15日に再開したロシアとウクライナの4回目の停戦協議。両国とも具体的な結論は得られず、協議は翌日へ持ち越しとなった。ニュース番組『ABEMAヒルズ』はロシア問題や中東情勢にも詳しい軍事ジャーナリストの黒井文太郎氏に話を聞いた。
――停戦交渉というが、これまでの流れを見ているとロシア側が一方的なので、実態としては“脅迫”ではないのか。そして、ウクライナ側はこれを交渉になっていると思っているのか。
「実態はその通り。ただ、ウクライナ側も対話のラインを切ってしまうと将来のために良くないので残している。また、国際世論が付いているので、それを味方になんとかできないかという考えだと思う。ロシアの方は、作戦が思っている通り進んでいないのは確かだが、いまだに攻めているのでやられているわけではない。なので、ロシア側が圧力をかけてウクライナ側になんとかさせようと一方的な押し付けをしているのが停戦交渉の実態だ」
――チェコ・スロベニア・ポーランドの3首相がキエフ入りした。なぜこの3カ国なのか、また他国の首相がキエフに入るという意味なのか。
「ゼレンスキー政権に対する連帯を示すということ。事務的なやりとりではなく、首相自らが危険地帯に入ることで連帯を見せている。特に3カ国の中で焦点となっているのはポーランドで、ゼレンスキー政権を支援する中心となっている。そして今、ロシアが一番焦点にしているのは、ポーランドから入ってくる武器のルート。ロシアは非常に国境に近いところをミサイル攻撃しているので、例えばその攻撃が国境を超えて、ポーランド側に落ちてしまったらどうなるか、国境線上に落ちてポーランドに被害が出たらどうなるかというのが懸念されている。そういうことがないようにロシア側にプレッシャーをかけている。バイデン大統領がNATO首脳会議に出席する予定だが、そこでもポーランドとロシアがトラブルになったら、一番の問題だ」
――制空権をめぐって、ウクライナはNATOに対して飛行禁止区域の設定などを求めている。NATOとロシアの関係についてどう思うか。
「バイデン大統領はロシアと戦争になるから最初から防衛には直接は関わらず、避けている。その後もバイデン大統領の政策は一貫していて、ロシアと直接戦火を交えることはしない。ウクライナ以外のポーランド、ルーマニアなどその他NATOの国を守ることは今後も変わらない。飛行禁止区域(の設定)もやらないだろう。一方で、ポーランドとロシアが突発的な事態が起こる可能性もある。その場合は『ポーランドに手を出したらNATO全体で対応する』とNATOの第5条の集団防衛を対外的にアピールすると思う。ただ、突発的に何かが起きたらポーランドは自動的にロシアに参戦してしまうとバイデン大統領は困るので、内々では慎重な話をしているが外には出さないはず」
――プーチン大統領はヤケクソになっているのではないか。
「プーチン大統領のやっている戦略は一貫していて、ヤケクソではないと思う。このままウクライナを手に入れて、自分たちの勢力にするというのは何年も前から言っているので、チャンスがあればやると思う。今のところ経済制裁はこれから効いてくるだろうが、それに対してどれだけ耐えられるかという問題はある。軍事的には、プーチン大統領の立場から見ると、今のところ勝っているのでウクライナの主要部は手に入ると踏んでいる。最初の目論見よりは手こずっているが、軍事面では失敗だとは思っていないはず」
(『ABEMAヒルズ』より)
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