「一辺倒な答えは欲しくない」「賛と否、両方あるのが面白い」…アーティスト集団「Chim↑Pom」が訴える“社会とアートの関係性”
【映像】「Chim↑Pom」の展示会の様子
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 壁面を覆い尽くす無数の折り鶴に、コンクリートに挟まれたがれき――。これらは全て、“アート”として展示されている。

 この作品を作っているのは、日本を代表するアーティスト集団「Chim↑Pom(チムポム)」。2005年に結成された6人組で、「現代社会への介入」をテーマにした作品を数多く世に生みだしている。

【映像】岡本太郎さんが描いた壁画に書き足した画

 先月から六本木の森美術館で開催されている展示会は、そんな彼らの17年間を振り返る回顧展。今回、ニュース番組『ABEMAヒルズ』では、元欅坂46でアーティストの佐藤詩織が同イベントを取材した。

 会場に入り最初に待ち受けているのは、建設現場を思わせるようなパイプが張り巡らされた空間。中でも圧倒的な存在感を放っている作品が「ビルバーガー」。ビルの建材を使い、大量生産・大量廃棄という現実をファストフードに見立てて表現している。

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 社会への鋭い眼差しが評価されるChim↑Pomだが、一方でアート界の“お騒がせ集団”としても名を馳せている。2009年に発表した、広島の原爆ドームの上空に「ピカッ」の文字を浮かび上がらせた作品は、被爆者や美術関係者を中心に大きな騒動へと発展。「不謹慎な落書き」と批判する声もあれば、「『ヒロシマ』と『平和』を安易に結びつける現代社会へ一石を投じた」と評価する声もあった。

 さらに2011年、東日本大震災の発生直後には、渋谷駅にあった世界的芸術家・岡本太郎さんが描いた壁画に福島第一原発の事故をモチーフにした画を書き足した。軽犯罪法違反の疑いで警察から事情聴取を受け、その後不起訴処分になっている。当時、メディアなどから「芸術でなくただの落書き」「岡本太郎への冒涜だ」といった批判が相次いだ。

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 なぜ現代社会の問題をテーマに、議論を引き起こす作品を作り続けるのだろうか。Chim↑Pomのリーダー・卯城竜太さんには、「公の場で作品を展示することで社会のリアルな声を感じたい」という狙いがあるそうだ。

Q. 賛否両論ある作品を美術館で展示する理由を教えて下さい。

「今まで賛否両論があったのも、例えばパブリックスペースにアプローチしてきたからなので、開かれた場所や公共に対する気持ちがある。現実的には賛と否が両方あるのが面白いことなので、みんなが『いいよね』というものなんて面白くない。だから、賛否両論の両方を見せられるようにしようと年表(これまでの活動歴)を作ったりとか、その否の意見も見られるようにしたりしている。一辺倒な答えは別に最初から欲しくないから、色々な見方をしてもらえるようにしている」

Q. 社会で起きていることに対して、実際の現場に足を運ぶのはなぜですか?

「『6人で何をしようか』と話をしていたら6人の共通事項がテーマになるので、どうしても最終的に社会的なものへ目がいってしまうような仕組みになっている。『Chim↑Pomにとって“社会”って何ですか?』というのは、サーファーが『“波”って何ですか?』と聞かれて分からないのと同じ。社会がなければChim↑Pomは乗れないというか、多分乗らなきゃ分からないことがある。だから、実際に行くことはすごく大事だし面白い」

Q. 結成から約17年。Chim↑Pomは何を目指しているのでしょうか?

「Chim↑Pomにはビジョンがない。ゴールが設定されているようなものはChim↑Pomにとって非常に窮屈で、その変化に対してずっと循環しながら運動を続けていくだけだと思う。『こうでなきゃいけない』というのが一切ない。もちろん自分たちの存在価値は認めているから独自のポジションを持っていると思うが、だからといって『それがどういう風にならなきゃいけない』と思っていない。ずっとそれについて議論し続けている」

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 展示会へ訪れた佐藤が4日、ニュース番組『ABEMAヒルズ』にコメンテーターとして出演。取材中、現地で見た作品「ビルバーガー」について「社会に目を向けて思考してきたからこそ、積まれてこの形になったのだと思う」と語っていた佐藤。取材を振り返り、「1つ1つの作品に込められたメッセージが社会とアートを結びつけていた。いい作品が多かった」と絶賛した。

 一方で、彼らの活動にネガティブな声が寄せられることについては「ゲリラというのは断りを入れていないので、どうしても批判されてしまう」と理解しつつも、「アートって難しい。誰もが見て『きれいだ』『美しい』と思うことをやっても、(共感して)そこで終ってしまう。賛否がある中でどう表現していくかによって、人々が考えるきっかけにつながる」と独自の見解を示した。(『ABEMAヒルズ』より)

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