国連の「国際女性デー」を迎えた8日、SNS上では、ロシアと戦うウクライナ女性たちの姿も注目を集めた。
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「今年、私たちが手にしているのは花だけではない。銃も手にしている」と述べたのは、キエフに残る野党「声の党」のキラ・ルディク党首。実際、これまでも銃の訓練に参加する一般女性の様子が度々報じられており、志願して前線に赴く女性たちもいるという。海外メディアによれば、ウクライナでは2014年に起きたロシアによるクリミア併合以降、女性の戦闘任務が可能となり、現在は軍全体の約15%にあたる3万人にのぼるという。
■戦争を遂行する側は“女性の顔”を利用する
あらゆる分野で女性の社会進出が進む中、国防も例外ではない。女性比率が18.8%だというアメリカ軍では2015年に女性兵士の職種を解放、最前線の戦闘任務に就く可能性も出てきた。女性比率が7.9%の自衛隊においても、ほぼ全ての職種が解放されている。
東京女子大学の柳原伸洋准教授(ドイツ・ヨーロッパ近現代史)は、「やはり堅強な人は女性であれ、男性であれ兵士になる。そういう考え方がヨーロッパを含めて浸透していると思うし、ロシア近隣の国においてはその割合がウクライナと同じぐらいになってきている。そしてウクライナでは2014年以降に女性防衛隊というものが設立され、一般女性が射撃や救護の訓練を続けてきた。それでも前線に出て戦うというのは国の中で戦争が起きているからだし、軍をサポートする民間人が銃をロシア兵に向ける可能性もある。それを恐れてロシア兵による殺戮が繰り返されるような、きわめて危険なシチュエーションだということだ」と指摘。
その上で、「私が住んでいるドイツとウクライナは2000kmくらいの距離にあり、今週には女性と子どもがミュンヘンにも逃げてきた。そうした女性たちがSNSに発信する情報が、“私たちと続いているんだ”という意識を作ってくれている面はあると思う。一方、前提として考えたいのは、どの国においても戦争を遂行する側が“女性の顔”を利用しようとするということだ。ドイツではウクライナが随分前から戦争状況になった場合にSNSを利用するということが準備されていたと報じられている。女性が、男性が、という語りが、むしろ個人の特徴を消してひと括りにしてしまうような危険性があることも確かだ」と話した。
■女性も男性と同じリスクを背負うべき?
一方、ウクライナではロシアの侵攻が始まると、防衛態勢強化のために18~60歳までの男性の出国が制限された。これに対し“なぜ男性だけなのか”といった疑問の声も上がっている。
ソフトウェアエンジニアでタレントの池澤あやかは「男性でも女性でも、戦争に行って自分の命を危険に晒すのは嫌だと思う。そこでなぜ女性だけが行かなくていいということになるのか。男性だけにリスクを背負わせるというのは良くないことだと思うし、ジェンダー平等を訴えるのであれば、女性も積極的にリスクを取っていく必要があると思う。ただ、戦地において生理中はどうするんだ、お風呂はどうするんだ、といった問題も出てくるので、ある程度はジェンダーバランスが取れていないと女性が参加するのは難しいのではないか」とコメント。
フィギュアスケート元日本代表の安藤美姫は「泣きながらボーイフレンドや旦那様と別れる女性、子どもを連れて国外に逃げる女性の姿をテレビで見ているが、もちろん国内に残りたいという人、戦いたいという人もいると思う。女性であるから戦争に行かないという時代ではないと思うし、日本ではできないことだろうが、私も同じ立場になったら自分や家族の身を守るためにも、銃を取ろうと思うかもしれない。ただ、他の女性の姿と自分と照らし合わせてしまうということは、あまりいい方向に動かないのかなという思いもある。
そして、もちろんお父さんが育てている家庭もあるとは思うが、子どもを守って育てていくという面ではやっぱりお母さんの方が長けていると感じるし、ウクライナ人の子孫を残していくという面では女性を守った方がプラスに動くこともあるのではないか。戦争という状況においては性差別やジェンダーの問題とは別に、選択肢として“女性と子ども”を逃がす、ということもあるのかなと思う」とコメントした。
■今も続く、“男性的な女性の語られ方”
安藤の話を聞き、父子家庭に育ったというギャルユニット『BlackDiamond』リーダーのあおちゃんぺは「もちろん、率先して行きたい方、身体能力がずば抜けていい方であれば活躍できるとは思うが、女性と子どもを逃がすというのは、子育てや子孫の繁栄を考えると正しい選択だと思う」と賛同。ただ、「男性ばかりのところに女性が行けば弱い存在のように思われたり、性暴力の対象になったりする。私だったら絶対に行こうとは思えないと思う」と、戦場や各国の軍隊でしばしば問題になってきた女性への性暴力について問題提起した。
デザイナーでモデルの長谷川ミラは「戦争はどう考えてもそういう場になるが、東日本大震災の際には避難所での性的被害が多く報告されているわけで、どこでも起きうる問題でもある。その意味では、女性たちが自分を守るために対策をするだけでなく、男性たちを教育するための議論をすべきだ」と指摘。「2021年の『ジェンダーギャップ指数』(世界経済フォーラム)では、ウクライナは74位で、ウクライナ系カナダ人の友人に、数年前まで女性が就けない職業もあったと聞いた。120位の日本よりも高い順位とはいえ、そういう背景もあると思う」と話した。
柳原氏は「男性側の教育が必要なのではないかという指摘は、本当におっしゃる通りだと思う。19世紀以降、国民国家というものが成立すると、戦争に参加するということが市民権であり、参政権につながった。だからこそ男性中心だったということだ。そういう語り方が21世紀の今なお尾を引いているために、女性兵士についても“女性なのに強い”とか“女性なのに勇敢だ”というような、19世紀以来の男性的なモードが連続している。そういうことにも目を向けてもいいのではないかと思う」と話していた。(『ABEMA Prime』より)
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