痴漢などのわいせつ事案、厳罰化の前に適切な類型化と治療の体制、そして「被害者は悪くない」というメッセージを
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 毎日のように報じられる、女性に対する痴漢などのわいせつ事案。その防止のためには、どのような取り組みが必要なのだろうか。性的なコンテンツの規制か、はたまた厳罰化か。また、「再犯」を防ぐための処分歴データベース構築の議論が保育・教育業界において進められている。

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■性的なコンテンツ=悪なのか

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 3日の『ABEMA Prime』に出演したEXIT兼近大樹は「それこそアダルトビデオや過激なアニメ・マンガのシーンを真似したのではないか、といった議論が事件が起きる度に出てくるが、それを言い出すと、それこそ食べ物まで含めて何でも紐付けられてしまうことにならないかな、と思うこともある」と話す。

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 聖マリアンナ医科大学の安藤久美子准教授(神経精神科学)は「どちらかといえば犯罪を促進する方向になる可能性が高いとは思うが、嗜好として持つこと自体は犯罪ではないし、見る側のモラルや、現実と空想との区別が付けられる力によって変わってくるものなので、理性を持ちながら、自分の生活にどう組み込んでいくのか、というところで差が出てきてしまうと思う」と話す。

 「私がたくさんの犯罪者と会ってきた中で感じたのは、“模倣”が一つのタームだということだ。例えば大量殺人事件が続き、その情報を報道で目にすることで、何となく親近感を覚えたり、“自分も同じくらい辛いんだ”と感じたりして、気持ちを社会に向けて発信しようとして模倣してしまうということがある。

 また、当初は現実との区別を付けて楽しんでいたとしても、例えばその対象自体が違法なものであったり、違法なストーリーであったりすると、非常に人の気持ちを引く反面、依存的になってくる可能性がある。そうなってくると理性だけではコントロールが効かなくなり、“いつでも止められる”とか“これが最後にする”と思いながらも繰り返してしまうことになる。そうしたものが関係してくると思う。

 その意味で、私見にはなってしまうが、ある程度の制限というものも必要だと思う。少なくとも小児や強姦といったストーリー性のものを見ることによって自分との距離が近くなってしまい、“実現できるんじゃないか”と気持ちを緩めてしまう可能性がある。やはりそうしたものは制限が必要ではないか」。

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 慶應義塾大学の若新雄純特任准教授は「仮に変態=悪人だとしたら、僕は100%逮捕されていると思う。好奇心が半端じゃなかったので、小5からコレクションを始めて、ここでは言えないくらい、いろいろなものを見てきたし、妄想も膨らんでいった。だけど、これは自分の中の趣味で収めておくものであって、実行に移してしまえば生身の人間を傷つけてしまう、というのがハードルになってきた。性癖があろうがなかろうが、コンテンツを見ていようが見ていまいが、相手が傷つくということを想像することができず歯止めがかからない時にこそ、犯罪が起きるんじゃないか」とコメント。兼近は「ネット上もそうだが、自分よりも弱い立場の人に対して強く出てしまうということがあると思う」と指摘した。

 安藤氏は「性犯罪全般について言えることだが、やはり性的な問題だけではなく、他者への攻撃性、支配欲というものが根底にあるといわれている。若新さんがおっしゃったように、性的な好みがあったとしても、相手を攻撃する、相手を支配するという心性がなければ被害は加えないわけだ。それから、幼少期から自尊心が確立できていなかった、あるいは自らが性犯罪の被害者であったというケースが比較的多いと感じる」と話した。

■厳罰化よりも類型化と適切な治療を

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 また、小児性愛や痴漢などの依存症当事者の取材をした経験もあるというリディラバ代表の安部敏樹氏は「捕まった時点で“初めてやりました”と言う人がほとんどおらず、その前にもたくさんやっていることが多い。私はそれこそが問題だと思っている。例えば私が会った痴漢の加害者には、30年にわたって犯行を続けていたという人もいた。その人を抑止できていたとしたら、相当な数の被害者が救われていたということになる。加害があった時点ですぐに逮捕することの強化。そして厳しく罰するとか、長く刑務所に入れるということよりも、依存的な部分への治療と追跡に繋げなければならないと思う」と話す。

 安藤氏は「まさにその通りで、日本は治療の面が遅れていると思う。刑務所や保護観察の中でも治療プログラムは行われているが、まだまだ十分ではない。一口に性犯罪と言っても様々だし、加害者の背景も違う。きちんと類型化し、それぞれに合った治療方法が模索されるべきだ」と応じた。

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 さらにフリーアナウンサーの柴田阿弥は「社会として許さない、という視線が犯罪を減らすのではないか。私は中高が女子校だったのだが、露出する人に遭遇したり、知らないうちに持ち物に体液をかけられたりするといった被害があった。しかし先生は生徒に事情を聞いたり注意を促したりするだけで、これはれっきとした性犯罪なんだから警察に訴えようという動きがなかった。だからこそ“何か気持ち悪い人がいるね”とか、“何かあったら逃げるんだよ”という話になりがちだし、“この程度で訴えてもいいのかな?"という感覚になってしまうんだと思う。皆がしっかり訴えて認知件数が増えれば警察も動くし、逮捕されればトータルの件数も減っていくんじゃないか」と訴える。

 すると安部氏も「痴漢に遭った高校生が相談すると、加害者が悪いにも関わらず、なぜか“スカートを短くしているからだ”と言われてしまったりする。回避するための術を教えるのも大事だけど、大人は“やったやつが悪い”と、“必要があれば捕まえにいきましょう”と言わなければならない」と話していた。(『ABEMA Prime』より)

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