やはり「地球代表」の力は偉大だった。師弟による早指し戦「第1回ABEMA師弟トーナメント」のスピンオフ企画、チーム深浦とチーム杉本の対戦が3月12日に放送され、チーム深浦がスコア3-0のストレート勝ちを収めた。ファンが大盛り上がりになったのは、第1局でチーム深浦・深浦康市九段(50)が、チーム杉本・藤井聡太竜王(王位、叡王、王将、棋聖、19)に逆転勝ちを収めた場面だ。公式戦でも藤井竜王に対して3勝1敗と勝ち越している深浦九段が、若手有利と言われる超早指しで、追い込まれながらも逆転勝利。弟子の佐々木大地六段(26)も仰天した勝利が、一気のストレート勝ちを呼び込んだ。
地球人とは思えない力を発揮する「将棋星人」が藤井竜王や羽生善治九段(51)ならば、それから地球を守る「地球代表」が深浦九段。ネット上から盛り上がったこのキャッチフレーズもすっかり本人公認になったが、これが追い風にもなっているのか、最近では「藤井キラー」とも呼ばれ始めている。団体戦「ABEMAトーナメント」でも深浦九段は、藤井竜王に勝利。この師弟戦でのスピンオフ企画で再戦するとは思っていなかったが、この勝利に続く2連勝を果たすとは、本人にとっても望外のことだった。
先手番から得意の雁木を採用すると、藤井竜王も雁木に構えて、相雁木の出だしから名勝負は始まった。対局前、藤井竜王は「(負けた)ABEMAトーナメントのことを思い出しちゃいました。違う作戦で行こうと思います」とコメント。実際、序盤から果敢に仕掛けて、主導権を握りに来た。これにはじっくり指し進めようとしていた深浦九段も押され、持ち時間でも早々に3分以上の差をつけられた。
序盤、中盤までの流れは完全に藤井竜王のペースだったが、ここであっさり負けずに粘り倒すから、地球は今も守られている。見守っていた佐々木六段が「これで助かったのは見たことがないが…」「痛すぎる。やばい、泣きたくなる」と、はっきり劣勢を感じるほどだったが、深浦九段本人の粘りが少しずつ藤井竜王のペースを乱していく。辛抱を続けたことが功を奏し、攻めの手番が回ってきたところで切り込むと、藤井竜王の対応にも隙が生まれ、ついに形勢逆転。最後はしっかりと自玉を安全にしながら勝ち切った。この様子には、佐々木六段も「いやー、すごい。藤井竜王相手に、このまくりができるのは師匠しかいない」と大絶賛し、ファンからも「対将棋星人決戦兵器ふかーら」「地球は守られたぞ!!!!」「私も深浦門下に入りたい!」といった賛辞が大量に集まった。
師匠の大逆転劇に勢いづいた佐々木六段も、普段の公式戦以上に力を出した。第2局、第3局と杉本昌隆八段(53)との連戦になり、どちらも佐々木六段・居飛車、杉本八段・振り飛車の対抗形になったが、ABEMAトーナメント、師弟トーナメントとフィッシャールールの経験も十分の佐々木六段が、落ち着いた指し回しで2連勝。チームとしては3連勝で、ストレート勝ちを決めた。
絶対的エース・藤井竜王がいるだけに、フルセットまで持ち込めれば御の字と考えていた深浦・佐々木師弟も、この結果にはびっくり。試合後にも深浦九段は「非常に予想以上のものが出て、自分も佐々木もびっくりしています。佐々木も今日は出来がよくて、普段もこれくらい勝ってほしい」と、驚き含みの笑みが最後まで続いていた。
(ABEMA/将棋チャンネルより)