初代No.1師弟は畠山鎮八段・斎藤慎太郎八段 フルセットの激闘制し「びっくりしています」/将棋・ABEMA師弟トーナメント
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 力強い熱風が最後まで吹き続けた。「第1回ABEMA師弟トーナメント」の決勝戦、チーム鈴木とチーム畠山の対戦が3月5日に放送され、フルセットの末にチーム畠山がスコア3-2で勝利、初代No.1師弟の座に輝いた。畠山鎮八段(52)、斎藤慎太郎八段(28)ともに1勝1敗で、スコア2-2となった最終第5局では、大方の予想に反して畠山八段が出場。チーム鈴木の梶浦宏孝七段(26)に劇的な逆転勝利を収めて栄冠を手にした。勝った本人も「びっくりしています」と語った決勝戦は、ファンを感動させる名勝負で幕を閉じた。

【動画】優勝したチーム畠山

 まさか優勝できるとは…。畠山八段の素直な本音だ。1989年10月にプロ入りし、もうプロ生活も30年以上にもなるが、タイトル経験もあり順位戦A級棋士でもある弟子・斎藤八段の力を借りながら、非公式戦ではありながらも、初めて優勝を味わった。試合後も「弟子と大会に出られるのがうれしかった。久々にこんなに充実しまして、寝られなかったですね」と、大会期間中も期待と不安が入り混じっていた心境を吐露した。こんな最高の結末も、畠山八段の燃える魂が呼び込んだものだった。

 第1局、チームに勢いをつけようと自ら先を切った。相手は近年、めきめきと力をつけている梶浦七段。角換わり腰掛け銀の出だしから、中盤は1段目にいた飛車を一気に展開する「地下鉄飛車」からペースを握りかけたが、あと一歩のところで届かず惜敗した。いつも通りの考え方、流れであれば、ここは一度休んで斎藤八段に第2局を任すところだったが、ここで畠山八段は「師匠が頑張らないとダメですね」と、予選から準決勝まで無傷の6連勝で勝ち上がってきたチーム鈴木・鈴木大介九段(47)に触発されたように、連投を直訴。「師匠が戦って弟子に何か影響を与える、そういう役目をしないといけない」と、自分を鼓舞して盤に向かった。

 第2局は、畠山八段と鈴木九段の師匠対決。対局開始直後から、力のこもった指し手を続けると、これにはモニタを見ていた斎藤八段も「いやー、師匠、さっきので気合入ったな。なんか今までと違うもんな、明らかに。スイッチ入ったかな」と口にするほどだった。将棋自体は中盤、終盤と絶好調の鈴木九段に押しまくられ、敗色濃厚という状況だったが、ここから畠山八段が驚異的な粘りを披露。持ち時間も残り数秒というところでも諦めずに指し続けると、鈴木九段にミスが生じて一気に逆転。自玉がぎりぎり「打ち歩詰め」の反則によって詰みを逃れる展開に持ち込み、逆転勝利をもぎ取った。

 師匠の熱い気持ちが見えた戦いに弟子も応えた。斎藤八段は第3局、梶浦七段に81手の短手数で敗れたものの、そこからすぐに気持ちを切り替えた。カド番で迎えた第4局は、鈴木九段と対戦。両者ともに、ここまで今大会6勝1敗という好調同士の対決になったが、なんとしても最終局につなごうという気迫も師匠譲りか、序盤から築いたリードを守りきっての会心譜。ついにスコア2-2のタイに戻した。

 そして運命の最終第5局。関係者やファンたちが、弟子同士による決戦を予想していたところ、ここでも男を見せたのが畠山八段だった。実はこの決勝、もし第5局までもつれた場合には、畠山八段が出ると事前に2人で決めていた。相手はこの日の第1局では完敗していた梶浦七段。それでも畠山八段は先手番から相矢倉になった将棋で、なんとか食らいついた。じりじりと離され、終盤に入っても劣勢に追い込まれたが、なんとか詰むや詰まざるやの競り合いに持ち込むと、残り時間数秒というところで勝負手を放ち、これが梶浦七段のトン死を招くことに。解説していた中川大輔八段(53)も「詰みだ!恐るべき畠山。死地からの生還ですよ」と驚くと、勝った畠山八段も思わず勝利の瞬間に思い切り自身の両膝を叩いた。

初代No.1師弟は畠山鎮八段・斎藤慎太郎八段 フルセットの激闘制し「びっくりしています」/将棋・ABEMA師弟トーナメント

 大会全体を振り返れば、畠山八段も若手相手に苦戦しながらも奮闘し、無敗で勝ってきた斎藤八段がチームを引っ張り続けてきた。大会期間中のチーム動画の撮影では、師弟水入らずでバーベキューをしたり、フィッシャールールで十番勝負の特訓をしてから焼き肉を食べたり。長い師弟関係の中でも、また特別な期間になったことだろう。畠山八段は「師弟トーナメントなんで、最後は師匠の自分が行かないといけないなと思って。我々もびっくりしています」と語ると、斎藤八段も「私はついていっただけです。師匠と関わるきっかけを作っていただいて、このトーナメントの開催は本当にありがたかったです」と頭を下げた。

 熱血漢の畠山八段と、爽やかな風のような斎藤八段。合わせて「熱風」。師弟の絆をテーマに掲げたこの大会で、最後に笑顔になったのは、まさに2人の力が重なり合った畠山八段・斎藤八段だった。

◆第1回ABEMA師弟トーナメント 日本将棋連盟会長・佐藤康光九段の着想から生まれた大会。8組の師弟が予選でA、Bの2リーグに分かれてトーナメントを実施。2勝すれば勝ち抜け、2敗すれば敗退の変則で、2連勝なら1位通過、2勝1敗が2位通過となり、本戦トーナメントに進出する。対局は持ち時間5分、1手指すごとに5秒加算のフィッシャールールで、チームの対戦は予選、本戦通じて全て3本先取の5本勝負で行われる。第4局までは、どちらか一方の棋士が3局目を指すことはできない。
(ABEMA/将棋チャンネルより)

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