、相手から必要とされてないと思うと自分の存在価値を否定……あるいは見出すことが出来ないのです」
お互いが恋人に対し、過剰に依存してしまう“共依存恋愛”について描かれた漫画が、注目を集めている。漫画のタイトルは『レンアイ共依存 〜私が共依存恋愛から抜け出した話〜』。Twitterに投稿され話題となったこの漫画は、作者の女性が実際に経験したエピソードが元となっている。
【映像】「依存は決して悪いことではない」漫画に込めた作者の思い
「自己肯定感が低くなるとパートナーに依存しやすくなる」
「レンタローと四六時中一緒にいたい…… 一緒にいないと不安でたまらないよ」
主人公・アイコは、フリーターとして生活する21歳。周囲への劣等感などから自分に自信が持てずにいた。そんなアイコの心の拠り所となっていたのが恋人のレンタロー。毎日行動を共にするなど、アイコの生活は彼一色になった。
裏切られても、恋人から離れることが出来ない。時には彼を優先するあまり、人間関係に亀裂が生まれることも。レンタローに対し、過剰なまでに依存してしまうアイコ。そして同じく、アイコに依存し始めるレンタロー。赤裸々につづられたエピソードの数々に、多くの共感の声が寄せられた。
ニュース番組『ABEMAヒルズ』はこの漫画の作者である笹川めめみさんを取材。現在は、恋人への依存から脱却しているという。
「恋愛関係というよりは、お互いが依存しちゃっている、お互いがいないと不安でしょうがないという状態で、一人でいるとすごく不安で自分の存在意義も分からなくなってしまう。本当に相手に依存してしまっている状態でした」
そんな笹川さんが特に力を入れて描いたのが、実際に経験した物語の前半シーンだという。そのシーンでは、レンタローがアルバイト先の女性と浮気をし、アイコは目の前が真っ暗になるも、再び自らの元に戻ってきたレンタローを受け入れてしまう。アイコは疑心暗鬼に陥り、信じることが出来なくなってもなお、離れることが出来ない。そんな“依存の歯がゆさ”が描かれている。
「彼氏にこんな浮気されて、傷つけられたら普通は別れるんですね。でも、それが依存してしまうと『いや、それでも私はこの人しかいないんだ』という風になってしまって離れられないんですね。結局アイコの元に戻ってきて、『やっぱり俺はお前じゃないとダメだ』みたいな感じで求められたが故に拒めない。むしろ求められていることに安心してしまってるという状態です」
現在も連載が続いている『レンアイ共依存 〜私が共依存恋愛から抜け出した話〜』。物語の後半では、アイコが新たな生きがいを見つけ、徐々に依存から抜け出そうとしていく様子が描かれている。笹川さんは「依存は決して悪いことではない」としたうえで、自身と同じように悩んでいる人に向けてこう訴えた。
「あの時は彼が本当に世界で必要で『彼がいないと私は成り立たない』と本気で思ってたんですけども、抜け出したことで自分を愛せるようになって、納得して人生を送れるようになったので、『多分依存しているだろうな』『でも苦しいな』と思っているならば、そこから抜け出すことをお勧めしたいなとは思っています」
共依存について、臨床心理士で明星大学心理学部准教授の藤井靖氏はこう話す。
「お互いに依存し合っている最中というのは、どこかで『これはまずいな』『苦しいな』と思っていても、自分ではなかなか気づくことができない。一般に、自己肯定感が低い人が陥りやすいというのは大きなポイント。相手がいて、例えばその人にダメなところがあって『自分が支えてあげないと』と思うと、相手を助けることで自分の存在価値を感じるというサイクルになる。人を助ける行為は、多幸感につながる精神伝達物質であるエンドルフィンがモルヒネの6.5倍出るというデータもある。心理的には自分にとってもメリットが大きいので、止められない」
とはいえ、人が人のために生きるということは、大事なことでもある。この点について藤井氏は「言わば程度問題というもの。ただ、行き過ぎているかは他人が決めることではないので、我々がカウンセリングでアドバイスしたとしても、なかなか本人には響かない状態だったりする。なので本人が疑問を感じた時や苦しい時にピンポイントで伝えてあげるのが大事。適応的な解決の仕方というのは、自分のやりたいこととか仕事とか、別の依存先を見つけていくというのが一つの解決策となる。結局、依存状態というのは一つに集中していることが問題であって、それを分散させる作業ができればいい。倫理的にどうかということはあるが、共依存から抜け出した人の事例をみると、私の経験では半分くらいが浮気なども含め新しい相手が出来たり人間関係が広がることがきっかけになっていた」と述べた。
また、藤井氏は共依存になる条件は3つあると言い「まず前述のように自己肯定感が低い。そして被暗示性が高い。相手がモラハラ的なことや『こうすべきだ』というようなことを言った時に『あ、そうなのかな』と思いやすい人がなりやすい。最後に当たり前ではあるが、相手がダメな人であるということが大前提としてある。仮に一度抜け出したとしても、前に共依存状態にあったときの相手と似た相手を無意識に探してしまい、そしてその人が一般的に言われるダメ男だとしたら、そこでまた共依存が起きてしまい、繰り返してしまう」と説明した。
では、共依存にならないためにはどうしたらいいのか。藤井氏は「自分と他人は本来違う人間だと、きちんと線引きができている関係性が大事」とし、「共依存状態では相手のことを100%理解できるような気持ちになったり、自分ことも100%理解してもらえるような気持ちになることもあるが、それはあり得ない。つまり共依存の関係性は勘違いで成り立っている恋愛であり、長続きさせることは難しい」と考えを述べた。(『ABEMAヒルズ』より)
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