「ピンクリボン運動」のポスターに批判殺到…患者や家族を傷付けないことと、警鐘を鳴らすことの両立は可能なのか
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 胸を想起させる回転式の抽選機に、“「まさか、私が」と毎日9万人が言う”とのコピー。乳がんの早期検診を推進する活動を行う「ピンクリボンフェスティバル」のデザイン大賞で、グランプリを受賞したポスターだ。

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 このデザインに多くの批判が集まり、それは過去の作品にも。その結果、「日本対がん協会」は21日、「選考の責任はわたくしども協会にあり、お気持ちを傷つけてしまった患者さんやご家族のみなさまにお詫びを申し上げます。また、偏った価値観に基づいて作品が選ばれているとのご批判もいただきました。ご意見を真摯に受け止め、よりよい啓発活動のあり方を探ってまいります」とする謝罪文を掲載した。

■「破り捨てたくなるし、うちの病院で貼ることは、まずない」

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 今回の問題について、「ピンクリボン運動」に取り組む女性たちを15年以上にわたり取材する中で、自身も乳がんとの診断を受け、46歳で左右の胸を同時に失った北海道テレビ放送の阿久津友紀氏は、「まず、“当たり・外れ”のようにされてしまったことで傷付いたという人が多いのではないか。また、抽選機からポロっと出た球が、手術で乳頭を失ったことをイメージしたとおっしゃる方もいた。確かにそうだなと思うし、非常に残念だ」と話す。

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 「日本でピンクリボン運動が始まった頃は、“マンモグラフィという言葉を知ってほしい”からのスタートだった。それから年月が経ち、ポスターのコンクールなどが行われる中で表現が出尽してしまい、新しいものを生み出すのが難しくなってきているのかな、とう気もする。20年間くらいで検診率も増えているし、それなりの効果はあったと思うし、命を救われた方もいらっしゃると思う。いま以上に増やすためには、乳がん自体を知っていただき、検診のメリット・デメリットをきちんと理解をしていただく。そういう形にトランスフォームしないといけないんじゃないか」。

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 ピンクリボン運動の課題を指摘しているベルーガクリニック院長の富永祐司医師(乳癌学会認定医)は「ひどいのは毎回のことなので、“またか”という感じだ。ポスターを見ると破り捨てたくなるし、うちの病院で貼ることは、まずない」と憤る。

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 「私はピンクリボン運動に関しては、単に検診の啓発だけではないと考えている。もともとアメリカで始まった時には、“悲しい思いを皆さんにはさせたくない”という思いがあった。乳がんのことを知っていただく、意識を持っていただく。あるいは乳がんになった方のご家族、お母さんを亡くされたお子さんに受診していただくとか、まさに乳がんで苦しんでいる方々の心のサポートしてあげるとか、そういったものも含めての運動だと思っている。今はなぜか検診ばかり前に進んじゃっているけども。あくまでもその中の一つに過ぎないと思う」。

■チェック機能は、誰が担うべきか?

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 大手広告代理店に勤務した経験もあるライターの中川淳一郎氏は「昔からある“ネット発”の問題で、例えばある石鹸会社が“洗い流そう”というCMを作り、海外の広告賞を受賞した。しかし内容が、息子の誕生日なのに父親が家に帰らず、部下の愚痴に付き合っていたという内容だっために炎上してしまった。何らかの問題提起をしたいという人は常にいるので、時間が経ってから炎上することもある。今回もそうだ。しかし、表現を作る時に、広告会社がチェック機能を果たせるのかといえば、もはや無理だ。“女性蔑視だ”と言われた広告があったとして、後に制作スタッフが全て女性だったことがわかっても炎上し続けるわけだ」とコメント。

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 同じく広告代理店の元社員で、「Flags Niigata」代表の後藤寛勝氏は「広告やPRだとして考えてみると、まだ検診を受けていない人たちにきっかけや気づきを与えるという目的があるわけで、広告制作者としてはその点を大切にして、クリエイティブを真剣に考える。一方で、賞の審査の過程では、当事者の方に声を聞きながら、5つの段階を経たという。それでも傷付く方が出てしまったという意味では、協会としてチェック機能を作っておくべきだったと思う」と指摘した。(『ABEMA Prime』より)

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