最初から最後まで“芦澤劇場”だったのかもしれない。2月27日のK-1・東京体育館大会。芦澤竜誠は西元也史と対戦し、2ラウンドKO勝利を収めた。
それも普通のKOではなかった。1ラウンドは相手の圧力に押され、本来のアグレッシブな闘いができない。2ラウンドにはパンチでダウンを奪われてしまった。
だが、そこから一気に大爆発。“ケンカ上等”なパンチの打ち合いでダウンを奪い返し、さらに追撃してヒザ、そして最後に右フック。マンガのような大逆転だった。インパクトでは大会最高。当然、反響も大きかった。
「それって、俺が全部巻き込んでやったんですよ」
芦澤はそう振り返る。
「喧嘩旅がきっかけで格闘技を見たことないファンがABEMAでK-1見るようになったり芦澤竜誠に興味持ってくれるようになった。普通の格闘家じゃ興味持たれないけど、俺は絶対ぶちかましてやると思ってたし」
演出家のマッコイ斎藤氏と共演するABEMAの『喧嘩旅』はYouTubeでも多くの視聴数を記録。新規K-1ファンの入り口にもなっている。その注目度の上で入場曲を歌いながらリングに向かい、ダウンの応酬を繰り広げてKO勝利。
その盛り上がりを考えると、ダウンを取られたことさえ“芦澤劇場”の構成要素だったのではないかと思える。勝利者賞のプレゼンターはマッコイ斎藤氏。最後まで出来すぎなくらいだった。
逆転できた理由も芦澤らしかった。
「殴り合いになったら絶対負けないって思ってたんで。ケンカじゃないですか。ケンカになったら負けるわけない。ダウン取られて“この野郎、ガキ!”ってなったんで。それがよかった」
ダウンを取った後で熱くなって強引に攻め、そのことで西元には隙ができた。「悪い癖が出ました」と西元。そこで芦澤は冷静に対処するのではなく、自分も喧嘩腰になって闘った。いかにも芦澤らしい。しかもそれで倒してしまう。
“問題児”と言われる芦澤だが、こと強さの追求という面では真剣だ。
「一歩一歩、確実に」
「こういう時こそ調子に乗ってると足元すくわれる」
ただK-1らしい試合をすることは忘れないし、「一歩一歩」進みながらも常に頂点を見ているとも。
リング上では6月の“メガイベント”参戦もアピール。その存在感は大きくなる一方だ。
文/橋本宗洋