「“中皮腫”が治る時代に」闘病生活を送るアスベスト被害者の訴え
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「僕たちは希望をもって、時効が延長に5年ないし10年延長できるように、現在もいろんな国会議員に陳情している」

 NPO法人「中皮腫サポートキャラバン隊」の理事長・右田孝雄さんがこう「延長」を訴えているのは、アスベストによる健康被害を受けた人の遺族を救済する制度についてだ。一部制度の申請受付の期限が3月27日に迫っており、救済制度を議論する小委員会も5年前を最後に開かれていないという。

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「去年になって、『小委員会いつするんですか?』と環境省に聞いたら、『コロナが影響して石綿健康被害の救済制度の認定の作業に追われて、そっちの方(救済制度の議論)ができない』ということでおざなりになっているということみたい。僕らとしたらそういう問題じゃないじゃないですか。やはりそういうので時効を迎えてしまうと、救われない方がたくさん出てきますので、救いたいという気持ちもありますから、やってほしいということで。コロナの影響は私からしたら言い訳としか聞こえない」

 右田さんも所属する、「中皮腫・アスベスト疾患・患者と家族の会」では3月末に迫る期限の延長を求めている。

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 高い断熱性や耐久性から、かつて“奇跡の鉱物”と呼ばれたアスベスト。高度成長期、日本では建築資材などさまざまな場所で使われていた。しかし、空気中にも浮遊するこのアスベストを吸い込むと肺がんや中皮腫などの健康被害を引き起こしてしまう。

 さらに、やっかいなのがその発症の遅さだ。吸ってから、平均40年ほどかけて症状が出るという。すでにアスベストの製造・使用などは全面的に禁止されているものの毎年数多くの方が亡くなっている。

 右田さんもアスベストが原因で、健康被害を受けた一人。2016年、中皮細胞が“がん化”して生じる中皮腫と診断された。余命が平均2年ともいわれるなか、右田さんは発症してから現在6年目を迎えている。

「最初は肺がんか中皮腫かと言われ、『中皮腫なら大したことない』と思ったら、そのときに余命を聞いてしまったんですよね。そしたら『平均2年』と言われたので、それ以降の主治医の話は耳に入ってきませんでしたね。それくらいショックというか。今のがんは治るという部分が多いじゃないですか。中皮腫は10年生存率が1割無いんですよね。そういった部分で言うと、頭を岩で叩かれたというかガーンと落ち込みましたね」

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 最近は子育て世代の40代や50代の患者も目立つようになり、30代で発症する人もいる。さらに、廃墟などアスベストの除去がされていない建物に若者が行ってしまうケースもあり、アスベストを吸うリスクは世代問わず存在しているのだ。

 一方で、治療法も少なく、発症してしまうと働くことも容易ではない。中皮腫サポートキャラバン隊が行った調査によると、「経済的な困窮を感じている」と答えた人は4割もいたという。

 闘病を続けながらそれでも右田さんが活動を続ける理由――。それは、すべての患者が救済される“格差なき補償の実現”、そして、未来に発症してしまうかもしれない人たちのための礎を築くこと。

「正直言っていま私たちが言っているのは、患者が治る病気にしたいということで、治療法の研究を進めて欲しいと言っている。いま治療の研究が進んだところで、これが承認されるのは5年後10年後で、じゃ僕らがその時に生きてるか?というと『生きていたらラッキーです』というくらい予後が悪いので、僕がいまなぜこれ(団体で活動)をするかというと、自分たちの子とか孫とか、これからの人が中皮腫に万が一になったときに『治る病気でよかったね』という時代が来て欲しいのが私たちの願いですね。患者が中心となって、補償問題とか治療法促進していくうえで、国と医師の方にどんどん働きかけてるのが現状。そういった部分で協力してくれるひとが1人でも多く、アスベストとか中皮腫のことを1人でも理解して頂けたら嬉しいと思ってます」

(『ABEMAヒルズ』より)

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