「予算を人に付け、ワクチンと治療薬を前提にした対応を」まん延防止等重点措置の効果を疑問視する大竹文雄・阪大特任教授
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 18都道府県で続く「まん延防止等重点措置」。政府は新規感染者の数や病床使用率などが改善傾向に向かっているとして21日を期限で一斉解除を目指す方針で、自治体からの要望も踏まえて16日にも最終判断、岸田総理大臣が会見で説明する見通しだ。

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 一方、経団連の十倉会長は次の大きな波に備え、インフルエンザ並みの対策に切り替えるべきとの提言を発表。出口戦略を実行し、欧米並みに経済活動を回復させるべきだと主張している。

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 コロナ分科会のメンバーも務める大竹文雄・大阪大学特任教授(行動経済学)は「まん延防止等重点措置は新規感染者数の傾向にあまり影響はなかったと言えるのではないか」と話す。

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 「以前から私たちには感染者数が増えてくるとリスクの高い行動を控えるという特性があって、飲食店でのクラスターも、実はまん延防止等重点措置の適用前から減ってきていた。また、若い人たちがワクチン接種をしていった結果、感染の中心はワクチン未接種の子ども、それから早めに接種していたので効果が切れ、3回目の接種が終わっていなかった高齢者が中心になっている。
 
 経済でよく使われる手法だが、まん延防止等重点措置を出しているところと出していないところ、そして出す前と出した後を比較してみた結果、ほとんど変わらなかったという分析もある。また、解除した場合の影響もそれほど大きくないというシミュレーションの結果もある。分科会でも、飲食店の営業時短要請が主体のまん延防止等重点措置にはあまり効果がないのではないか、大人数での飲食を控えるようにというような規制で十分ではないかという意見は多かった」。

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 これに対し、リディラバ代表の安部敏樹氏は「みんなが会食を控えるようになった状態でお店を開けなければならないというのは結構つらい。その意味では、まん延防止等重点措置に伴う時短要請協力金によって収入が確保できるということは、飲食店業界にとってサポーティブな政策だったと思う」と指摘。

 大竹氏は「おっしゃる通りだと思う、感染対策としてはほとんど効果がなく、単なる“所得再分配”という形になっていたと思う。ただし、それでは政策の主旨と違うし、再分配を目的とするなら、所得が減った他の業界に対しても広く再分配をすべきだ。まん延防止等重点措置はあくまでも感染を減らす、そのために営業時間を短くしてもらい、協力してくれた場合にお金を支払うというものだ。もともとお客さんが少なくなっているところに感染対策としてお金を払う必要はない。

 そもそも時短要請は、大声で長時間にわたって話をすることが最も感染リスクが高いと言われていたので、その可能性が高まりそうな時間帯を規制しようという発想で始まったものだと思う。しかし成人のワクチン接種率が高くなってからはそういう感染リスクも非常に低くなっていた。また、感染者数を減らすためには学校の規制も必要だというが、そこまでの対策をしないといけないほどオミクロン株の重症化リスクは高いのかどうかという問題もある。自治体からの適用の申請を政府が認めるという枠組みを壊して断ることはなかなかできない。それでも効果がなく税金が無駄になり、むしろ被害の方が大きいという観点から反対をしてきた」と話した。

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 一方、「手を洗う救急医Taka」こと「こびナビ」副代表の木下喬弘医師は「僕もまん延防止措置に積極的に賛成しているわけではない。世界ではある程度の感染があったとしても普通の生活に戻していくというフェーズに入っているし、日本もそうしていくべきかなと思う。ただ、クラスターの発生割合だけでその効果を測ることには問題があると思うし、まん延防止措置に意味はなかったというのは、ちょっと乱暴かなと思う」と反論。

 その上で木下氏は「やはり、メリット・デメリットの比較をすることが極めて重要になってくるが、感染者数を減らすというメリットですら数字を出すのが非常に難しいし、経済へのダメージによって自殺者が増えたといったことを定量的に解析するのはもっと難しいと思う。ただ、コロナ禍が始まって2年が経つ。それでも日本ではできていないというところを大竹先生も問題視されているのだと思うが、どういうトレードオフをやっている政策なのかというのを可能な範囲で可視化することが必要だ。

 それから、基本的に日本は入院期間が長い。僕も救急医療をやっていて、4割ぐらいは“退院調整”じゃないかと思うくらいだ。しかし一度入院された患者さんに納得していただいて帰っていただくのは難しく、病気になる前よりも良くなって帰りたいという方も結構いらっしゃる。しかし医療資源がひっ迫してきた時には全体の状況を見て、ルールとして退院していただくというシステムがないと、出口が詰まってしまう。それから、デルタ株による第5波の時に比べれば、診る病院がかなり増えてきているのも事実だが、それでもまだ診ていない病院には診ていただけるよう、工夫をする必要はあると思う」と指摘した。

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 大竹氏も「第6波はほとんど医療提供体制の問題だったと思う。高齢者のクラスターが起こって病院のコロナ病床が満杯になったこともあった。高齢者施設で診てもらうことができたとか、もともと診てもらっていた病院で対応をしてもらえたということであれば、病床不足にはならなかったと思う。また、回復した患者さんをコロナ病院以外の所で受け入れられるよう協力体制、ネットワークを組んでおかなければならないが、それが多くの地域ではうまくいってない。その意味では、予算を人に付けた方がいいと思うし、ワクチンと治療薬を前提に、新たな変異株が出てきた時にその特性に応じて対応できるように変えていくことが必要だ」と話していた。(『ABEMA Prime』より)

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